第百十六話 氷剣
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カーネがなぜここに、と思って後ろをチラリと見ると、部下たちがカーネの担当していた分まで相手にしているのが見えた。
感謝したくなるが、動き続けていて息が苦しい。
一瞬できた隙に短く息を吸う。
その次の瞬間には剣がさらに飛んでくる。
とはいえ、立て直しはできた。
いつの間にか部下が回復魔法もかけてくれているため、目の傷も大丈夫だろう。
遠距離からでは効果が落ちるので、痛みこそ残っているが、動きにさえ支障が出なければ我慢できる。
カーネの死角から来てた剣を叩き壊し、カーネの横に並んだ。
そして、どうするか考えた。
先ほど確かにカルドはネロを斬った。
だが感触はなく、すり抜けていた。
つまりあれはゾンビやスケルトンなどではなく、実体のないゴースト系だ。
それ自体は全体で見ればやや少ないとはいえ、アンデッドの代表格と言われる程度には多い。
だが、問題はその対処法だ。
対処法自体はいろいろあるが、今回持ってきていない。
何せ、まさかゴースト系とは思っていなかったのだ。
生前が人だったゴーストはいても、生前が動物や魔物だったゴーストはいない。
生前が動物や魔物だった場合、ゾンビやスケルトンにしか絶対にならないという特徴があるのだ。
そのため、対ゴーストの道具も作戦も用意していない。
だが、ゴーストは魔法でも倒せる。
つまり、闇魔法をぶち込めばいい。
アンデッドに闇魔法が効くのかは分からないが、やるしかない。
にしてもネロの指導の元、闇魔法を鍛え続けたのがまさかネロを倒すのに活きるとは。
まあ、ネロとまだ確定したわけではないのだが戦闘には関係のないことだ。
手始めに破壊力を犠牲に、速さと貫通力を限界まで上げた状態の闇魔法を撃ち込む。
すぐさま、ネロが張った結界のようなもので防がれた。
かなり高度な対魔法攻撃用の防御結界らしい。
だが、詠唱でもするのだろう。
反応してから一瞬だけ、発動までにラグがあった。
そこを付くしかない。
幸い、防御魔法を常時発動することはできないようでもある。
カーネに援護してもらいながらなんとか、魔法を叩き込むしかない。
チラリとカーネに視線を向けるとあちらもこちらに視線を向けてきていた。
なのでそのまま情報共有をしておく。
「気をつけろ。普通の攻撃は効かん。魔法でやる。援護してくれ。」
「分かりました。」
お互い、既にかなり動き回っていたので息が荒く、声も自然と小さめだ。
相手に聞かれないようにという騎士としての性格もあるのだろう。
すぐに視線をネロに戻すと、すぐに飛び出せるように体勢を低くした。
まさかわざわざ待ってたわけでもあるまいがカルドたちの情報共有が終わったと同じタイミングであちらも攻撃を再開してきた。
恐らく、魔法を同時にいくつも出すのには時間が少しいるのだろう。
空中に数十個の氷が現れると、カチカチと凍る音を鳴らしながら剣の形に変化していった。
そして全てがまったく同じタイミングで完成し、それぞれがバラバラの構えを取った。
それを見てあの剣一つ一つに剣士が宿っているのかと感じた。
すぐさま氷剣は一斉に飛び回り始める。
一部は正面から突っ込み、残りは迂回して後ろへ回り込み、囲もうとしてきている。
戦術において、包囲とは強力だが、配置につくまでは戦力が分散され、正面などは数が少なくなる。
だからこそ、正面突破すればいい。
もちろん、配置までの短い時間でそんな簡単に突破できないから包囲というのは強いが、今回は氷剣が相手。
剣を当てれば簡単に折れ、砕け散る。
まず先に、闇魔法を放ち、それを追うようにして走り出す。
さすがに高速で飛び回る氷剣相手では分が悪く、闇魔法は避けられたがそれでも隙はできた。
闇魔法を避けることを先読みして剣を振り、どんどん叩き落としていく。
すぐ傍らではカーネも戦っているのがみえる。
さすがの剣技で、氷剣をいとも簡単に落としていっている。
カーネはカルドと違ってステータスが速さ寄りで、そういう剣士は集団戦の時、もう少し突っ込んで敵を撹乱するものなのだがさすがにこの数の氷剣相手に突っ込んだら全方向から串刺しにされるだろう。
今ですら見ていてハラハラする状態だ。
カルドにも余裕はないので万が一の時助けたりはできない。
そう思っていると、カーネがカルドの周りの氷剣を何本か叩き落としていった。
助けられてる、そう感じた。
いつの間にか自分が助ける側だと思っていたが気づけば助けられてる側になっているではないか。
それはもちろん頼もしくもあり、されど剣士としては悔しくもあったのだった。




