第五十一話 初雪
運の良いことに教官が今日は非番だったので先輩も混ぜて楽しく思い出話をした後、次の日にはケルグ要塞へと補給部隊とカルドの部隊は出発していた。
「いや〜。あの先輩があんなことしてたなんてなぁ。」
「流石に驚いたよ……。」
「にしてもようやく休憩か〜。背中と腰が……。」
昨日の話をしながら馬車に揺られること数時間。
ようやく休憩時間に入った。
ほとんどのものがケルグ山脈の中でも数少ない川で馬に水分補給をさせていた。
極寒のケルグ山脈といえど真冬でもない限り一部の川は凍らないし、凍ってるなら氷を割ればいいだけの話だ。
「お爺さんみたいなこと言って……。」
「仕方ないだろう。流石に疲れたよ。」
「まあね。馬車はこれだから嫌なんだよね〜。」
背中をグッと伸ばしながらあたりを見回す。
ほとんどの山が岩山で、高山植物が少し生えているだけのケルグ山脈の中なのに川があるおかげか針葉樹が生い茂っていた。
「にしてもケルグ山脈に入ったっていうのにケルグ要塞はまだまだ先か……。」
ケルグ山脈、というよりもケルグ山脈がある半島と大陸が繋がっている北東からケルグ山脈に入り、そこからずっと南下した場所にケルグ要塞はある。
ちなみにそこからさらに南下すると海峡があり、それを越えると中央大陸、それも共和国の領土なのでこの半島は何かと重要な場所なのだ。
海峡を越えた先は普通の浜なので攻めやすいし、逆にこちらの半島の海岸は崖になっている場所がほとんどなので守りやすい。
冬になれば来たから氷山が流れてくるため船は通ることすらできなくなる。
そんなこんなでケルグ山脈は大規模な軍事拠点ができたのだ。
「にしても寒いなぁ……。」
「今年は冬が来るのが去年よりもかなり早いんだってさ。」
「黒が何かしてんのかねぇ。」
「黒? ああ……あの七色の魔物とかいうやつの一匹だっけ……そういえば言ってたね。」
「本当の名前はシュヴァルツェっていうらしい。まあ、アンデッドだから生前の名前は違うんだろうが……。」
「アンデッドはいろいろな人間の怨念が集まってできるから生前の記憶は残らないっていうし。その名前は怨念たちが勝手に名乗ってるんだろうね。まあそれがどうということでもないけど。」
その時、晴天の青空を見ていたカルドがとあるものに気づいた。
「雪……?」
「うわっ。本当だ。これはどんどん冷えそうだね。防寒服持ってきて重ね着しようかな……。」
「というかそれよりもなんで雪が降ってるんだ。雪自体は珍しくないけど……雲は無いんだが……。」
「……確かに。」
「おかしいなぁ……にしても寒い。本格的な冬はまだなはずなんだが……。」
不審感を抱きながらも防寒服を重ね着することで一段と冷えた寒さに耐えながら一行はすぐに出発した。
ケルグ山脈では一年に数回の頻度でとんでもない猛吹雪が起きるため重ね着用に防寒服は多めに持ってきているため予想外の寒さでもなんとかなる。
ちなみに普通の規模の吹雪はしょっちゅうある。
「氷魔法を使う魔物が近くにいるのかもね。」
「ああ、なるほど……そしたらかなり上位の魔物だな。」
「まあそうそう襲われはしないでしょ。周りとかにも雪が降ってるし、広範囲にも影響があるってことはこっちをピンポイントで狙ってるんじゃなくて強力すぎて影響がこっちにまで届いたのか、そもそもそういう種族なのか。」
「どっちでも嫌だねぇ……。」
「まあ、念のためにさっさと移動しようか。」
そう言うと二人はすぐに隊列に戻っていったのだった。




