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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第四十二話 空襲

レンジャー兵とカルドたちの部隊との戦闘はすぐに始まった。

町中ということもあり、隠れながらクロスボウをあちこちから撃つレンジャー兵、それを鎧や盾で防ぎながら攻撃に専念できるカルドとシンというエース二人がレンジャー兵を倒すという展開になった。


「まだいんのかよ!」


だが空からはさらに敵兵が降下してきていた。

その全てがレンジャー兵ということではないのでまだなんとかなるが数が多い。

さすがに小隊一つでどうにかなる数ではない。


「目立たないように動け! 狙われたら死ぬぞ!」


レンジャー兵の矢は盾と鎧でなんとかなるがさすがにドラゴンのブレスはどうしようもない。

建物の中など、空からは見られない場所を経由しなければ移動すら厳しい状況なのだ。


稀にドラゴンが地上へと墜落しているのが見えるので灰鼠騎士団が奮闘しているのが分かる。

この街には灰鼠騎士団の中隊が一ついるだけなのでその中隊だけでドラゴンの大半を相手しているらしい。

炎上する街の光や光魔法などで照らされて上空を旋回するドラゴンの影が見えるのは恐怖を感じるには十分すぎるものだ。


相変わらず騎竜隊は油や火矢、松明を街へと放っているため街の炎上はとどまるところを知らない。

街の外側付近は消火活動がされているのでまだましだが中央は戦闘中で消火にまで手が回っていないようだ。


「報告! 報告!」

「どうした!」

「敵の大型ドラゴンのブレスで中央の城が大炎上しています!」


城があった方向に目を向ければ数匹の大型のドラゴンが城の周りを飛びながら炎を浴びせている。


「くそっ! 城の中の部隊はどうなっているんだ!」


状況を確認したくてもここからでは遠すぎて味方の部隊の様子は分からない。

魔法がドラゴン目掛けて飛んでいっているのをみるにまだ城の中に籠もっている部隊がいるようだが長くはあるまい。


「せめて攻撃手段があれば……!」


上位の魔法を使える魔法使いや城に取り付けられているバリスタや投石機などの兵器を除けばドラゴンへ有効なダメージを与えられる攻撃手段はない。

灰鼠騎士団は毒魔法で弱らせたりや光魔法で強い光を放って目を潰して落としたりして攻撃できているが普通の歩兵では攻撃が届かないし弓は弾かれる。


「魔法……せめて魔法を何か使えれば……。」


その時、はるか上空に旋回していた騎竜隊の一部が急降下した。


「くるぞーーー!」


誰かが叫ぶ。

慌てて建物に隠れるが遅れたものは一瞬にして焼き払われた。


「ああ……そんな……。」


一部の味方は心が折れてしまったようだ。

なにせ一方的に焼き払われていき、殺されるのだ。

心が折れるのも無理は無い。


「敵のレンジャー兵はどうだ?」

「多分、あらかた倒せたけど増援が来ないとは限らないね!」


熱風を肌で感じながらシンに問いかければ少しは希望の持てる情報が返ってきた。

増援は来るかもしれないが増援が来るにしてもしばらくの間はレンジャー兵はいない。


「ならやっぱりドラゴンをどうにかしないとな……。」

「とは言ってもうちの部隊にドラゴンを倒せる手段な無いよ! 今は小型のドラゴンしか近くにいないからレンガや石製の建物でなんとか防げるけど大型のドラゴンが相手だと一発で吹き飛びかねない!」


シンの言葉を聞いても頭を抱える以外に方法がない。

なにせなにも攻撃できないのだから隠れるしかないのだ。

その時、部下の一人が悲鳴を上げた。


「大変です!! 大型のドラゴンが街を焼き払い始めました!!」


どうやらあちこちの建物で隠れる帝国軍を炙り出すつもりのようだ。

このまま隠れてても大型のドラゴン相手では建物ごと焼かれ、骨も残らない。


「来たぞ!」

「逃げろーー!!」

「うわああぁぁーー!!」


味方の部隊もほとんどパニック状態だ。

そして部下たちを落ち着かせようとした時、ドラゴンが目の前まで迫っていた。


ドラゴンの真紅の目とカルドの目がお互いを捉え、視線が交差した。

次の瞬間にはドラゴンが大きく口を開いた。

喉の奥にチカチカと炎が輝いている。

ブレスの前兆だ。


その時、カルドの頭の中には走馬灯が走った。

街の住人を手伝ったこと、自分の部下たちの笑顔、敵将を討ち取った戦場、シンとともに鍛錬した日々、幼い頃の親との思い出、そして――








闇魔法



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