第百九話 過去
カーネとの、決闘から数日後、カルドは1人で、剣を振っていた。
それの内容自体は、今までとは変わっていない。
だが、今回で変わったこともある。
今までは魔法に大きく割いてた時間を、剣の修練にあてたのだ。
「教え子の、お手本にならなければならない。……それが、教官だから、な。」
そのような独り言を呟きながら。
その頃、カーネはディズたちと話していた。
「カーネ。紹介するね。こいつはエルっていうよ。」
「こいつって言うなよ。ええ……始めまして。黒曜騎士団第三連隊長、エル・ハフトです。」
「……始めまして。カーネといいます。」
ディズとは違い、とても真面目なちゃんとした騎士だということに逆に戸惑いながらも挨拶する。
二十代後半くらいの若い金髪の男。
なんというか、服装を変えて眼鏡をかけたら文官にも見えなくないような雰囲気だ。
「真面目くん〜。ちゃんと挨拶できて偉いですね〜。よしよししてあげようかぁ〜?」
「ふざけんな。黙っとけチビ。」
ちなみに、ディズは特段背が小さいわけではない。
とはいえ男性のエルの方が大きいため、このように言ってるのだろう。
もし、身長に差が大して無くても単なる悪口のためだからどうせ言うのだろうが。
「それで、手合わせのことなのだけど。」
「急に真剣な話!?」
今のが、短期間の間にディズに大分影響されていることが分かるセリフだったのにはカーネ自身は気づいていない。
「ええっと……ごめんなさい。残念だけど負けちゃった……。」
「大丈夫! 目的はたっせいできたから!」
「え。そうだったの?」
「それはこっちから説明しましょう。まず、今回の手合わせの目的が、騎士団長に闇魔法の修練を減らさせることが目的だった。」
「…………?」
「どうも、最近は騎士団長が剣の修練をサボる……ってほどでもないのだけど、剣よりも魔法の修練を優先させてるんだ。」
「そうなんですか?」
「そう。引き分けでも、相手が元教え子だからなのか、あの試合に影響されて剣を優先しだしたみたいだしな。魔法についての理由なんだが……ここからはただの推測だ。きっと、力があったらアレだって、どうにかできたんじゃないか、そんな思考に陥ってるんじゃないかと俺たちは予想している。」
「アレ?」
「…………ディズ。お前言ってないのかアレを。」
「ごめん。だって…………。」
「まあ分かるさ。そんなに話したいことじゃない。」
そこで、エルは大きく息を吸い、ゆっくりと吐いた。
躊躇いを押し潰すために、躊躇いを吐き出して無くすために。
「なあ。カーネさん。……シンって人、知ってるか?」
「シンさん? 確か……教官の率いる部隊の副隊長だった人ですが。」
「仲、良さそうだっか?」
「かなり良かったはずですが。確か、訓練兵だった頃からの戦友だとか。」
「そうか、やはりそうだったか。……俺たちはその人と面識がなくて、あまり知らなかったから確証はなかったんだが、これで納得した。」
「面識がない?」
「ああ。……その、シンという騎士は、死んでいるんだ。だから、俺たちは話したことも見たこともない。」
「死んだ!?」
「反乱の時にらしい。病死とのことだ。」
「そんな……薬はなかったんですか。」
「なかったんだ。作ろうとはしたらしい。それで、薬草を探しに行ったみたいだしな。」
「けど、間に合ってはいない……。」
「それが問題だ。だから、捜索中に何かあったんじゃないかと予想している。力がもっとあったら、薬だって間に合ったのかもしれないようなことがな。」
「それで、どうして闇魔法を減らさせようとしてるんですか?」
「理由は二つ。一つは闇魔法を練習しだした頃から明らかに騎士団長の体調が悪い。病気とは違うようだがな。もう一つは、闇魔法はあの人にとって後悔を思い出させる存在であると思ったからだ。いつか、団長はいつか後悔に飲み込まれてしまう日が来るかもしれない。そう思ってしまうほどに強い感情なんだ。」
「なるほど…………けど――」
「多分他にも何かあります。」




