4: クロエの365の魔法の使い方。4
004
「これで一件落着ね」
白髪で制服姿の少女が、金髪の少女を腕に抱きながら、目つきの鋭い少年にそう告げた。
クロエが“魔法”を使い、ノマルと呼ばれる魔獣を鎮圧した直後――力を使い果たして気を失ってから二分ほど後、白髪の少女が二人を発見し、救助したのだった。
「彼女は大丈夫なんですか?」
目つきの鋭い少年が尋ねる。
「この子、魔法を使うのは初めてなの。だからまだ制御ができないのよ」
――魔法。
本来ならあり得ない、存在するはずのないものが、まるで当然のように語られている。
「まだ“ルーン”を持っていないし、魔法も未完成。でも……合格ってところね」
「合格? 何の話ですか。ここは一体どこなんです? どうしてあの子が魔法なんて使えるんですか」
白髪の少女は少年を一瞥し、厳かな声で告げる。
「この世界は、魔法使いの国。もう一つの名を――インプリジアン。信じられないでしょうけど、さっき奇跡を目にしたはずよ?」
少年は言葉を失う。信じられなくとも、確かに自分の目で見たのだ。
少女は続ける。
「魔法が使えるかどうか……自分の背中を見てみたら?」
そう言って手鏡を差し出す。少年は受け取り、自分の背中を映す。
はっきりとは見えないが、そこには数字が浮かび上がっていた。
『426』
それが彼の数字だった。
「この子のも……よいしょ」
白髪の少女はクロエの服を少し持ち上げる。白い肌の腰のあたりにも、数字が浮かんでいた。
『365』
彼女の数字は、少年よりいくらか少ない。
「私のもあるわよ。ほら」
彼女の瞳をよく見れば、そこにも数字が宿っている。
『1010』
それが彼女の数字。
「それは何なんですか」
「あなたたちが魔法を使える回数よ。あなたたちはこの世界の人間じゃない。だから肉体の状態に応じて、使用回数が制限されているの」
「じゃあ……0になったら?」
「言わなくても分かるでしょう? だからこそ、私たちの学院で適性を試すの。元の世界へ帰すべきか、それともここに迎えるべきか」
「学院……?」
「そう。魔法訓練・教育機関――メギロディアン。この場所では、魔法使いたちを集め、魔女と戦うために育成しているの」
「は……?」
「私も、この子も、そしてあなたも。役目は一つ。この世界に残る十三人の魔女を、すべて討ち滅ぼすこと」
005
とある塔。
「ふーん……残りは五十人か」
上半身裸の白髪の青年がそう呟く。均整の取れた筋肉が、どこか妖しい色気を漂わせている。
「少なくとも、去年よりはマシですね」
青い髪に眼鏡をかけた、冷静な雰囲気の青年が答える。
「だな……去年は全滅だったもんな」
白髪の青年はくすくすと笑う。眼鏡の青年は手際よく彼に服を着せていく。
「もしかしたら、今年は魔女を全員倒せるかもしれませんよ」
「また悪い顔してるぞ、ウィリアム」
眼鏡の青年が軽くからかう。
「うるさいぞ、ラケレス」
そう言ってウィリアムは部屋を出て、メギロディアン学院の新入生たちへ挨拶するため、廊下へ向かった。
学院の生徒会長として――
魔法を無制限に使える唯一の存在。
ウィリアム・クレイ・アンダーソン。




