第十五話 遭遇
次の日、一行は帰路についていた。
行きよりも肉体的には疲れているがようやく安全なところへ帰れるということで精神的にはよほど楽だった。
このケルグ山脈には色々な魔物がいる。
そのほとんどが大した力を持っていない。
だが知能が高い魔物がその大半を占めている。
例えば、先日倒したコウモリ型の魔物。
この魔物はメインの巣とは別に砦と呼ばれる小さな巣を幾つかに分けて設置しておく。
そうすることでメインの巣が襲われても根絶やしにならないようにするとメインの巣が襲われた時に襲ってきた魔物を周りの巣からやってきた群れで包囲して逆に倒すのだ。
他にも特殊な毒を持つものや、岩に擬態することで強力な魔物をやり過ごすもの、高い飛行能力で逃げるものなどもいた。
こうして力の乏しい魔物でありながら極稀にケルグ山脈の外からやってくる強力な魔物が相手でも撃退することができるのだ。
だがだからといって弱い魔物しかいないわけでは無い。
カルドがふと小さな違和感を感じた。
「ん?」
周りを見渡すが特に何も見えない。
「どうした?」
シンが声をかけてきたが嫌な予感が強まってきていることで何かが来ていると判断して警戒レベルを一段階上げて周りを警戒しながら答える。
「何か来ている気がす――」
その時、地面が微かに揺れた。
カルド以外にも感じれるほどの揺れだった。
さらにもう一度。
そしてもう一度。
さすがに何度も起きたなら何かが起きていると言うことで間違いない。
足音のようだが少しだけ違う。
最小限の会話をしてから円陣を組みながら全周を警戒する。
そうしている間にも揺れは段々と大きくなっていく。
「近づいて来ているのか……?」
誰かがそうボソリと呟いた時、ソレは山の裏から現れた。
真っ白な大蛇だった。
誰もが呆然として警戒するのも忘れて見ることしかできなかった。
なぜならその大蛇は恐ろしいほどの巨体だったからだ。
かなり遠くにいるというのにそれでもかなりの巨体に見える。
近づいたらもっと大きいだろう。
遠近感がおかしくなる。
大蛇の上空にはワイバーンがまるで羽虫のように飛んでいる。
ワイバーンだって小さい個体でも十メートルは余裕で越えるほどの大きさなのにそれが羽虫のように感じるのだからその巨体が分かるだろう。
誰も攻撃しようとも騒ごうともしなかった。
魔物というよりは神か精霊のように見えた。
その大蛇は雷を纏っているのか時々、大蛇の体の表面に雷が走る。
それは神秘的で、誰かが綺麗と呟いた。
それはこちらを一瞥することすらなく悠々と山と山の間を縫うようにして這っていき、そのうち姿も見えなくなった。
後に聞いたところ、あれはヴァイス・シュランガという魔物でこの山脈にのみいる固有種であり、なおかつこの山脈の主のような存在の一つらしい。
麓までは降りてこず人間に害は与えない。
極稀に麓の村から見えることがあるため昔からいることは確認されており、村人たちからはとある呼び方で呼ばれている。
『白銀の雷神』、と。
これの前作見てた人は既に疑問を持っているでしょうが未来(前作)と過去(今作)のケルグ山脈では魔物の種類や生態や分布などが違います。
前作ででるケルグ山脈の魔物の大半は今作の時代には存在しません。
変わらずいるのは狼と山羊くらいです。




