54: 質問させてください。
004
「ああ……それともう一つ……」
それまでの和やかで静かな雰囲気から一転、シーモさんはさらに重々(おもおも)しい声で語り始めた。
滑稽な雰囲気に満ちた応接間だったが、彼が放つ圧倒的な圧力が、その滑稽さをすべて覆い隠してしまった。
「君のお母さんに約束したんだ……君が私より一段階だけ劣るくらいまで、徹底的に鍛え上げると……」
魔女が放つ圧力はすでに経験していたとはいえ……シーモさんの圧力もそれに匹敵するほどだった。
幸い、今の私はその手の圧力にある程度耐えられるようになっていた……
「あなたって……ネテロ会長の老後のお姿か何かですか……」
「よし……準備ができたらいつでもかかってこい……」
彼の圧力は冗談ではなかった。それにさらに——
〔私と君のお母さんはかつてライバルだったんだ……〕
これがさらに不安を煽った。
しかしまだ何もしないうちに……チューバの音が鳴り響いた……
私たち二人が音の方を振り向くと、その圧力は瞬時に消え去った。10キロ以上もありそうな重いチューバを吹いていたのは——あの七歳の女の子だった。
「ほらほら……それくらいにしておきましょうよ? クロエは寮に早く戻らなきゃいけないんだから……また今度誘えばいいでしょ……」
「わん!……」
子犬も一回吠えてから、シーモさんのズボンの裾を噛み始めた。
「そうだな……ユイカ、彼女を送ってやれ……」
「分かりました……」
あの子が私を助けてくれた……そんな気がした。
もし本当にシーモさんに鍛えてもらうことになったら、今まで以上に覚悟を決めておかないといけないだろう。
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クロエが出て行った後、エミリーはソファに寝転がり、足をシーモの膝に乗せた。一方、子犬は自分の餌を食べに行った。
「あんたバカじゃないの、シーモ……見れば分かるでしょ、あの子はまだ基礎からしっかり鍛える必要があるって……」
「ふん……基礎くらい私でも教えられる……」
「あんたの基礎はあの子を殺しかねないわよ……魔法の扱いに先に慣れさせたほうがいいんじゃない?……」
「はあ……純血の血筋相手にせっかく本気で鍛えてやろうと思ったのに……」
「ねえあんた……あの子って、あんたが密かに想ってる人の娘じゃないの……」
「密かに想ってる」という言葉を聞いた瞬間、彼はまた少し悲しげな表情になった。
「一つ聞いていいか……」
「ん?……いいわよ」
彼はしばらく考え込んでから、エミリーに尋ねた。
「夫のいる人の娘を助けてやりたいと思うこの気持ち……これは未練と呼べるものなのか?」
彼の表情は無表情に見えたが、内心は暗く沈んでいた……それは彼自身の感情と陰鬱な気持ちを隠すためのものだった。
長い付き合いのエミリーには、彼がこういう顔をすればすぐに見抜けた。
「……私は誰かを好きになったことなんてないけど……一つだけ分かることがあるわ……あんたがそうしてるのは、あんた自身がそうしたいからじゃないの……」
「そう思うか……」
それを聞いた瞬間、エミリーはシーモの顔を一発蹴り飛ばし、こう叫んだ。
「あんたのことなのに、何で私に聞くのよ! 自分自身に聞きなさいよ……」
「……すまん……」
「ふん……ムカつくわ……あんたみたいな人が今にも死にそうな顔してるの……うざいったらないわよ……」
「……………」
そして彼女はテーブルの上にあった大きなクマのぬいぐるみを手に取り、抱きしめて遊び始めた。
「私はね……困ってる人を見たら迷わず助けに行くタイプなのよ……」
七歳の子どもなのに……まるで子どもの姿をした大人が話しているようだった……
「まあいいわ……私が言えるのはこれだけよ……あとは自分でどうするか考えなさい……」
「……どこ行くんだ?」
「ご飯作るのよ……今日は私の班の当番だから」
そう言うと彼女は去っていった。
女の子の子ども部屋のように飾り付けられたその部屋の中で……彼はただ、エミリーが自分の向かいに置いていった大きなクマのぬいぐるみを見つめていた……
しばらくの間、どうすればいいのか考え続けた……
そのまま、ずっと……
エイガ寮……
「ご馳走様でした!!!……」
食事が終わると、みんな自分のお皿を洗わなければならない……洗い終わると、部屋に戻って寝る人もいれば、ロビーで雑談を続ける人もいた。寝る前に映画を見に来る人もいたが、休みの日にはゲームをすることもあった。
「ちょっと姫子にお粥持っていくね……」
私はそう申し出た。
「うん……ちゃんと全部食べさせてあげてね……」
マーベルがそう言い残して、今日は映画鑑賞をするということで、何人かの学生たちとキッチンへポップコーンを作りに行った。
「はい……お粥持ってきたよ……」
「まったく……まるで私がインフルエンザにでもなったみたいな扱いね」
「旦那様に言ってよ……」
「ふふ……あの人、いつも私のことを心配しすぎるのよ……」
最初はそのまま部屋を出ようと思っていた……でも姫子に呼び止められた。
「ねえ……クロエちゃん……」
「うん?……」
「土御門君(ルイス)とはもう長いの?……」
「えっ!!! なんで分かるの!!!!」
姫子の質問に思わずびくっとした……汗が全身から噴き出し……手まで震えていた。
「まあ……私、結婚二回もしてるのよ(前の世界とインプリジャンで)。彼氏ができて気持ちが変わったかどうかなんて、簡単に見抜けるわよ」
「付き合って一週間になるよ……………なんでだか分からないけど恥ずかしいの」
「恥ずかしい?……何言ってるの……恋愛って一番幸せなことなのよ……」
姫子はベッドを軽く叩いた。私はそのベッドに腰掛けた。
「知ってる? 私と池田さんはね、前の世界にいた頃からの知り合いなのよ……だから結婚も二回してるってわけ……」
「すごく幸せそうだね……」
「うん! 幸せに決まってるじゃない……」
「……………」
私自身もちょうど恋愛経験が初めてだったから、姫子に相談したいと思っていたところだった。
「それでね……私たち二人の間には娘が一人いてね……それからしばらくして孫娘もできたのよ……写真がないのが残念だけど」
「あなたの時代にカメラなんてなかったでしょ」
「ふふ……そうだったわね!」
「それで……池田先輩ってどんな人なの?……あんなに仲よさそうなのに」
「もう……あの人はチャラ男で、あちこちの女の子を口説いて回るの……ヒモみたいに振る舞うし、お喋りだし、いつも人をからかってばかりで」
正直……そんな男の人と一緒にいて平気なの……?
「でも実はね、本当の自分の性格を隠すためにわざとそうやってるだけなのよ。本当は甘えん坊で仕方ないんだから。猫みたいに甘えてくるの。抱きしめてほしがったり、膝枕で寝たがったり。あんなにチャラチャラしてるくせに、本人はすごく一途なのよ」
「えっ……意外だね……」
ルイスがそんな風にふるまったらどうなるのか、まったく想像がつかなかった。
「それであなたは? あっちの方はどんな感じ?」
「うーん……私たち、あんまり話せてないの……ちゃんと話せるのはお昼休みと部活がない日くらいなんだ……」
「何か不安なことでもあるの?」
「正直言うとまだよく分かってないんだけど……ちょっと寂しいって感じることはあるかな」
「じゃあ彼と話してみたら? 付き合ってるんだから遠慮なんてしなくていいのよ……」
「そう言われても……」
「一度ちゃんと向き合って話してみればいいのよ。不安を心の中に溜め込んでおくより、話し合うほうがずっといいんだから……」
「やってみる」
姫子は私の頭を撫でながら「よくできました」と言った……
「それじゃあ映画見に行くね……一緒に行く?」
私は立ち上がってお皿を片付けようとした。
「ううん……もう寝るわ。おやすみ」
「うん……おやすみなさい」
祖母がいつもこの時間になると文句を言ったり叱ったりするので、私はたいてい毎晩小説を書くために机に向かいます。音楽を聴きながら書くのは、私にとっていつもリラックスできる時間です。




