第二十四話 敵将
カルドが奮闘しているころ、分野こそ違えど司令部もまた、奮闘していた。
「報告! 左翼前衛がかなり押している模様!」
「前に出すぎだ。敵の部隊に包囲されかねん。左翼中央を左翼前衛を包囲しようとする部隊にぶつけろ。」
「敵別働隊が右翼後衛に多数襲来!」
「くそっ! 右翼後衛は援護を中断しても構わん、反撃しろ! こっちの別働隊はどうした!」
「敵左翼中央に喰らいつきました!」
「別働隊はそのまま足止め! 右翼前衛は多少被害がでても構わん、前進しろ! 魔法部隊は中央の敵部隊を焼き払え!」
「了解。さらに報告、敵別働隊を撃退しました!」
「また来るかもしれん。右翼後衛は半分警戒、残りは援護を再開しろ!」
その時、魔法部隊の攻撃が敵の中央部隊を見事に焼き払った。
「よし! 中央前衛は前進! 後ろの部隊も後に続いて援護しろ!」
黒曜騎士団の精鋭が魔法によって半壊した防御陣形を食い破ると一気にその勢いのまま突っ込んでいった。
「報告! 味方別働隊が敵右翼中央を壊滅させました! 現在は敵右翼後衛を倒しつつ敵右翼前衛を後ろから挟撃しています! 敵の将を一人討ち取ったとのことです!」
「よし! さすが赤竜騎士団の精鋭だ!」
「報告です! 味方左翼前衛が敵右翼前衛を突破しました! そのまま敵右翼中央も薙ぎ倒しています!」
「凄いな……確か黒曜騎士団の新兵だっただろうに……まあ良い。左翼中央は左翼前衛を援護してやれ。包囲されないようにな。…………これは勝ったかな。」
戦場を見れば既に敵軍が追い詰められていることが分かる。
敵の主力部隊はどこも半壊、こちらは一番戦闘の多い前衛部隊すらほとんど被害を受けていない。
特に右翼は敵の将を討ち取ったことで敵は浮足立っており、別働隊が食らいついている。
左翼前衛が新兵とは思えない速度で進撃しているのも見えた。
「? ……左翼前衛が止まったな。」
「報告! 左翼前衛に敵の将が出ました! 将軍だと思われます!」
「将軍が出たとなるとその親衛隊も出るだろうな。各個撃破して逆転しようとでも思っているのか…………このまま左翼前衛がやられかねん。右翼はさっさと残党を片付けて敵の中央に圧力を与えろ。ここで無くすのは惜しいが仕方ない。左翼前衛がやられている間に敵を叩き潰す!」
――――――――――――――――――――――
「くっ!」
カルドたち左翼前衛は突然、今までとは段違いの練度の兵士、つまり親衛隊に出会っていた。
新兵では荷が重い相手だ。
あちこちで悲鳴が上がっている。
部隊隊長が死守命令を出しているので逃げることもできない。
カルドはそんな中、一番先頭で敵を斬り伏せていた。
「てえああぁぁ!!」
また一人、敵を斬り倒したその時、背後から何かが飛んでくる音が聞こえた。
咄嗟にしゃがむと頭上を巨大な鉄塊が通り過ぎていった。
どうやら巨大なハンマーのようだ。
人ほどの大きさのハンマーを振り回しているからには使い手は中々の腕だろう。
すぐに振り向き、体勢を立て直しながら敵を視認すると予想外の相手に愕然とした。
装備から見て明らかに将軍格だ。
「まさか後ろからやったのに避けられるとはな。普通は正面からでも避けられんのだが。雑兵のわりには中々やるようだ。」
将軍は不敵に笑いながらハンマーを構え直した。
全身を重装甲に包んだ体格の良い四十代半ばほどの男。
少し太っているが無駄な脂肪ではなく筋肉だと考えるとかなり鍛え上げられていることの裏付けだ。
カルドも強敵の登場に緊張しながらも冷静に殺す手順を考え始めていた。




