32: 地獄3
003
二週間後、日曜日の昼
「それじゃあ……今日もよろしくお願いします!」
「ああ……何をやってきても俺はずっとお前に勝ち続けるがな」
私たちは二人して猛然とぶつかり合った。そして毎日と同じように……彼に触れることはできなかった。
「まったく……どうすれば彼に触れられるんだろう……」
私たちは漫画のキャラクターが火に焼かれたかのような焦げた状態でアッキ寮を出た。
「少し疲れたわね……」
「うん……何か食べさせてよ……お腹が空いた……」
「いいわよ。でもあなたのおごりね」
「じゃあ高いものは頼まないで……」
「……ねえ、リボン」
「何?」
「同じ種類の魔法同士がぶつかったらどうなるの?」
「場合によるわね。魔法が互いに弾き合うこともあれば、相手に吸い込まれることもあるし、自然に消えることもある……」
「……」
「アーディタクさんに触れる方法を考えてるの?」
「うん……でもどんな方法でも触れられないんだよね……はあ……」
「そうよね……相手は寮長よ。一ヶ月で触れるなんて最初から無謀な話だわ。普通は三ヶ月くらいかかるものよ」
「わあ……そんな時間はかけられない。もっと機動性を鍛えないといけないな」
「新しい作戦は考えついた?」
「まだよ……自分より強い人に勝つ方法を考えるのって本当に難しいわね……」
「そうそう、クロエ、明日から私は暇じゃないから、わかってる?」
「うん……バイオハザードのレクイエム編がちょうど出たんでしょ。大丈夫よ、他の誰かを誘って連れて行ってもらうから」
「本当に!?ありがとう!!レオンに会えるぅぅぅぅ!!!!!!!」
「そんなこと言ってたら世界中のファンに怒られるわよ」
「あなたもやってみない?初心者にはちょっと難しいかもしれないけど、面白いわよ!」
「休みになったらやってみるわ。それとジョジョの新刊、貸してもらえる?」
「漫画が好きなのね。ロビーにある分はもう全部読んだの?」
「読み終わったわ。ライトノベルもあったけど、そっちはまた今度」
「あんな長いシリーズを全部読み切るなんて信じられない」
「戦い方のアイデアもこういう漫画から得てるのよ。特に戦略を使う作品が好きで」
「厨二病全開ね……」
「反論できないのが悔しい……」
「今使えるようになった火の魔法はどこまで来てるの?」
「えっと……主に銃弾に炎を纏わせるのと、周囲の炎を操るくらいね」
「炎を吸い込んだことは?」
「ないわ……でもそうしたら自分が焼けちゃうじゃない」
「ああ……火事場のアレみたいに」
「そんな縁起でもないことを言わないでよ!」
ふと……待って。
吸い込む……炎……そういうことか……
「クロエ……?」
「ごめん……少し考えさせて……」
それを聞いた瞬間、頭が一気に回転し始めた。そして私たちはラジオを最大音量でかけた。
「なんとなく……どうすれば勝てるか、わかった気がする」
月曜日の放課後
「付き合わせてごめんね……迷惑じゃなかった?」
「全然。今日はクラブもないし、寮の当番でもないから。めちゃくちゃ暇よ」
私たちはマ―ベルとは別の部屋にいるドロシーを誘って一緒に来てもらった。マ―ベルはクラブがあったので一緒に戻れなかった。バイクの後ろに乗るのはこれが初めてだった。
「今日もアッキ寮で練習するのね……合格したら次はどこの寮に行くの?」
「考えてあるのが三つよ。アッキ寮、フブ寮、それにライオット寮」
「あら……銃も使うのね」
「そうなの……私の制限は魔法の使用回数が少なすぎることだから。だから体の訓練と武器の扱いはどうしても必要で」
「大変そうね……まあ頑張って」
「うん!」
「おう……今日は早いな。俺に勝つ方法は思いついたか?」
「まだはっきりとはわかりませんけど……きっと勝てます」
「ほう!口だけは達者なもんだな……じゃあ始めようか!!!!」
ドカン!!!仮設模擬戦闘室カプセルが割れる音が鳴り響いた。
青い煙が辺り一面に広がった。私たちはその機会を借りて銃を五発撃ち込んだ。
「ははははっ!!普通の弾丸で何ができると思って!!Fire Attention!!!」
今度は地面が割れることなく、芝生が一面炎に包まれた。
「Professor Compressor!」
私たちは風の魔法で辺り一帯の炎の向きを操り、自分の背後へと渦巻かせた。
アーディタクさんへと向かって駆け出すと、炎の嵐が背後からついてきた。炎を制御下に置いていたからだ。
そして昨日リボンと車に乗りながら思いついた作戦を実行した。
十五メートルの距離に近づいたところで、一晩かけて練習してきた新しい力を初めて使った。
ガキッ!《363→362》
『Flame Drain(炎吸収)』
背後から迫っていた炎の嵐が瞬く間に消えた。
「?……なんだ……炎の嵐が消えた……」
「!!!!……違う……体の中の火の魔力が使えない!?」
アーディタクさんの体内を流れていた炎の魔力がすべて私たちに吸い込まれていった……彼の炎の魔力は膨大だったため、吸い込んだ炎が多すぎて自分の体を焼き始めた。
このルーンの能力は炎を吸い込んでエネルギーとして体に纏い、敵に向かって解き放つものだ。ただし炎を吸いすぎると逆にその炎で自分が焼かれてしまう。アーディタクさんの体内にある魔力は召喚された者の魔力から来る火の魔法だ。私たちは彼の炎の魔力をすべて吸い取ることで、彼が一時的に火の魔法を使えない状態にした。これで彼に近づくには十分だ。
当然、今の私たちには吸い込んだ炎の力を完全に制御する力はない。でも勝つためには十分だった。
一度きり……たった一度だけ。
体が炎に焼かれながら、まるで人間の松明のように彼へと全速力で駆けた。
吸い込んだ炎はアーディタクさんが制御していた時とは違う。アッキ寮長の体内にあった炎が与える苦痛は、他の何とも比べられないほど凄まじかった。
痛い……
すべてが赤く染まった……熱い……熱い……何なの……いつになったら……彼に……届くの……
もう少し……ほんのもう少し……
「おい、何やってるんだよ……」
誰かを掴んだ感触があった。顔を上げると……彼の黒い影が見えた。
「掴んだ……………よ……」
かすれた声が唇からこぼれた……そしてすべてが……消えた。
「はあ……バカなやつ……俺に触れるためだけに自分を焼いてどうするんだ。えげつないにもほどがある」
アーディタクさんが私たち二人を正門まで送り届けてくれた。
「ごめんなさい……模擬戦闘室だったから、自分の命のことをあまり考えていなかったんです……いた!!!」
頭を手刀でかなり強く叩かれた。
「だから少しくらい自分の命を大事にしろよ!!!死ぬか死なないかなんて俺たちは別に気にしないけど、まだ何もやり遂げていないうちに死ぬのは迷惑なんだよ、わかるか!」
「本当に申し訳ありませんでした……」
「まあ……それでも約束は約束だ。ほら」
アーディタクさんが自分の署名が入った練習申請書を渡してくれた。
「でも……私はまだ火の魔法を十分に使いこなせていないので、もう一ヶ月練習させてもらえますか……」
「おっ!!もちろんだよ、いつでも歓迎するぞ!!」
「ありがとうございます!!」
そして私たちはその場を去った。アーディタクさんが、どれほど悲しそうな目で私たちを見送っていたかに、まったく気づかないまま……
なぜなら彼はふとあの頃を思い出していたから……自分の手で愛する人を炎で焼いてしまったあのときを……それがエバリンに……深く深く恨まれることになったのだと……
つい最近知ったのですが、この作品を1000回ブックマークすると、書籍化の資格が得られるそうです。少し遅いかもしれませんが、もしよろしければ、この作品を評価してコメントを残してブックマークに追加していただけると嬉しいです。もし出版される日が来たら、イラストレーターに『東京エイリアン』や『黒執事』のようなスタイルでキャラクターを描いてもらいたいと思っています。




