23: 護身術トレーニング3
003
「はっ……はっ……」
SF映画の実験室のような模擬戦闘室の中で、満身創痍の少年が膝をついていた。その目の前には全身白いスーツ、白いパンツ、白い髪、白金色の瞳を持つ男が微笑んで立っていた。
「何だ……その程度か?」
挑発的な声音で言った。少年は何も答えなかった。
「まだウォーミングアップです……」
少年は素早く立ち上がった。まるで痛みなど消え去ったかのように。
「ほう……」
「絶対に生徒会に入ってみせます!」
その少年――ルイス・シルバーウィングストンは、目の前に立つ生徒会長に向けて野球バットを突きつけながら宣言した。
「なら私の体に傷をつけてみるがいい……まあ、お前が先に限界を迎えるだろうがな」
ルイスは迷うことなく即座に飛びかかった。
ジャイアント寮武道訓練場
「しっかり覚えておいて。合気道はもともと相手との激しい打ち合いを避ける護身の武術よ。あなたにこれを教えるのは、素早い動きと一撃で相手を制することに特化しているからよ。女の子は柔軟性と俊敏性が高いし、攻撃より武装解除と相手の動きを利用することに重点を置いてるの」
「ふうん……」
「でも……これはあくまで護身のためだけよ。銃やナイフには通用しないから」
「じゃあなんで学ぶの?」
「学ばなきゃだめよ……実際の戦闘で、魔女は私の泥人形みたいにじっとしてるわけじゃないんだから。素早く動けることは絶対に必要なの……さあ、こっちに腕を出して……」
この子って思ってたよりずっと人のことを気にかけるのね……
「えっと……合気道には型の稽古があるの。まず二、三つ教えるわ。それから夕食後に寮で体操をすること。これは体をこの武術に馴染ませるためよ」
「でも実際には……相手が型を演じるのを待ってから攻撃してくるなんてことはないよね?」
「そんなのは映画の中だけよ……でも型を練習するのは、体を慣れない動きに適応させるためなの」
「なるほど……そういうことね」
「じゃあまず最初の構えから。左構え……」
リボンが私のところへ来て姿勢を整えてくれた。
「腕を伸ばして。左足を踏み出して45°傾ける。後ろ足をまっすぐ伸ばして。前を見る。右腕は下に添えて、左腕を前に出す……いいわ、そう」
「まあそれなりにできてるわね」
「これは基本の型よ。普通の人なら練習するのにそれほど時間はかからない。でも私たちには魔法が体の中を流れているから、もっと短い時間で習得できるわ」
そして新しい型を整えてくれた。
「次は右構え。やり方はさっきと同じよ。左足の代わりに右足にするだけ。さあ……やってみて」
まず体をまっすぐに立てる。両腕を伸ばす。左足を後ろに引く。右足を踏み出して45°に沈む。左腕は下に添えて、右腕を前に伸ばす。
「グッジョブ!!構えはまだ完璧じゃないけど、初心者にしては覚えるのがとても早いわ……」
「ありがとう……」
「じゃあ三つ目の型に入る前に、左構えと右構えをそれぞれ十回ずつやってみせて」
「うん!!」
模擬戦闘室
「意志は強いな。そういう人間こそ生徒会に向いているが……今のお前の実力ではまだ届かない」
「ならすぐに届かせてみせます」
ルイスがウィリアムに飛びかかった。ウィリアムは白い革靴のかかとを二度打ち鳴らした。
『Manage Doll(破壊の人形)』
瞬間、床のタイルが組み上がり、人型の化け物が二体出現した。タイルでできた体をしている。
「隙ありだ!!」
彼は召喚された者であるため、理論上は魔法を使えばウィリアムに勝てる。ただし今の彼は自分のルーンが何なのかまだわからない。だから戦うのが非常に困難だった。
イムプリジャン人の魔法は召喚された者より破壊力が劣るとはいえ、召喚されてまだ三日のルイスが魔法使いに勝つのはかなり苦しい戦いだった。
「ふっ!!!」
ガン!!!!ルイスは野球バットでタイル人形の二体をまとめて叩き壊した。破片が飛び散ってウィリアムの姿が見えなくなった。
ウィリアムはその隙に素早く間合いを詰めてきた。
そして脇腹に拳を打ち込んだ。野球選手の本能で右腕で受けようとしたが、ウィリアムは代わりに顔を蹴り上げた。防御させるためにわざと誘ったのだ。頭を狙って照準を合わせていた。
普通の人間なら即死できる力だ。しかしルイスは頭を蹴りが来る逆方向に動かした。おかげで顔のダメージは大したことはなかった。
「まさか生徒会の入会試験がこんなに命がけだとは思わなかった。保護者連合に訴えていいですかね」
彼はこの試験を見物している二人に目をやった。生徒会副会長のラケスと、建造物を生み出す魔法を専門とするサリバン教授だ。
「それはファウルだろウィリアム……普通、試験中はここまで命がけにはしないぞ」
ラケスが真剣な声でウィリアムに注意した。
「悪い悪い。長いこと戦場に出てなかったから、こんなに打たれ強い奴に会ったらつい手加減を忘れてしまった」
ウィリアムはラケスをちらりと見た。ラケスが鋭い視線を向けてくる。ウィリアムは頭をぽりぽりと掻いてからルイスに向かって自分の手の内を明かした。
「まあいい……私がうっかりお前の命を奪いかけたのはこちらの失態だ。その償いとして、試験で使った魔法の能力を全て教えてやろう」
「私が使った魔法は三つある。まず一つ目がManage Doll、破壊の人形だ。どんな素材からでも人形を作れる。生体組織からチタン合金やカーボンファイバーまで。ただし武器は使えない、物理攻撃のみだ。人形の速度と破壊力は使用する素材によって変わる」
リボンの泥人形とは違い、武器を使ったり自由に動いたりすることはできない。Manage Dollはひたすら相手を破壊することだけが役目だ。
「二つ目がTycoon Booster、疾風の加速だ。相手に触れることで、誰にでも移動速度を付与できる。自分自身に使うこともできる。ただし一度に一人だけだ。他の者に使いたければ、今かかっている能力を解除してから相手に触れ直さなければならない」
「そして最後の能力がレプリカだ。存在しないものを実在させ、実在するものを幻にすることができる。私の考えの中では、タイル人形が既に壊れていても、幻の中ではまだ存在しているから再構成できるわけだ。現実を書き換えるようなものだが、レプリカで扱えるのは小規模なことだけだ。せいぜい戦場を作り出す程度だな。例えばこんな風に」
「!!!??」
ウィリアムが説明しながらレプリカを発動した。既に砕け散ったはずのタイル人形が元通りに復元された。
現実ではタイル人形は壊れているが、ウィリアムはそれを元に戻した。
「ただし欠点がある。相手が私の意図を読んでしまうと、能力が無効になる」
それでも対処が難しいことに変わりはない。ルイスはそこまで機転が利く人間ではないからだ。彼はタイル人形を叩いて、ウィリアムがレプリカで人形を復元しようとするだろうと読んだ。
その読みは当たった。ウィリアムが再びレプリカを使おうとした瞬間、ルイスが同じことを考えていたため能力が無効になった。ルイスは間合いを詰めることができたが、あえて距離を保った。Tycoon Boosterを食らうと速度に対応しきれず隙が生まれるからだ。
そこで野球バットでウィリアムを打ちにいった。しかしウィリアムはTycoon Boosterで回避した。
「はっ……はっ……」
「どうした……もう降参か?」
再び挑発の声が飛んできた。
「そんなわけないですよ……」
ルイスは相手に向かって笑みを返した。今、何かを掴みかけていた。
「あなたに傷を負わせてみせます。この13秒以内に……」
ウィリアムも笑みで返した。
そしてルイスは初めてルーンを発動させた。
頬についた血を顔に塗り、髪を後ろへとかき上げた。するとその瞬間、彼の目に映った――ウィリアムの弱点が。
カチッ、カチッ、カチッ……歯車が噛み合うような音が響いた。
そして彼の左目が、クロエと同じように弱点を見抜く目として現れた。
これで彼は優位に立ち始めようとしていた。
正直に言うと、この章を書いている間、謎の人物の能力を無名の若者が打ち負かすことができたら、読者はそれを主人公の能力とみなすだろうか、と考えていました。そこで、この物語では機転と問題解決能力に焦点を当てることにしました。様々な登場人物が、これらの能力を駆使して、より優れた相手を打ち負かすことができるようにしました。




