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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第三十七話 鍛錬

街の中央で剣と剣を打ち付け合う音が早朝から響き渡る。


「ん? ……またあの連中か。」

「こんな朝から? 毎日毎日、あの音で早朝に起こされるんだけど……。」


街の人たちは数日前からこの音を聞いており、何の音かも知っているので不審に思うことは無い。

この音は鍛錬の音である。

もちろん、騎士団の。


「てやぁ!」

「たあっ!」


部下たちが鍛錬に励んでいる光景を見ながらカルドが欠伸をして口を開く。


「ふわあ〜〜。 ……今日も君たちやってるの? 訓練時間は十分昼間に取ってると思うんだけど……。」


カルドは呆れ顔だ。

ふと空を見るとまだ太陽は出ていない。

それどころか少ししか明るくなっていない。

大抵の人間はまだ寝ている時間だろう。

すると部下の一人が言った。


「いえいえ! 隊長や副隊長に追いつこうと思って自主的に練習してるだけなのでお気にならさずに!」

「追いつこうと……? そういうことか……。」

「隊長と副隊長が敵の将軍を打ち破ったことで昇進したことは我々一同、皆知っているので! そんな人の部下なのだからもっと頑張ろうと思った次第です!」


気づけば部下全員が尊敬の眼差しで見つめてきている。

本当にカルドとシンに憧れて練習したらしい。


「まあ練習することは良いことなんだけど……。えっと、あれだ。近隣住民に騒音がすると届け出が出てたんだがお前らのことだよな?」

「はい! 多分そうです!」

「まあだろうな……ここ最近ずっとだし……。まあ一応届け出が出たからには一応、調査して報告とかしておかないといけないからまあ聞いたけど……想像通りだな。まあ騒音にだけは気をつけてくれよ。せめて早朝にはしないでくれ。それだけ気をつければ練習はいくらでもしてくれていいから。怪我にだけは気をつけてくれよ〜。」


そう言いながら手を振ってカルドは仕事に戻っていった。

その後ろ姿を部下たちは憧れと尊敬の眼差しで見つめていた。


「やっぱ隊長はすげえな! ちゃんと心配してくれてるんだぞ!」

「あの隊長なら信頼できるな!」


カルドとシンがここまで尊敬されている理由は幾つかある。


一つ目は敵の将軍を二人で討ち取ったことだ。

あの将軍はかなりの武闘派の一人として知られており、そんな将軍を一人で倒したことで実力が認められているのだ。


もう一つは人格だ。

カルドもシンも比較的、素っ気ない態度をとっているのだがそれでも他の隊長と比べたら断然、融通がきくし何よりも部下の様子をよく見てくれている。


そんなこんなで二人は尊敬されているのだった。


「まったく……俺とシンのどこを尊敬しているのか……。」


このように二人は尊敬されている理由にあまりピンときていない。

もちろん、実力が憧れの対象になっているのは分かる。

敵将を討ち取ったのに自分たちに実力が足りないなどとは思っていない。


だが人格についてが頭からスッポリと抜け落ちており憧れだけでなく尊敬までされていることに疑問を持っているというわけなのだ。


「本当になんでなんだろうなぁ。」


それからもしばらくの間、部下たちの自主練は続き、住民たちはしばしば早朝に叩き起こされるのだった。

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