53: 過去、そこでは今でもあなたのことしか考えられない。
〔シーモ……〕
〔うん?……〕
〔あのさ……仮の話をしたいんだけど……〕
〔は? 仮の話……何だよそれ〕
〔つまり……仮にだよ……これはあくまで仮の話なんだけど……もし私に娘ができて……もし私がその子の面倒を見られなくなったら……その子の面倒を見てくれない?〕
〔……それ本当に仮の話なのか?〕
〔そうに決まってるじゃない……〕
〔……じゃあもしそうなったら、お前の娘を音を上げて命乞いするくらい厳しく鍛えてやるよ……俺の次に強くなるまで仕込んでやる〕
〔ふふ……やっぱりね〕
〔それでなんでそんな話を俺にするんだ……〕
〔だから言ってるじゃない、ただの仮の話だって……〕
〔でもな……もし本当にそうなったら……その子はお前に預けることになるな〕
それがシーモとキャサリンが交わした最後の会話だった……その後、彼女は跡形もなく姿を消した。
彼はずっと、あの言葉がただの仮の話であってほしいと祈り続けてきた……しかし彼女の娘を見た瞬間、それが現実だったと悟った。
青年の胸に刻まれた痛みは、今もなお消えることはなかった。
どれほど時が経っても、消し去ることのできない痛み。
その厳しい表情の下で……彼の心は少しずつ崩れ続けていた。
そして今、彼女の娘が目の前に現れている……
彼のような男でさえ、感情を抑えきれずにいた。
それでも、この子に話してやらなければならない……約束した以上、果たさなければならないのだから。
003
「君のお母さんと俺は、かつてライバルだった……俺自身は魔法使いとしては下位の方だったけどな……でも戦闘の腕前に関しては、ずっと互角だった」
「初めて会った時、彼女は無口で、あまり誰とも話さなかった……いつも『悪魔の子』だと見られていたからな……そんな彼女に手を差し伸べたのが、俺だった……」
「それからというもの、彼女は明るくなって……誰とでもうまくやれるようになった……それに学院でもかなりの人気者だったよ」
「俺たちは何度も一緒に任務をこなした……でも時が経つにつれて……あいつは別れの言葉一つも残さずに姿を消した……」
「俺はずっとあいつを探し続けた……でも結局、一度も見つけられなかった……」
「すべてが意味を失い始めた頃……君がここに来て……俺の目の前に座った」
「いつか君にキャサリンのことを話してやろうと、ずっと決めていたんだ……」
「そしてそのいつかが、今日というわけだ……」
シーモはそう言い終えると、温かいミルクを飲みながら、どこか寂しげな表情を見せた。小さな子犬が彼の口元についたミルクの跡を舐め取ると、シーモは再び笑顔を見せた。
「……お母さんは……ここにいた間……幸せだったんでしょうか?」
「うん……様子を見る限りは、幸せだったと思うよ……」
「そうですか……」
今度は私の番だった、お母さんのことを話す番。
「私が八歳の時、お母さんが魔法を教えてくれました……でもその頃の私はまだ普通の人間だったから、ただお母さんの魔法を見ているだけしかできなくて……」
「想像を超えるほど美しいその光景が……私にお母さんみたいになりたいと思わせたんです……お母さんのような魔法使いになりたいって……」
「でもお母さんは姿を消して……私はすぐに周りから『悪魔の子』と見られるようになりました……周りの人たちはみんな私をいじめて、いつも見下すような言葉を投げかけてきました」
「ここに来てから……お母さんと繋がっているような気がするんです……たとえここにはもういなくても……いつかきっと、私たちは会えるはずだって……」
「俺でさえあいつを見つけられなかったんだ……どうしてお前はキャサリンに会えるって、そんなに確信できるんだ……」
「分かりません……ただ、長い時間が経てば、いつか自然に会えるような気がするだけです……」
「そうか……」
生徒会室
「では僕は野球の練習に行ってきます、会長……」
「うん……お疲れ様」
ウィリアムが時間に余裕を持つことは滅多になかったが、たとえ時間があったとしても、机の上には山積みの書類が待ち構えていた。
実際、魔法でこれらの書類仕事を片付けることもできたが、彼はこういう仕事こそ心を込めて丁寧にやるべきだと考えていた。生徒会長という立場だからこそ、なのかもしれない。
「今は忙しい……話があるなら、また今度にしてくれ……」
部屋には誰もいないはずだったが、彼はそう言いながら、風にそよぐカーテンへちらりと目をやった。
その言葉を聞いた瞬間、カーテンの後ろから一人の少女が現れた。
「ハロー、会長さん……」
彼女はピンク色の鮮やかな浴衣を着た少女で、白髪のボブカットに眼鏡をかけていた。
気安い口調で話すその様子は、丁寧な物腰とどこか奇妙にちぐはぐな印象を与えた。
「地図屋か……何の用だ」
話は聞きつつも、彼は書類を書き続けていた。
「今、また新たな魔女の結界を見つけたんです……」
「何だって!……」
彼は椅子から勢いよく立ち上がった。机の上の書類はそのまま放り出されたままだった。
「詳しく話せ……」
「今分かっているのは、今回の結界は海の真ん中にあるらしいということです……」
「……」
「佐久はなんて言ってる?」
「今、結界があると思われる場所を調査中です……詳細はまた今度報告しますね……」
「そうか……知らせてくれてありがとう、佐久良図書館員さん……」
「はい……また会いましょうね……」
そして彼女の姿は消えた。
「はあ……」
「疲れたな……」
「だが……あと少しだ……我も、みなのために復讐を果たせる時が来る」
最近、祖母が私に皮肉なことを言い続けているんです。今回は、祖母が作った料理を食べなくてもいい、お腹が空いたら自分で何か食べ物を探しに行けばいい、とまで言われました。正直、もう気が狂いそうです。読者の皆さんがいなかったら、ストレスで死んでいたかもしれません。




