24: 護身術トレーニング4
004
ルイスは再びウィリアムに飛びかかった。しかし今度はウィリアムはレプリカを使わず、素手でルイスが振ってきた野球バットを受け止め、Tycoon Boosterをバットに付与しようとした。
しかしルイスはバットが当たる前に手を放した。Tycoon Boosterをバットから引き剥がすには能力を解除する必要があり、それに約一秒かかる。ルーンを認識する前のルイスならその速度についていけなかっただろうが、今は召喚された者の魔法が働いている。0.5秒の反応でウィリアムの顔に拳を打ち込んだ。しかし防がれた。
ルイスは腕に体重を乗せて自分を跳ね上げ、顔を蹴ろうとした。しかしウィリアムはまた身をかがめて回避した。ルイスは体勢を崩して空中で落下した。
「……」
ウィリアムは薄く笑みを浮かべ、バットからTycoon Boosterを解除して自分自身に使った。
『Tycoon Booster(疾風の加速)』
そして素早くルイスの野球バットを拾い上げ、彼に向けて振り下ろそうとした。
そのとき、ルイスは何かを掴んだ。
「なるほど、だからあの子は魔法をすぐに使えたんだ」
コツを掴んだことで、魔法の発動は驚くほど簡単になった。ルイスは体内の魔法回路が求める本能に従った。
そしてついに成功した。
ガキッ…《426→425》
『Good Day(選ばれし者への祝福……)』
ガン!!!!!ウィリアムは野球バットを相手に叩きつけ、確実に仕留めたと確信した。しかし――
「バットが……当たらない?」
そこに現れたのは、厚さおよそ十センチの金色のガラスだった。ウィリアムがルイスを叩こうとした箇所に突如として出現したのだ。
「なるほど……」
サリバン教授がつぶやいた。ラケスもルイスのルーンの仕組みをおよそ理解したようだった。
そしてルイスは自分のバットをウィリアムから奪い返した。
「お前のルーンは素晴らしい。思わず羨ましくなるほどだ」
「そうですかね……」
「レプリカ……」
ウィリアムは砕けたタイルの破片を大太刀へと変えた。ただしその素材は周囲のタイルだった。
ウィリアムはレプリカで二体のタイル人形が砕けたのを幻とし、タイルで作られた大太刀を現実として書き換えた。
大太刀を人形に戻すことはできる。しかし大太刀を別の何かに変えることはもうできない。現実と幻を入れ替えられるのは二回だけで、その枠をすでに使い切っていたからだ。
最初の一回でタイル人形が砕けなかったことにした。
「刀で勝負するんですか?」
「ああ……私自身も長年、刀を扱っていなかったしな」
ルイスはしばらく立ったまま考えてから、自分の寮長であるラケスに尋ねた。
「ラケスさん、会長はウィリアムさんに傷を負わせれば生徒会に入れると言いましたよね」
「そうだ……しかもウィリアムはどんな手を使ってもいいとも言っていた。傷を一つつければいいと」
ウィリアムもすでに何かを読んでいるようだった。
「自分でも頭が固いと言っておきながら……」
「ラケスさん、あなたの魔法で私を補助してもらえますか……」
この子は……野球以外に興味がないように見えて、こんな作戦を考えてくるとは。サリバン教授はそう思った。確かにその通りだった。
生徒会という重要な地位を手に入れるために会長と戦えと言われたら、普通の人間はずるい手は使わず、持てる技と魔力で試験を突破しようとするはずだ。
「恵に似てるな……」ラケスは過去のことを思い出した。恵が召喚されたばかりの頃、彼女も同じことを言っていた。
「どんな手を使ってもいいなら、副会長さんも手伝ってくれませんか……」
「だからあいつがルイスをそんなに気に入るわけだ……」
しかしウィリアムが直々に「どんな手を使ってもいい」と言った以上、誰かに助けを求めることも敵を倒す一つの手段だ。
「もちろん……ただ私のルーンは二人を組ませるものだ。私とウィリアムを組ませるのか?」
「違います……私とラケスさんを組んでください」
!!!!!サリバン教授もラケスもルイスの言葉に少し驚いた。
「そしてラケスさんが自分のルーンの補助を受けたら、私が勝つまでずっと補助し続けてください」
「正気か!?そんな力をもらったら体が持たないぞ!!」
「大丈夫ですよ……ここは模擬戦闘室です。私が死んでも部屋から引きずり出せばまた生き返りますから」
生徒会に入るためだけにそこまでするのか。どうしてそこまで生徒会に入りたいのだろう。
ラケスは心の中で思ったので答えは返ってこなかったが、ルイスはまるで相手の心を読んだかのように答えた。
「生徒会は人手が足りないって聞きました。恵さんも毎日仕事が大変だとこぼしていましたし。先輩たちの力になりたいだけです」
正直言えば間が抜けているようにも気取っているようにも聞こえる理由だった。しかし彼の声は真剣そのもので、冗談など一切ないことが伝わってきた。
「お前は面白い奴だな。私の姪っ子そっくりだ」
かつてここの生徒だった姪のことを思いながらウィリアムは言った。
「じゃあ会長も同じくらい変わってますよ」
「はははっ、面白い奴だ。生徒会に入れたら毎日笑わせてもらえそうだな……Tycoon Booster……」
ヒュッ……ウィリアムは加速しながら大太刀で空気を切り裂き、即座に向かってきた。
ガキッ…《117,988,751→117,988,750》
『月を養い……日を支えよ……』
その刹那、ラケスがルーンを発動させた。
「チッ……」
ルイスの力が一気に増大した。速度、知力、強さ、精度、本能。あらゆる面で。
彼はウィリアムの大太刀をぎりぎりかわすことができた。
『さらに二度重ねよ』
ルイスの体の力がさらに倍になった。その速度はTycoon Boosterと同等に達した。
ルイスはウィリアムへと正面から飛びかかった。インターネットと歴史の授業から得た知識によれば、大太刀は非常に長く重い。ウィリアムはその欠点を見越して足でバットを半分に折ったが、それでもまだ長かった。
彼は刃をルイスへと薙いだ。しかしGood Dayを発動させて攻撃を弾き返したことで刀が砕け、ルイスは渾身の力でウィリアムに向かってバットを叩きつけた……
「ちょうど一分……」
「えっ……あっ!!!!!!」
次の瞬間、ルイスの鼻から血が吹き出した。体がその場に崩れ落ちた……
「はっ……はっ……息が……できない」
「何だ、知らなかったのか?ラケスのルーンはな、組んだ二人が同じように動いたり活動したりするほどよく機能するものなんだぞ」
「そう……なんですか……」
脳が悲鳴を上げているように感じた。心拍数が異常なほど高くなり、呼吸もどんどん薄れていく。
「ラケスのルーンが機能するにはまず二人が組む必要がある。一方が戦えばもう一方も戦わなければならない。魔法の力は一人で受けるには強すぎるから、一人だけが戦っていると全ての力がその一人に集中して体に過大な負担がかかるんだ。しかも力を重ねれば重ねるほど早く死ぬぞ」
ウィリアムはルイスと目線を合わせるようにしゃがみ込み、今まさに死にかけている彼に向かって穏やかな笑みを向けた。
「相変わらず腹立たしい顔してるな……このバカ会長め」
ラケスは舌打ちしながら毒を吐いた。もう潮時だろう。ウィリアムは立ち上がって模擬戦闘室を出ようとした。
「ラケス、彼を部屋から運び出してくれ」
「はっ……少し手ごたえのある相手と戦えただけでそんなに嬉しそうにして……」
ラケスは嫌味を言ったが、ウィリアムは馬耳東風だった。
「まあいい……私自身も久しく戦っていなかったからな。腕を磨く機会が持ててよかったよ。サリバン教授、部屋をお借りして感謝します」
「うん……では私はこれで」
教授は部屋を出ていった。
「ふう……帰りにアイスを食べに……!!!!!」
その瞬間、完全に油断していたところに背中へ何かが当たった。振り返るとそれはタイルの破片で、かすかに血がついていた。
投げた人物は他でもない……ルイスだった。
「死んだはずなのに……どういうことだ」
部屋から出なければ全てがリセットされる……しかしルイスの体は残った力を振り絞り、血のついたタイルの破片を拾って彼に投げつけたのだ。
「もしかすると……まだ完全には死んでいないのかもしれない。人間の感覚は死んだ直後にすぐ消えるわけではないから、死後もしばらくわずかに動けるのかもしれないな……」
「ほう……なるほど」ウィリアムはラケスの推察に拍手した。
「わざとらしくしなくていい……それにしても、自分の姪の記憶を消せる人間が、目の前で死んだ者を気にするわけないだろう」
ウィリアムはラケスをからかうようでいて、どこか陰りを帯びた目で見た。
「まあな……それじゃあ、恵たちに連絡しておいてくれ。明日の十時に新入り歓迎の会を開くとな」
「ふむ……タイルの破片を一個当てただけで生徒会入りとは、ずいぶんと気前がいいな」
「男に二言はない……では明日会おう。男子が新入りで入ってくれば、女子たちも少し張り合いが出るだろうしな……」
そう言って部屋を出ていった。まだ意識を取り戻していないルイスをラケスは抱え上げ、お姫様抱っこで寮へと連れ帰った。
「まったくあいつは……一体何を企んでいるんだ……」
青年は心の中でそう疑問を持ち続けた。おそらくその答えを知る日は永遠に来ないだろう。
聞いたところで……あの人物が答えるはずなど絶対にないのだから。
投稿が遅れて申し訳ありません。ワールドトリガーを読みふけってしまい、書くのを忘れていましたが、今は追いつきました。




