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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第三十六話 安息

街を占領してさらに数日が経った。

ようやく火事場泥棒が減り、治安が安定してきていた。

とはいえ街の人々の反感は相変わらずである。

駐屯している部隊はいつ反乱が起きるのかをビクビクしながら待っていた。


「……それでこれか?」


カルドの目の前では街の壊れた家などの再建を手伝う騎士たちがいた。


「らしいね。」


シンが呟く。


「果たしてこれでなんとかなるのだろうか?」

「さあ……自分は性善説とか信じないけどね。」

「まあ多分……効果はあるんだろうな。」


住人たちの様子を見れば初期よりは視線のトゲが収まっている。

もちろんまだ恨みはあるだろうが何もしないよりは好感度はまだマシだろう。


「何かをしないと罪悪感もあるんだよ。」

「なるほどな……確かにこの街の惨状を見た時から多少は思っていたことだ。……俺も手伝ってくる。」

「おっ。じゃあ自分も行っとこうかな。平和なほうが楽だしね。」


その後、力仕事をしばらくの間手伝った。

次の日も、そのまた次の日も。


最初は街の人たちの視線に警戒心や猜疑心が籠もっていたが段々と薄れていった。

ある程度経つと多少だが態度も柔らかくなった。

敵国には違いないし、信頼もしていないがひとまずは警戒しなくてもいいだろうと判断されたらしい。

それだけでも精神的にはかなり楽になっていた。


やはり毎日四六時中殺意の目で見られるのに精神的に疲れていたらしい。

心なしか治安は良くなった。


その数日後、泥棒を捕まえる際に騎士団に協力してくれた者がいた。

街の人からしても当然、泥棒なんていなくなるべきなので逮捕に協力するのは当然なのだがそれはそれとして嬉しかったのは言うまでもないだろう。


「……最近、雰囲気が柔らかくなったな。」

「まあ敵がいるの状態から見知らぬ隣人がいる状態に移ってきたんだろうね。」

「まあおかげで活気が戻ってきたな。さすがに歓迎だとかはされないがこれでひとまずは十分だな。」

「敵国の人間にいきなり明るく挨拶されてもこっちが不気味に感じるだけだからこれくらいの距離感が心地よいね。」

「背中に気をつけなくていいだけでも安心できる。」


街を眺めながらニコニコとした顔で話していると部下の一人が来た。


「あっ、隊長。それに副隊長も。」

「どうした?」

「つい先程、本国から補給部隊が来ました。」

「おっ、本当か。」


ついこの前からその情報はもちろん来ていたのだがやはり食料や装備が来ると安心できる。


「まあ一部……というか大半はこの街で一休みしたらすぐに最前線の本隊に送るそうです。」

「だろうな。本隊は今何してんだろうな。シンは知ってる?」

「隊長なら知っとけよ……確か一昨日に敵の勢力を一つ滅ぼしたぞ。」

「さすがだね……にしても侵攻が速いこと速いこと。」

「まあ歩兵を切り離したからな。」


本隊は現在、大半が騎兵で構成されている。

なぜなら現在は速度を重視するべき局面だからだ。

最初は敵の国境を喰い破るための戦力が必要だが国境を突破し、しかも敵の主力を打ち破った今、速い騎兵で素早く侵攻していくべきだとなったのだ。


「それでうちの上の人間と赤竜騎士団の上の人間がちょっと揉めたらしいよ。」

「だろうな。赤竜騎士団は大半が騎兵だから連れていけるけど黒曜騎士団は大半が歩兵、しかも重装備で足が遅いから置いていかれる候補一位だから……。」

「まあ仕方ないよね……。」

「まあ上のいざこざなんて自分たちには関係のないことさ。さっさと補給がちゃんと届いたかを資料見て確認してこないと……。」

「自分たちが部隊でやるの?」

「自分たちも、だな。自分の分は自分でしろとさ。」

「厳しいねぇ〜。」


そうして二人はまた仕事へ向かった。

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