第四十三話 黒槍
次の瞬間、カルドは無意識に手のひらをドラゴンに向けていた。
そして瞬きした時、漆黒の槍がドラゴンを貫いていた。
「はっ……。」
漆黒の槍はドラゴンの頭を貫通し、乗っていた敵兵を消し飛ばし、その先にいた騎竜隊のドラゴンを数匹貫通して、ようやく消滅した。
あまりの事態にその場にいた全員が呆然とする中、ここが現実だと教えるかのように漆黒の槍で頭を貫かれた大型のドラゴンは大きな音を出しながら倒れ、体に風穴の開いた小型のドラゴンたちはまるで羽虫のように落ちていった。
「一体……何が……。」
「隊長、魔法使えたんですか!?」
「いや、俺は魔法なんて使ったこともないんだけども……。」
「訓練兵時代からずっと一緒だけど魔法の魔の字も知らんって感じだったもんな……。」
部下たちはもちろん、シンすらも目を丸くしてこちらを見つめている中、カルド自身も困惑していた。
ふと思い出せば幼い頃に闇魔法に才能があると言われた記憶が蘇ってきた
だがだからといって魔法を鍛えたわけでもなんなら簡単な魔法すらも一度も使ったことすら無い。
何せ闇魔法は蔑まされているのだから。
とはいえそれでは今起きた事態が説明できないしもしまぐれで魔法を放てたのだとしても初めて使った魔法があんな威力になるわけがない。
物理にも魔法にも耐性の高いドラゴンの鱗を貫けるわけがない。
だがそうやって頭の中で否定しても事実は事実。
間違いなく自分は魔法放ち、いとも簡単にドラゴンを殺しているのだ。
「隊長! ぼ〜っとしてないで早くドラゴン倒して!」
流れ弾で被害を受けた騎竜隊の残りが復讐に来たのか単純に脅威を排除しようとしたのか、恐らく後者の理由でこちらに狙いを定めて急降下してきたのだ。
「くっ!」
カルドはもう一度手を敵に向けて先程、魔法を使った時に感じた感覚を再現しようとした。
うまく再現できたらしく漆黒の槍が飛んでいった。
「ひっ!」
先程の光景を見ていたために敵は小さく悲鳴を上げながら回避しようとしたが漆黒の槍は一瞬で着弾した。
うまく避けてもさらに次が来る。
「ぐわぁっ!」
「ぎゃっ!」
ドラゴンが次々と撃ち落とされていく光景は正直言って凄まじい光景だった。
圧倒的な強者であるはずのドラゴンがそこらの雑魚魔物と同じように殺されていく。
とはいえ彼らも馬鹿では無い。
しばらくすれば対策をしてきた。
「撃てっ!」
空高くまで上昇して魔法の届かない位置から弓を放つつもりらしい。
魔法と矢なら魔法のほうが基本的には射程が長いが高いところから撃つ場合に限れば矢のほうが射程距離は長い。
だがその反撃もあっさりと防がれた。
何せレンジャー兵の攻撃も防げるような部下がカルドの周りにはいるのだから。
そして隊長と思われる敵も撃ち落とした頃には敵は三割も残っていなかった。
少しすれば敵が逃げるのも当然だろう。
その時には太陽が地平線から昇ってきている時間となっていた。
そして街中で敵を撃退したことへの歓喜の声があちこちから響いたのだった。




