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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第四十四話 敗退

敵は撃退した。

だがその後はさらに大変だった。

戦況が大きく変わったのだ。


各地で敵の騎竜隊が奇襲をしかけ、前線だけでなく、後方の物資集積所や、橋などのインフラが徹底的に破壊されていたのだ。

後に知るが奇襲隊は真夜中にはるか上空を飛ぶことで警戒網をすり抜けれたらしい。


そして補給もないのに強力な敵部隊を倒すことなどとうていできない。

足止めすら厳しい可能性すらあった。

そのため、前線を大きく下げるしか無かったのだ。


「一気に前線は後退……か。」


カルドが報告書を読みながら溜息をつく。

あと少しでロッド王国は、というよりはそこにいる数々の勢力が全滅しそうなほど帝国軍は奥深くまで攻め込んでいたために余計に無念を感じる。


「とはいえ前線を下げないと維持すら怪しかったから仕方ないね。」

「そうは言っても惜しいと感じてしまうのは仕方なくないか?」

「まあね……とはいえここはカルドのおかげでなんとかなったけど他の拠点は壊滅だからどうしようもないよ。後方の基地がやられたら前線に物資を送れないからね。ここから反撃は厳しいだろうね。」

「やっぱり無理そうか?」


するとシンが資料を持ってきた。


「これを見たよ。」


渡された薄い資料を読むととてもだがここから帝国軍が反撃できる未来はない、少なくともしばらくは反攻作戦を出来ないということがよくわかった。


「人数がな……絶望的に足りないな。」

「なにせ先日の戦闘でかなりの数の部隊が壊滅したからほとんど戦闘不能の人間ばかりで戦闘可能な人間だけじゃ前線維持が精一杯。それも前線を下げてなんとかだからね。」

「後詰めがいないからな。」

「それもまったくと言っていいほどね。しかもあの騎竜隊が対策するのが難しいからせめて守る範囲を狭めないと灰鼠騎士団の人手が足りないんだよねぇ……。」

「灰鼠騎士団には負担ばっかかけてんなぁ。……そうだ! そういえば前回の戦闘でもあいつらには頑張ってもらったからな。どうせこれからのことを考えても小隊長になんとかなるわけでもないし、それよりもお礼しにいくか。」


何か菓子折りを持ってこうかと考えながら報告書を読んでいると一つの報告書が目にとまった。


「うん……?」

「どうかしたか?」

「諜報部からの情報がまた来たんだ。」

「諜報部か……。」

「最近、諜報部はど〜も胡散臭いんだよなぁ。」

「真偽のはっきりとしない情報ばっかり来るもんな。」

「今回は……敵の補給部隊が近々街道を通るってさ。」


シンが顔をしかめる。


「敵の補給部隊って……つい一昨日に通ったばっかだよ? そんなに早く補給部隊が来るわけないじゃんか……。」

「やっぱり信頼できない……。」

「一応、万が一もあるからね! 念のために! 調べておくよ!」

「絶対、何も通らないでしょ。」

「だろうね。」


溜息をつきながらも確認したということを示すサインをする。

補給部隊が通るという情報が来たのなら補給部隊を襲うための部隊を設置しないわけにはいかないのだ。


「これで部隊を設置しなかったから絶対にこんな機会を逃すなんてとか散々言われるだろうから仕方ないさ。仕方ない。」

「嫌そうだねぇ……まあ分かるけど。」


二人揃って溜息を付きながら報告書や資料、辞令書に目を通していくのだった。

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