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悲劇の英雄が死ぬまでのありふれた物語  作者: サン
第三章 騎士時代

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第二十二話 突撃

二つの軍の睨み合いは長時間に渡っておこなわれた。

このまま睨み合いだけで終わるのではと思われるほどの長い時間睨み合い続け、最終的に先に攻撃したのはヘクタ帝国だった。


「中央前衛部隊、前進! 敵の前衛に喰らいつけ!!」


指揮官の号令によって軍の一部が一斉に動き出す。

ちなみにカルドとシンは左翼の前衛部隊である。


前進した部隊に敵部隊からの矢が雨のように降りそそぐ。

盾で上からの攻撃を防ぎながら進むが矢が多すぎて死者はほぼいないが少し怪我人などの被害が出ているようだ。

ちなみに彼らは黒曜騎士団の、しかもベテランたちだ。


そしてしばらくしてついに敵部隊にまで到達し、一気に斬りかかった。

相手は捨て駒用なのか傭兵が前衛だ。

正規兵ほどではないが弱くはない。

だがベテランの騎士が傭兵相手に負けるわけが無い。

どんどん突き進んでいる。

どうやら上層部は最初っから強いカードを切って一気にねじ伏せるつもりのようだ。


だが相手も馬鹿では無い。

すぐに右翼と左翼の部隊が動いて包囲しようとする。


「中央を援護しろ!」


そこでようやくカルドたち左翼にも号令がかかった。

中央を包囲されないように援護するのだ。


敵が目の前に迫ってきたことでカルドがふとシンに言う。


「シン。」

「どうした?」


死ぬなよと言おうと思ったがそんなことを言ったら逆に死ぬかもしれないという嫌な予感がした。

だから別のことを言うことにした。


「…………勝とうぜ!」

「もちろん!」


シンの心強い声を聞くと武器を構える。

騎士になったことでベテランたちの装備ほどではないが新兵の時よりは断然装備が上質だ。


一気に走り出す。

前面の敵は傭兵。

こちらの突撃を見るなり長槍を持って受けの体勢になった。

それは恐怖を湧かせるには充分すぎる景色だが心はどこまでも平静だ。

極限まで集中しているのか周りの景色がゆっくりと後方に流れていき、音が遠ざかる。




敵部隊まで百メートル。


九十メートル。


八十メートル。

敵の矢で隣にいた味方の肩が撃ち抜かれたがカルドは止まらない。


七十メートル。


六十メートル。


五十メートル。

顔面に迫る敵の矢を剣ではたき落とした。

四十メートル。


三十メートル。


二十メートル。

敵の部隊に味方の矢の一斉射撃が突き刺さり、血を出しながら何人かが倒れ込んだ。


十メートル。

槍兵が倒れたことで槍の壁に隙間ができた。

すぐに後詰めが埋めようとするがもう近すぎて間に合わない。




ゼロメートル。




次の瞬間、カルドは無意識に吠えながら驚愕の表情を顔に貼り付けた敵の傭兵を鋭い剣で切り裂いた。


「「「わあああぁぁぁーーー!!!」」」


時が一気に動き出したかのように音が戻ってくると耳に怒声と悲鳴、金属と金属が打ち合う音が飛び込んでくる。


戦場には血と矢と怒声と悲鳴が飛び交っていた。

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