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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第四十七話 飛影

ケルグ要塞へと向かいながらカルドは魔法の練習をしていた。


「う〜ん……。」

「どうだ?」


シンが声をかけてきたが集中していて言い返す余裕は無い。

現在、カルドはドラゴンを倒したあの魔法を再現するためにひたすら特訓を繰り返していた。

だが既に1時間もぶっ通しで特訓しているため集中力が切れたのか魔力が霧散していくのが感じられた。


「駄目かぁ……。」

「やっぱりあれを再現するのは厳しいのかね。」

「何せもう死ぬっていうギリギリの状況でようやく出せたもの。そう簡単には出せないだろうね。」

「あれをいつでも出せるようなら大幅な戦力強化になるし手札も増えるんだけどね……。」

「師匠になるような人がいないからまあ仕方ないね。」

「普通は師匠に教わるもんだからなぁ……魔法って。」

「闇魔法は珍しいからね。……にしてもずっと隠してたのが闇魔法だとはね……。まったく、そんなこと気にするわけないのに。」

「うっ。」


あの後、強制的にお話し(尋問)をした時に随分とシンに叱られていた。


「まったく……どれだけ一緒にいると思ってんだよ。そんな非人道的なことでもないのに軽蔑なんてするわけないじゃないか。」

「それにしたって話すのは怖いんだよ……。」

「まあそれはそうだろうけど……それでも話してほしかったね。相棒なんだから。」

「ううっ。分かったからその笑顔やめてくれ。目が笑ってないから恐怖心が……。」

「まあ……ひとまずは許すよ。あと、そろそろ休憩時間終わるってさ。」


周囲を見れば確かにそろそろ時間らしく、部隊全体が動き出している。

さすがに馬車で移動しながら練習は厳しい。

もちろん、精神を集中させる練習など、動かなくてもいいことはできるが実際に魔法を放つなどは諦めるしかない。


「にしても……いつになったら闇魔法をまともに使えるのかねぇ……。」

「普通の練習でも上達はするけどやっぱり感覚とかは教えてもらわないことにはね……。」


それからまた魔力を制御するのに集中していると突然、大きな音がした。


「うん?」


ふと見上げるとはるか上空にドラゴンが飛んでいた。

どうやらあのドラゴンの鳴き声だったらしい。


一瞬、共和国の騎竜隊かと思ったがよく見れば鞍や旗などがついていない。

つまり野生だ。


とはいえこちらを襲ってくる様子は無い。

ドラゴンは大半が巣を作り、そこから離れることは一生無い生き物だが種によっては数年ごとに大幅に生息地を変える種があると聞いたことがあるのでまさかそれではと思ったがその種はここらへんには出ない。

中央大陸のはるか東にしかいないはずだ。


「あれは……?」

「ここらへんはドラゴンの縄張りじゃないし縄張りが近くにあるわけでもないし……なんでここに?」


ほとんど無いパターンだが成体になったばかりのドラゴンなら巣を作るために移動したり、群れをつくるドラゴンなら群れでの順位争いに敗れて追い出されるなどで縄張り以外にも存在することはある。

だがあれはそういう雰囲気ではない。

大きさ的にもとっくの昔に成体になっているようだしあれほどの大きさなら群れをつくる種ではない。


「……不吉というかなんというか。」

「バレなければ問題はないよ。……まあ念のために通り過ぎるまでは隠れてよう。」


しばらくすれば結局、何をするでもなく、どこかへ一直線に飛び去っていった。


「あの方向……ケルグ山脈じゃないか?」


足の速い馬がいるわけではないので誰かに先行させて報告させるという手段は取れない。

馬車の荷台を捨てるならいけるだろうがドラゴンが街に向かっている様子はないし、もし街を襲っても共和国の騎竜隊対策の灰鼠騎士団がまだ残っているはずなので彼らが対処するだろう。


とはいえ不安が残るのは事実。

一行は急いで出発するのだった。

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