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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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第三十五話 治安


「……もっと気楽な仕事がほしい。何も考えずに敵を倒すだけでいい仕事のほうがいい……。」

「そう言うなよカルド。それなら街は誰が守るんだよ。」


街を占領して数日が経った。

軍は一部の部隊だけをこの街の防衛につかせると次の街へと向かっていった。

そしてカルドの部隊は街の防衛をする部隊の一つである。


「まあそれは分かるんだけどさ……。」

「まあ気持ちは分かるよ。この視線はね……。」


現在は街の中央の城の門にいるのだが憎悪の炎を奥に宿している目で見られることがたびたびあった。


「街の人たちからしたら俺たちは侵略者であって守ってくれる人では無いからな。仕方ない。」

「あれだけ戦闘に巻き込まれたんだからそりゃあ恨むだろうね。彼らも。」

「いつか背中刺されそうなんだよなぁ……。」

「その前に反乱が先じゃないかなぁ。」

「それも嫌だねぇ……。」


反乱が起きた時のことを想像してカルドが憂鬱になる。

シンも憂鬱な気分になったがすぐに話題を変えた。


「そういえば上層部はこの街をこれからどうするって?」

「物資集積所兼いざという時の防衛線。」

「防衛線って……この街で守るなんてできると思う?」

「無理だろ。この街は広いし賑わっている。けど広すぎるんだよ。守らないといけない場所が多すぎる割に城壁も堀も柵すらもほとんど無い。中央の城だけはそこそこのものだけどそれだけじゃあな。なによりも街の人に反乱起こされて中から殺されかねない。」


結局話題が戻ったことに頭を抱えながらシンが呟く。


「……それなんだよねぇ……。街の人と仲良くなんて絶対無理だし……。」

「絶対か……。根拠は?」

「人は感謝を忘れても恨みは一生忘れない。」

「……真摯な態度をずっととってたらなんとかなるとかないかね。」

「ないね。何を今更って思われるだけさ。そりゃ数年経てば多少、恨みが薄れるだろうし大半は何も思わなくなるかもね。けど家族や知人が死んだ人は何かは思い続けるよ。数十年とたって世代交代が起きても恨みが受け継がれるだけだ。」

「そんなものか……。」


その時、遠くから警笛の音が聞こえた。

見回りをしている他の部隊によるものだろう。


「……。」

「治安が悪くなってるんだ。最近しょっちゅうだよ。」


カルドは頭を抱えたがシンはとうに諦めているのか特に変化は無い。

しばらくすれば騎士たちが犯人と思われる人間を縄で縛って連れてきた。

報告書に纏めるべく、紙とペンを取り出しながらカルドが聞く。


「罪状は?」

「ひったくりだそうだ。」

「またか……この街を占領してまだ数日だっていうのに……夜中に捕まえてこられて叩き起こされるの勘弁してくれよ……。」

「こっちも忙しすぎて中々眠れねえよ。」


捕まえた騎士もかなりうんざりとした様子だ。

二人揃って溜息をつく。

シンが二人を励まそうとした時、遠くからまた警笛が鳴った。

しかも何回も鳴っているので大きな事件らしい。


「……。」

「見回り、頑張れよ。俺も今のうちに紙とペンのインク補充しとくから……。」

「ああ……。」


そしてしばらくすれば十人近く連行されてきたため、カルドはまた頭を抱えた。

書類をまた用意しなければ、と。

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