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哀しいどこにでもある物語  作者: サン
第七章 動乱時代

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第百十一話 焦燥


「不機嫌そうね。」


冷たい声。

これはネロのものだ。


『当たり前だろう? あの女のせいで計画の予定が狂った! あのまま闇魔法を馬鹿みたいに何も考えず、鍛え続けとけばいいものを!』


ネロの冷静な声とは真逆の、怒りのこもった声が響く。


「あれをした所で別にアンデッドになるわけじゃないでしょ? ならどうでもいいと思うのだけど?」

『アンデッドになった後に、その方が何かと楽なんだよ! ああ……めんどくさい。』


思わず眉をひそめてしまったのは仕方ないだろう。


「そもそも、アンデッドになることも確定したことじゃないのに、楽観的なものね。……考えれば分かるはずなのに。」


残念ながら、その言葉は当人には聞こえなかったようだ。

思わず舌打ちしそうになるが、自制した。

した所で何の意味もない。


「そんなことより、これからどうするつもり? このままじゃアンデッドに引き込むことすら厳しそうだけど。」

『どうするもこうするもない! いい加減、さっさとあいつを引き込め! どれだけ手間取ってる!』

「そんな無茶言われてもねぇ……ギリギリで粘られてるのよ。あと少しきっかけがあればいけたのだろうけど、もう無理。立ち直ってきてる。」

『くそっ! なぜだ!』


コレは、そこらの人間よりも圧倒的な知識を持っている。

そう、そのはずなのだ。


だが、コレはそれを活かせない。

怨念に取り憑かれている者にまともな判断などできない。


『……まてよ? ああすれば……。』

「……。」

『…………人間というのはどういう時に一番絶望すると思う?』

「さあ? 興味ないわ。」

『お前はよく知っていると思うが?』

「……幸せから、ドン底に突き落とされた時。」

『そうだとも。なら、そう仕向ければいい……!』

「どうするのよ。」

『簡単さ。あいつの周りにいる人間を皆殺しにすればいい。そうすれば周囲への八つ当たりをするだろう。』


やはり、コレは愚かだ。

それをしたところで何の意味があるのだろう。

カルドは八つ当たりなどをするような性格ではない。

そんな事態になれば、自身にしか怒りを向けないだろう。

そうなれば、自殺して終わりだ。


まあ、コレはカルドと話したことなどないし、情報もほとんど持ってないだろう。

なので仕方ないのかもしれない。

にしても短慮だ。

どうせ、自分の経験を当てにしてるのだろう。

だから、自分と同じように他人を恨むことしかできない、身勝手な人間しかこの世にいないと考えるのだ。


そして、ネロはコレの決定に逆らえない。


「そう……いいんじゃないかしら?」


だが、そもそも逆らう気もなかった。

コレが、自分の話すことに従うわけがないし、下手に逆らえば理性を消されかねない。

とてもだが、今(・)以(・)上(・)に(・)削(・)ら(・)れ(・)て(・)は(・)た(・)ま(・)ら(・)な(・)い(・)。


それに、その方が楽だ。

自分も、カルドも。


やられたことがあるから知っている。

コレは一度狙いを定めると絶対に逃さない。

何をしてでも引き摺り落とそうとする。

あっち側に。


『早く、見てみたいものだなぁ。カルドとやらを!』

「……あっちは会いたくないでしょうね。」

『はっ! 知ったことか! ……ようやく、俺の目標が……!』


その時の声は万感の思いがこもっていた。

余程したかったことがあったのだろう。


ネロが知ったことではないが。


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