第百一話 依存
言ってることがまったく理解できない。
どういう意味なのだろうか。
「まず最初に一つ。私はアンデッドに無理矢理されただけの人間よ。そして……貴方も同じようになるのよ。意味が分からないでしょう? 私もそうだったもの。」
「なら説明してくれ。まったく分からん。」
「ええ、もちろん。……まず、この世界には怨念の集合体のようなものがあるの。アンデッドになりたくても無れないほどに強大なね。」
「強大ならアンデッドになれるんじゃないのか?」
「その膨大な力、瘴気に耐えられる体が無いのよ。一応、世界中探せばあるにはあるけど、アンデッドになる条件には当てはまらない。だから、ソレはこう考えた。条件が当てはまらないなら、当てはめればいい、とね。」
「……条件とは?」
「死ぬ間際に他人への強い負の感情を抱くこと。」
極々端的で短い文だ。
だが重要なことだ。
「正確には他にも条件があったり、条件が揃ってなくてもアンデッドになることはあるのだけど、このパターン以外はあまり期待できないわ。強さ的にも確率的にも。」
「……それで?」
「つまりは、他人に負の感情を抱かせた状態で死ぬように仕向けて、その後で自分たちの依代にしたのよ。」
「……負の感情を抱かせる方法は? わざわざ仕向けるなんて表現使うくらいだ。アンデッド自身が直接殺すだけじゃないんだろ?」
「簡単よ。とあるスキルを押しつければ済む話だもの。……スキル、『怨恨』。スキル保持者の全能力を大幅に上げる代わりに、負の感情、正確に言えば恨みの感情が大きくなりやすくなる。それなら他人への負の感情が強くなるから条件もすぐに達成できるってわけ。」
「……なるほどな。ちなみに、そのスキルって……。」
「もう貴方にもあるわ。スキルを他人に譲渡できるスキルがあるの。あくまでもこのスキルは大きくなりやすくするだけで、恨みの感情を生み出すものじゃないから、貴方が少しでも恨みの感情を抱きさえしなければ何も起きない。逆に言えばある程度、恨みを抱いたらほぼ終わりね。」
「…………恨みっていうならとっくに終わりだと思うのだが?」
「このスキルが貴方に渡されたのが割と最近だから、その時には貴方の復讐が終わってたのよ。ちなみに私は貴方の感情を読めるのだけど……今は恨みとは違う感情に埋め尽くされているわ。」
「何なんだ?」
一瞬、躊躇ったのか単に状態を再確認しただけなのか、黙り込んだ後、ネロが言った。
「…………諦観と後悔、かしらね。」
「ふっ……そうかよ……。」
負の感情なのには間違いないが他人への感情ではないからアンデッドになる条件には入ってないのだろう。
「あと、もう一つ言っておくのだけれど、この会話は貴方の記憶から消されるわ。今日は貴方は何も夢を見なかったってことになる。」
「……精神への干渉は無理だとどこかで聞いたことがあるんだがな……。」
「条件が揃えばできるのよ。あと、次はちゃんと瘴気も隠してくるわよ。そうしないと記憶消してもすぐ気づかれそうだしね……。まあ、せいぜい頑張りなさい。ニンゲン。」
「そうさせてもらうさ。ハハハッ。」
最後の乾いた笑い声は誰に向けたものなのだったのだろうか。
ただ、その時、カルドは目に痛みを感じた。
あの日、斬られ、つけられたあの傷は、今でもたまに疼くのだ。




