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クロエの不思議な魔法の記録  作者: Sakusaku


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54/60

54: 質問させてください。

  004


「ああ……それともうひとつ……」


 それまでのなごやかでしずかな雰囲気ふんいきから一転いってん、シーモさんはさらに重々(おもおも)しいこえかたはじめた。


 滑稽こっけい雰囲気ふんいきちた応接間おうせつまだったが、かれはな圧倒的あっとうてき圧力あつりょくが、その滑稽こっけいさをすべておおかくしてしまった。


きみのおかあさんに約束やくそくしたんだ……きみわたしより一段階いちだんかいだけおとるくらいまで、徹底的てっていてききたげると……」


 魔女まじょはな圧力あつりょくはすでに経験けいけんしていたとはいえ……シーモさんの圧力あつりょくもそれに匹敵ひってきするほどだった。


 さいわい、いまわたしはその圧力あつりょくにある程度ていどえられるようになっていた……


「あなたって……ネテロ会長かいちょう老後ろうごのお姿すがたなにかですか……」


「よし……準備じゅんびができたらいつでもかかってこい……」


 かれ圧力あつりょく冗談じょうだんではなかった。それにさらに——


 〔わたしきみのおかあさんはかつてライバルだったんだ……〕


 これがさらに不安ふあんあおった。


 しかしまだなにもしないうちに……チューバのおとひびいた……


 わたしたち二人ふたりおとほうくと、その圧力あつりょく瞬時しゅんじった。10キロ以上いじょうもありそうなおもいチューバをいていたのは——あの七歳ななさいおんなだった。


「ほらほら……それくらいにしておきましょうよ? クロエはりょうはやもどらなきゃいけないんだから……また今度誘こんどさそえばいいでしょ……」


「わん!……」


 子犬こいぬ一回いっかいえてから、シーモさんのズボンのすそはじめた。


「そうだな……ユイカ、彼女かのじょおくってやれ……」


かりました……」


 あのわたしたすけてくれた……そんながした。


 もし本当ほんとうにシーモさんにきたえてもらうことになったら、いままで以上いじょう覚悟かくごめておかないといけないだろう。


 ---


 クロエがったあと、エミリーはソファにころがり、あしをシーモのひざせた。一方いっぽう子犬こいぬ自分じぶんえさべにった。


「あんたバカじゃないの、シーモ……ればかるでしょ、あのはまだ基礎きそからしっかりきたえる必要ひつようがあるって……」


「ふん……基礎きそくらいわたしでもおしえられる……」


「あんたの基礎きそはあのころしかねないわよ……魔法まほうあつかいにさきれさせたほうがいいんじゃない?……」


「はあ……純血じゅんけつ血筋ちすじ相手あいてにせっかく本気ほんききたえてやろうとおもったのに……」


「ねえあんた……あのって、あんたがひそかにおもってるひとむすめじゃないの……」


ひそかにおもってる」という言葉ことばいた瞬間しゅんかんかれはまたすこかなしげな表情ひょうじょうになった。


ひといていいか……」


「ん?……いいわよ」


 かれはしばらくかんがんでから、エミリーにたずねた。


おっとのいるひとむすめたすけてやりたいとおもうこの気持きもち……これは未練みれんべるものなのか?」


 かれ表情ひょうじょう無表情むひょうじょうえたが、内心ないしんくらしずんでいた……それはかれ自身じしん感情かんじょう陰鬱いんうつ気持きもちをかくすためのものだった。


 ながいのエミリーには、かれがこういうかおをすればすぐにけた。


「……わたしだれかをきになったことなんてないけど……ひとつだけかることがあるわ……あんたがそうしてるのは、あんた自身じしんがそうしたいからじゃないの……」


「そうおもうか……」


 それをいた瞬間しゅんかん、エミリーはシーモのかお一発いっぱつばし、こうさけんだ。


「あんたのことなのに、なんわたしくのよ! 自分じぶん自身じしんきなさいよ……」


「……すまん……」


「ふん……ムカつくわ……あんたみたいなひといまにもにそうなかおしてるの……うざいったらないわよ……」


「……………」


 そして彼女かのじょはテーブルのうえにあったおおきなクマのぬいぐるみをり、きしめてあそはじめた。


わたしはね……こまってるひとたらまよわずたすけにくタイプなのよ……」


 七歳ななさいどもなのに……まるでどもの姿すがたをした大人おとなはなしているようだった……


「まあいいわ……わたしえるのはこれだけよ……あとは自分じぶんでどうするかかんがえなさい……」


「……どこくんだ?」


「ごはんつくるのよ……今日きょうわたしはん当番とうばんだから」


 そううと彼女かのじょっていった。


 おんなども部屋べやのようにかざけられたその部屋へやなかで……かれはただ、エミリーが自分じぶんかいにいていったおおきなクマのぬいぐるみをつめていた……


 しばらくのあいだ、どうすればいいのかかんがつづけた……


 そのまま、ずっと……


 エイガ寮……


「ご馳走様ちそうさまでした!!!……」


 食事しょくじわると、みんな自分じぶんのおさらあらわなければならない……あらわると、部屋へやもどってひともいれば、ロビーで雑談ざつだんつづけるひともいた。まえ映画えいがひともいたが、やすみのにはゲームをすることもあった。


「ちょっと姫子ひめこにおかゆっていくね……」


 わたしはそうもうた。


「うん……ちゃんと全部ぜんぶべさせてあげてね……」


 マーベルがそうのこして、今日きょう映画鑑賞えいがかんしょうをするということで、何人なんにんかの学生がくせいたちとキッチンへポップコーンをつくりにった。


「はい……おかゆってきたよ……」


「まったく……まるでわたしがインフルエンザにでもなったみたいなあつかいね」


旦那様だんなさまってよ……」


「ふふ……あのひと、いつもわたしのことを心配しんぱいしすぎるのよ……」


 最初さいしょはそのまま部屋へやようとおもっていた……でも姫子ひめこめられた。


「ねえ……クロエちゃん……」


「うん?……」


土御門君つちみかどくん(ルイス)とはもうながいの?……」


「えっ!!! なんでかるの!!!!」


 姫子ひめこ質問しつもんおもわずびくっとした……あせ全身ぜんしんからし……までふるえていた。


「まあ……わたし結婚けっこん二回にかいもしてるのよ(まえ世界せかいとインプリジャンで)。彼氏かれしができて気持きもちがわったかどうかなんて、簡単かんたんけるわよ」


って一週間いっしゅうかんになるよ……………なんでだかからないけどずかしいの」


ずかしい?……なにってるの……恋愛れんあいって一番いちばんしあわせなことなのよ……」


 姫子ひめこはベッドをかるたたいた。わたしはそのベッドに腰掛こしかけた。


ってる? わたし池田いけださんはね、まえ世界せかいにいたころからのいなのよ……だから結婚けっこん二回にかいしてるってわけ……」


「すごくしあわせそうだね……」


「うん! しあわせにまってるじゃない……」


「……………」


 わたし自身じしんもちょうど恋愛経験れんあいけいけんはじめてだったから、姫子ひめこ相談そうだんしたいとおもっていたところだった。


「それでね……わたしたち二人ふたりあいだにはむすめ一人ひとりいてね……それからしばらくして孫娘まごむすめもできたのよ……写真しゃしんがないのが残念ざんねんだけど」


「あなたの時代じだいにカメラなんてなかったでしょ」


「ふふ……そうだったわね!」


「それで……池田いけだ先輩せんぱいってどんなひとなの?……あんなになかよさそうなのに」


「もう……あのひとはチャラで、あちこちのおんな口説くどいてまわるの……ヒモみたいにうし、おしゃべりだし、いつもひとをからかってばかりで」


 正直しょうじき……そんなおとこひと一緒いっしょにいて平気へいきなの……?


「でもじつはね、本当ほんとう自分じぶん性格せいかくかくすためにわざとそうやってるだけなのよ。本当ほんとうあまえんぼう仕方しかたないんだから。ねこみたいにあまえてくるの。きしめてほしがったり、膝枕ひざまくらたがったり。あんなにチャラチャラしてるくせに、本人ほんにんはすごく一途いちずなのよ」


「えっ……意外いがいだね……」


 ルイスがそんなふうにふるまったらどうなるのか、まったく想像そうぞうがつかなかった。


「それであなたは? あっちのほうはどんなかんじ?」


「うーん……わたしたち、あんまりはなせてないの……ちゃんとはなせるのはお昼休ひるやすみと部活ぶかつがないくらいなんだ……」


なに不安ふあんなことでもあるの?」


正直しょうじきうとまだよくかってないんだけど……ちょっとさびしいってかんじることはあるかな」


「じゃあかれはなしてみたら? ってるんだから遠慮えんりょなんてしなくていいのよ……」


「そうわれても……」


一度いちどちゃんとってはなしてみればいいのよ。不安ふあんこころなかんでおくより、はなうほうがずっといいんだから……」


「やってみる」


 姫子ひめこわたしあたまでながら「よくできました」とった……


「それじゃあ映画えいがくね……一緒いっしょく?」


 わたしがっておさら片付かたづけようとした。


「ううん……もうるわ。おやすみ」


「うん……おやすみなさい」

祖母がいつもこの時間になると文句を言ったり叱ったりするので、私はたいてい毎晩小説を書くために机に向かいます。音楽を聴きながら書くのは、私にとっていつもリラックスできる時間です。

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