第四十八話 龍渡
「ドラゴンが各地で発見されている?」
カルドたちは近くの街に向かい、そこにいた大きめの部隊を率いる指揮官にドラゴンのことを報告していた。
「ああ、君たちが発見したのもその内の一匹だろう。」
「原因は分かっているんです?」
「まったく分かっていない。あのドラゴンの種類くらいだ。」
「それは分かってるんですか。」
「まあ灰鼠騎士団がいるからな……。」
灰鼠騎士団は基本的に魔物討伐が主任務だがちょくちょく魔物の調査もする。
それで得た情報を共有することでさらに魔物の脅威を減らしているのだ。
なので彼らは一人一人が魔物の専門家といってもいいほどの知識があるという。
中には始めて見た魔物の名前などを見ることができるスキルを持っている人間もいるのだとか。
「それで種類は……?」
「星白銀龍とのことだ。」
それを聞いてカルドは絶句する。
それも当然だ。
星白銀龍はドラゴンの中でも上位に位置する種類だ。
この世界の北側のほとんどの場所では星白銀龍が頂点捕食者であり、七色の魔物などの例外を除けば魔物の中でも最強格だ。
ちなみに星白銀龍というのは通称であって本当の名前は別にある。
曰く、初めて人類がこのドラゴンを発見した時、まるで星のように輝く白銀の鱗を纏っていたかららしい。
らしいというのも数がとても少なく、人と遭遇するのは数十年に一度、それも遠くから見た程度だから見たことがある人が少ないのだ。
「星白銀龍がなんでここにいるんですよ。アレはもっと寒い場所にいるのでは?」
「ああ、そのはずだ。とはいえいるのは事実だ。灰鼠騎士団の連中は始めて見たと声を上げて興奮していたよ……。今のところは被害も出ていないから放置しているそうだ。下手に手を出したらそれこそ甚大な被害が出るからな。」
「賢明な判断ですね。」
「そういえば君たちの部隊はケルグ要塞に行くのだったのかな?」
「そうですが……。」
「なら丁度いい。ケルグ要塞に行く補給部隊がいるからその部隊と共に行ってくれ。」
「分かりました。ちなみに荷物は……。」
「対ドラゴン用のあれこれだそうだ。まあ、星白銀龍相手には無意味だろうから単純にワイバーンや小型の竜用だろうな。そもそも星白銀龍相手にだれも挑もうとは思わん。」
「星白銀龍は尋常じゃない強さらしいですからね……。」
星白銀龍の最も恐るべき特徴はその鱗の硬さだ。
ドラゴンなので硬いのは当然なのだがそれにしたって尋常じゃない硬さらしい。
さらにはどういう仕組みかは知らないが魔法を大幅に弱体化させる効果もあるらしく物理で攻撃しなければならない。
ちなみに数少ない弱点として飛行能力に難があるらしく助走しないと飛べないそうな。
「ひとまず事情は分かりました。じゃあ、補給部隊と共に出発します。いつ出発予定ですか?」
「それが悪いんだが今日の予定なんだ。だから休憩無しで行くことになるが……大丈夫だろうか。」
「元々、この街に寄る予定じゃなかったので多分問題ないです。」
「そうか、それならよかった。」
「あと、ここからは個人的なというか世間話みたいになるんですけど……星白銀龍が出たのってまさか共和国が関係したりしていませんかね。」
「う〜む。まあこれは一個人として推測だがあり得る話ではあるな。とはいえ共和国があのドラゴンを扱うのは到底無理だろう。」
指揮官の話には根拠がある。
まず、前提として共和国は極一部の種のドラゴンしか従わせられない。
規模は到底及ばないものの小型のドラゴンは極一部の国では軍として運用しているし、あの大型のドラゴンも実のところかなり人に友好的な種だ。
もちろん、従わせるのは困難だが前列もある。
「星白銀龍は基本的に人を襲いませんが関わろうともしませんですしね。」
「それに、ドラゴンは自分より弱いものには従わない。強いものが相手じゃないと従わない性格だからな。」
「まあ、それでも何かは関係ありそうですがね。」
「そりゃあ無関係では無いだろうさ。」
「ですよねぇ……おっと、そろそろ補給部隊が出発するな……。」
「ああそれではまたいつか。」
「お元気で。」
そう言うとカルドは部隊に戻っていった。




