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悲劇の英雄が死ぬまでの長い長い物語  作者: サン
第四章 隊長時代

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三十三話 侵攻

そして作戦開始の日になった。

夜中の内に配置につき、夜明けとともに作戦開始だ。


「シ、……副隊長、諜報部の新情報が届いた。」

「二人っきりなんだからシンでいいだろ……それで新情報?」

「現在のロッド王国の勢力図。」

「えっ!? かなり重要な情報じゃないか!」

「流石に見せてはくれなかったがな……時間をかけただけあって信憑性は問題ないとさ。」

「ふむふむ。」

「それを見た上層部によると今まで戦ってきた軍は全て同じ勢力の軍らしい。そしてその勢力はこの街を本拠地にしているそうだ。」

「なるほど……それは……。」

「間違いなく何かしら問題があったんだろうな。少なくとも上層部の人間でしか知ってはいけないようなことだ。」


カルドが頭を掻きながら言った。

そのすぐ横にいたシンも考えていることを言う。


「カルドが前の偵察で遭遇したとかいうレンジャー兵は元は西の国境の担当だったんだ。こんなところに普通はいるわけが無い。」

「偵察任務の時に一緒だった班長も言ってたよ。西から東までのかなりの範囲を支配する大勢力がいるか……あるいは一時的に西のどっかの勢力とここの勢力が手を組んだか。わざわざそんなことを隠すということは恐らく後者、前者だとしたらかなりの大勢力の二つが手を組んだんだろう。……まあどちらにしても帝国からしたら厄介なことだ。」

「……まあ雑兵の俺たちに今できるのは目の前の敵を倒すことだけだな。」


その時、テントの隙間から地平線を見るとほんの僅かに空が赤色に染まってきていた。


「配置につくか……。」

「シン、部隊の皆を起こしてきてくれ。」

「分かった。」


そして整列してからしばらくしてついに、太陽が顔を覗かせた。


「作戦開始! 前進!」


近くにいた直属の上官である大隊長の声が響き渡る。

ベテランの騎士たちがゆっくりと、だが整然とした様子で前進を始める。

そしてカルドやまだ経験の浅い騎士たちも緊張を顔に浮かべながら進み始めた。


街のほうからは警鐘が鳴り響いている。

よく目を凝らすと小さな粒、恐らく防衛している兵士が慌ただしく動き回っている。

だが次の瞬間、その兵士たちが吹き飛んだ。

味方の投石機だ。

次々と長い棒をしならせながら物理法則に従って岩石を勢いよく射出していき、それらは放射線状に飛んでいった。


魔法使いによる援護もあるらしい。

魔法によって土の壁があるため燃えない土に炎は効かないだろうと考えたのか戦争でよく好まれて使う炎魔法ではなく氷や岩などの物理系統の魔法ばかりだ。

身も蓋もない圧倒的な物量によって街を囲っていた簡易的な防壁が崩れ去っていく。


「総員、抜刀!」


大隊長の声が響き渡る。

ついに突撃するらしい。

偵察任務の時と違って頼り甲斐のある鎧の重さを感じながら小隊長になったことで前回の戦闘から少しだけ質の上がった剣を抜く。

すぐ横ではシンもまた、剣を抜いている。


「突撃ーーー!!」


一斉に前衛にいた部隊が走り出す。

大半が重装備の歩兵なので騎馬隊などと違ってゆっくりだが攻められる側からしたら恐ろしい光景だろう。


すると街のほうから矢の雨が降ってきた。

投石や魔法の攻撃を生き残った者たちがなんとか部隊を纏めたらしい。


ほとんどの矢は重装備の装甲の前に敵を傷つけるという役割を果たすこともなく弾かれた。

極一部の矢が不運な者の鎧の隙間に命中するが当たればすぐ即死になるような場所に装甲をつけていないわけが無いので致命傷にはならない。


そして二発目の準備を終えた投石機がお返しと言わんばかりにまた石を飛ばした。

しかも壁は既に半壊しているので人間への殺傷能力の高い小さな石の粒、といっても一つ一つが人の頭ほどの大きさがあるそれを大軍で投げた。


すぐさま結果は出た。

敵のほうではかなり被害が出たようだ。

矢はまだ少しだけ飛んでくるが先程までと違って纏めて大量に飛んでくることはない。

これでは牽制にすらならない。


そして帝国軍は街へと襲いかかった。


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