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悲劇の英雄が死ぬまでのありふれた物語  作者: サン
第二章 新兵時代

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第十八話 先人

次の日、一行は野営地を取り払うとワイバーンから取れた素材を抱えて下山していた。


「……なあなあカルド。」

「どうした?」

「捜索、全然してないけど良いのかな……?」

「捜索? あぁ、途中で逃げ出した連中のことか……まあ敵前逃亡だからどうせ戻ってきても罰則ものだし、この山脈で一人で、しかも食料も持ってないのに生き残れないからな……探すだけ無駄だと判断されたんだろうさ……。」

「厳しいなぁ……。」


シンは一瞬だけ彼らの無事を祈って瞑目すると少し暗くなった雰囲気を変えようと話題を変えた。


「そういえばワイバーンの素材、量のわりにあんまり重くないな。この量背負うってなってまた大変だろうと思ってたけど軽いからか全然大丈夫だ。」

「ワイバーンの鱗は軽いからなぁ……なんせ飛んでいる生き物だぜ? 軽くないと飛べないよ。」

「なるほどなぁ……そういえばあの蝙蝠の素材は持ってきてないけどあれは? 解体せずに死体ごと全部燃やしてたけど。」

「あれは大した値段にならないからだな。そもそも売れる部位が牙くらいでしかもそれも安くて二束三文にもならないから解体したりこんなところから持ち帰って運搬する手間を考えたらやる意味は無いんだ。」

「なるほどね〜。」


呑気に話ながら歩き続け、ようやく遠くに炊事の煙が見えた。


「見ろ! 煙だ!」

「ついに帰ってきたぞ!」


今回はワイバーンという緊急事態に遭遇してしまったこともあり、ようやく安全な場所にまで帰れたことで歓声を上げる者がいた。

歓声を上げなくても安堵のため息をする者は多かった。


「美味しい食事が楽しみだな〜〜!」


シンの場合は安全な場所に帰れたことよりも作戦中に食べていた不味い食料を食わなくて済むことのほうが嬉しいらしい。


「食い意地が張ってんだよなぁ……。どこにあの量が入るんだか。」


呆れるカルドの声にも嬉しさが滲み出ている。


そしてようやく辿り着くと村人たちが出迎えてくれた。

場所によっては騎士は村人に嫌われていることも多いのだが黒曜騎士団は村人と仲が良いのだろう。

おかげでその黒曜騎士団の下で学んでいる新兵も歓迎されている。


その後で駐屯地へ行くと予め用意されていた食べ物を食べた。


「…………!」


カルドもシンも笑顔のまま無言で齧り付く。

久しぶりのちゃんとした食事だ。


ちなみに指揮官だけはさすがに緊急事態があったことを伝達しないといけないので食事も取らずに報告に行っている。

美味しい食事を未練がましく見ながら去っていたとか去っていないとか。


「今回は……大変だったなあ。」

「そうだねぇ。……けどさ。ワイバーンを倒したんなら上にも評価されるんじゃないかな?」


シンが嬉しげに言う。


「どうだろうなぁ。まあ全く評価されないってことは無いか。」

「いきなり騎士になれたりしないかな……!」

「それは……さすがに無理だろ。」


ちなみに、当然ながら一気に騎士になるということは無かった。

もちろん上に2人のことは伝わってはいる。

単純に経験不足の新兵を騎士に昇格させるのはいろいろと問題があるのだ。


2人はその事を知らないのでとても残念がった。

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