第五十話 残骸
その後、一行は状況確認のためにあの大蛇が戦闘していた場所へ向かった。
本来なら寄り道は問題だが今回はことが事なだけに仕方がない。
「ここらへんか……?」
街道からしばらく離れて現場に到着すれば凄惨な景色が広がっていた。
そこら中から肉の焼ける匂いが漂い、黒焦げになったドラゴンの死体があちこちで転がっている。
「うわっ……。」
「……ひとまずこのドラゴンを調べるぞ。」
まずはこのドラゴンの種類を調べるところからだ。
灰鼠騎士団のような専門家でなくても多少はできることがある。
だが調査は難航した。
全身が完全に黒焦げになっているため種類を特定できるような部位が判別できないのだ。
「サイズは小型。形はよくいる普通のドラゴンだな。」
「炎吐いてたし一応は火竜なんだろうが……それ以上は分からんな。」
「うわっ。鱗完全に溶けてるぞ……。」
「これじゃあ溶けていないのを探すのは時間の無駄だな。」
鱗は当然と言えば当然だがドラゴンなら絶対にある部位であり、最も重要な部位であると同時に種類を判別するのにもっとも役立つ部位だ。
鱗は物理にも強いが魔法や熱にはさらに強いためこれが溶けてるということは熱に耐性のある防具などを着ている人間程度では灰すら残るまい。
あの雷がここまでの火力なのを予想こそしていたが実際に目の当たりにすると凄まじいものだ。
こうなれば体の中の部位などから判別するしかない。
「体の中の部位は流石に専門家じゃないとなぁ。仕方ない。比較的マシそうな死骸を回収して持って帰ってから灰鼠騎士団にでも調べてもらおう。」
「だな。馬車にスペースを作ってこよう。幸い大したサイズでもないしな。」
「了解……。」
そうして一行は黒焦げの死体を回収したのち、街道へと戻っていった。
ドラゴンたちのすぐそばに落ちているドロドロに溶けた後、冷えて固まった金属片には気づかず。
その後は特に異常事態が起こることもなく、順調に進んでいった。
「あっ!」
しばらく進めば戦争が起こる前までカルドとシンがいたあの集落に到着した。
「あの集落だ! 教官たちはまだいるかな……。」
「そりゃあいるでしょ。まだ数カ月すら経ってないんだから。」
「まあそうだろうけど。」
丁度夕方なため今日はこの集落で休憩することになった。
野営は何かと不便だしあまりゆっくりと休めないので集落で休めれるなら休むにこしたことはないのだ。
噂をしたらなんとやらというがまさにその時、丁度話していた教官を発見した。
「あっ、教官!」
この集落に来たばかりの頃にカルドを負かしたあの教官の騎士だ。
「ん? お前はあの時の新兵か。久しぶりだな。そっちのお前はいつもそいつと一緒にいたやつか。」
どうやら教官もこちらを覚えていてくれたらしい。
しかも訓練で何回も戦ったカルドだけでなく、あまり関わることの無かったシンのほうも覚えているらしい。
シンが嬉しそうに言った。
「覚えてくれているんですか? 覚えてもらっているとは思いませんでしたよ。」
「まあ筋の良い奴は基本覚えてるんだ。あとは問題児だとかだな。」
なぜかそう言いながらジト目で見つめている教官の目線の先を見れば補給部隊にいた先輩の背中があった。
「……何かしたんですか?」
「まあな。ふざけた悪ガキだった。大きな問題は起こさなかったし騎士になる少し前くらいの時期にはちゃんとしてたから騎士になんとかなれたがな。まったく……。」
教官に背中を見つめられている先輩がクシャミをしたのを見てクスリと笑ってしまったのは致し方ないだろう。




