第四十話 停滞
騎士団長4人による会議で対策は決定されたが前線では様々な問題が発生していた。
「早く灰鼠どもを呼んでこい! 前衛が壊滅するぞ!」
「左翼で手一杯だそうだ! 自分たちだけでなんとかしろとさ!」
「ふざけやがって!」
悪態をつきながら赤色の騎士たちは必死で空を舞う大量のドラゴンと交戦していた。
数日前、帝国軍は例の勢力の支配領域まで侵攻した。
そのため敵の騎竜隊との戦闘が激化したのだ。
「バリスタはどうした! さっさと撃ち落とせ!」
「駄目です! とてもですが空を飛んでいるドラゴン相手にバリスタなんて当てられません!」
「なら魔法使いを呼べ! あいつらならなんとかできるだろうが!」
「そうは言われても数が……。」
「くそっ! なんでこんなにドラゴンを所持しているんだ! 諜報部によると百だそうじゃないか!?」
だが空を見上げれば百どころか五百を超るほどの大軍が空を彩っている。
「情報の5倍なんて誤差の範囲を超えている! 諜報部は何をしているんだ!」
「報告です! 敵の歩兵隊の増援です!」
「何! 数は!?」
「五千以上とのことです。」
「五千だと……? どこにそんな大軍を……あいつらの軍事力的にはもう限界なはずだというのに……人数はまだしもどうやって武器を揃えたのだ! あいつらの装備は急いで作った時にできるような劣悪な代物ではない。あれほどの数をどうやって短期間に……。」
「駄目です! 右翼も押され始めました!」
「くそっ! 全部隊に撤退の指示をしろ! 騎竜隊に追いかけられるから森に逃げ込め!」
その頃、各地でも同じようなことが起きていた。
今まで順調に勝利し続けていた帝国軍はたった一つの勢力相手に苦戦し、戦線は停滞していた。
そしてカルドたちがいる前線から離れた街でも変化が起きていた。
「補給部隊が来ていない?」
カルドたちがいる街は前線と本土の中間地点にある。
なので前線への補機物資の大半はここを経由して送られるはずなのだ。
「そろそろ物資が運び込まれるはずだったよな。」
「ですが時間になっても一向に来ないんですよ。」
部下の話を聞いてカルドは首を傾げながら考える。
「う〜ん。最近は雨も降ってないから橋が崩れたってこともないだろうしなぁ……まさか盗賊が襲うわけもないし。」
「まさかロッド王国では……?」
「いや、それこそまさかでしょ。」
シンが頭を左右に振る。
「だってここは戦線からは離れているんだよ。どうやって補給部隊を襲う部隊をここまで送るのさ。ほとんどの道には帝国軍の見張りがいるし道を迂回しようにもスキルでバレる。熟練の偵察兵のスキルの索敵範囲は広いから間をすり抜けるのも厳しいはず。」
「なら一体どうやって……。」
「補給部隊が何かしらのトラブルで遅れているなら何かしら報告が来るから間違いなく異常だ。もしかしたら俺たちもこの事件の調査とか補給部隊の護衛の任務に就いたりするかもな……。」
「にしても補給部隊が来てくれないと前線がヤバくない? 今はただでさえ戦況が悪いらしいのに物資が無くなったら余計に戦況が悪化するよね?」
シンの言葉にカルドが青ざめる。
「確かにそうだな。まずいな……上層部はちゃんとこのことを認識しているよな?」
「ここに情報が来てるんだから上層部に来てないわけがないでしょ。」
「それならいいんだが……。」
カルドは底しれぬ不安を心の中に感じていたのだった。




