22: 護身術トレーニング2
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「こんにちはー……」
私たち二人は生徒会室のドアを開けて中へ入った。想像していたのとかなり印象が違った。広い部屋ではあるが、本棚や書類棚が所狭しと並んでいてむしろ狭く感じた。入って左手側には小さな応接スペースがあり、ソファにはぽっちゃりした恐竜のぬいぐるみが置いてあった。右手側にはあと二つの部屋があり、一つ目はドアなしで左奥に位置し、もう一つは壁際に「トイレ」とはっきり書かれた部屋だった。
「あら……あなたじゃない」
「エバリンさん……こんにちは……」
奥へ進むと会議室になっていて、中央に長いテーブルがあり、三人が座っていた。
「お客さんが来たわ……じゃあお菓子とお茶を準備しないと」
先輩の一人が立ち上がろうとしたが、リボンが止めた。
「サリバン教授から預かった練習申請書に署名をいただきに来ました」
「あらそう……いいわよ」
そう言って書類を渡してくれた。
「なんで練習するたびに許可が必要なのかな……」
思わず口が滑ってしまい、慌てて手で口を塞いだ。先輩がわけを説明してくれた。
「えっとね……以前、他の寮と勝手に戦いたがった生徒がいてね。だから練習申請書を正式に出す手続きが必要になったのよ」
「その生徒たちは記憶を消されて元の世界に送り返されたけどね」とエバリンさんが付け加えた。
ほっ……この世界にも無茶なことをする人がいるんだと思ったけど、ちゃんと対策があるのね。
「じゃあ……私も練習申請書をいただけますか……」
「もちろんよ。署名しておくわね」
リボンが私がちょうど聞こうとしていた情報を耳打ちしてくれた。
「あの先輩の名前は恵ね。人の本質が見える能力を持ってるの」
「それがルーンなの?」
「違うわ……特殊技能とでも言えばいいかしら。絵が上手いとか、ゲームが得意とかそういう感じよ」
だから私が申請したらすぐに署名してくれたのね……
「それにここでは他人に迷惑をかける人は必要とされないから、さっさとこの世界から追い出した方がいいってわけよ」
そして恵さんが申請書を私に渡してくれた。
「はい……ここの署名は寮長にもらってきてね。この書類は一ヶ月間有効だから……なくさないようにね」
「はい……」
そして私たち二人は部屋を出た。
「あの子……試験のときに内臓が半分なくなってたのに、元気そうね」
恵が台所でお茶を沸かしながら言った。
「本当にそうですよ。エイドリアンがいなかったら死んでましたよ」
エバリンは顔を伏せたまま書類仕事を続けながら答えた。
今は入学の時期のため、新入生の報告書を書いて学院の最高位である「聖人」に提出しなければならなかった。
「エバリンさん……私たちの寮の生徒の報告書、書き終わりました」
生徒……いや、エバリンの個人秘書兼フブ寮副寮長のローゼント・ローゼンタルが書類の束をエバリンに差し出した。
「いいわよ……じゃあそれを青い箱に入れて。しっかり保管しておいてね」
「はい……」
現在の生徒会のメンバーはおよそ七人。ほとんどが各寮の寮長か副寮長だ。
人数が少ない分、全員が増え続ける事務作業に追われていた。
以前も話したように、生徒会への入会は選挙ではなく募集によるものだ。魔女との戦場では生徒会員が必ず一人指揮に加わらなければならず、命を落とすリスクが高いからだ。
ただし入会の審査条件として、ある程度の戦闘能力が必要とされる。そうでなければ指揮の場で簡単にやられてしまうから。
「そういえばアーディタクのやつ、どこにいるの?書類はもう出したの?」
「とっくに出しましたよ……今日は自分の寮で新入生の指導をするって言ってました」
恵がお茶とお菓子を持ってきながら答えた。
「まったく……ローゼント寮長もそうしてくれたらいいのに」
「言葉には気をつけてください、恵先輩。だからこそ私はアーディタクのことが好きになれないんですよ」
エバリンにとって、アッキ寮の寮長でもある生徒会員のアーディタクは、口うるさくて感情的な人物だった。しかし仕事や任務には真剣そのものだった。まるで悪い感情は飾りとしてくっついているだけのようで、エバリンはそれを見て「ぶりっこ」だと思っていた。そのため少しばかり気に入らず、よく彼に絡んでいた。ときにはお互いの寮に損害が出るほどになることもあった。
しかしウィリアムはこの二人がまだ改善できると判断し、記憶を消して送り返してはいなかった。
「ははは、アーディタクくんはかわいいと思うけどな」
「恵先輩は楽観的すぎですよ」
「あらそう。ローゼントくん、エバリンをちゃんと見ていてあげて。また暴れないようにね」
「ちょっと……そんな難しいことを丸投げされても困りますよ」
「はいはい!」
「そういえば今日、会長と副会長がいませんよね」
エバリンが話を変えた。
「うん……どうやらルイスくんの審査中らしいわ」
「審査……生徒会に入る人がいるんですか……」
「そうみたいね……でも受かるかどうかわからないけど……」
ジャイアント武道訓練場
「わあ……チューニングカーって速いんだね!」
「そうよ……これに仕上げるのに何十年もかかったんだから」
リボンが誇らしげにGTRのボディを撫でた。
「さあ行きましょう。これ以上時間を無駄にできないわ」
「うん」
訓練場の入り口は日本の邸宅を思わせる美しい造りで、エバリンさんが言っていた「粗野な寮」という言葉とはかなりかけ離れていた。
中に入ると大理石が敷き詰められた長い通路が続き、周りには手入れの行き届いた芝生が広がっていた。訓練場の建物は古い日本建築の様式で、通常の三倍ほどの大きさがあった。
「あら……リボンじゃない。今日は遅かったわね」
通路の手前には休憩スペースがあり、自動販売機も置かれていた。そこには見事な筋肉を持つ先輩が飲み物を取り出しているところだった。
「今日で申請期限が来てしまったので、新しい書類をもらいに行っていたんです」
「そうなの……それでその子は?」
「えっと……クロエ・アンダーソンです!新入生でエイガシ寮に所属しています」
書類をこの先輩に見せた。
「あらそう、うちの寮で練習したいのね。ちょうどよかったわ。今日は私たちの寮長もいるし、女子生徒が練習に来ることは滅多にないから、男子たちも少しやる気が出るでしょ……」
「まるで私が女子じゃないみたいな言い方ですね」
「ははは!しょうがないじゃない。リボンは怪力女子なんだから!」
「口に気をつけてください!」
「ありがとうございます……あの」
「ウェンディよ……ウェンディ・フェリックス。19歳。ジャイアント寮の副寮長でボクシングが得意よ。よろしくね」
先輩が手を差し伸べてきたので握手した。全身筋肉だらけなのに、手はとても柔らかかった。私の手より柔らかいくらいだ。
「こちらこそ……合気道を習い始めたばかりの無名者です。よろしくお願いします……」
私たちは訓練場の中へ入った。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「左!右!!構えを保て!!!!」
「攻撃が遅い!もう一度!」
中は様々な部屋に分かれていて、男女の気合い声が響き渡っていた。
「ここは練習部屋ごとに分かれてるの。案内板が見えるでしょ?各部屋でそれぞれ別の武術を練習してるわ。指導してるのはここに長く在籍している生徒たちよ」
「剣術の練習室もあるんですね」
地図に剣術室と書かれているのが見えたので聞いてみた。
「そうよ……でも基礎だけね。本格的に武器の練習をしたいならライオット寮に頼みに行けばいいわ。でも受け入れてもらえるかはわからないけど」
「なんでですか?出し惜しみするんですか?」
「違うわよ。ライオット寮は探索隊なのよ」
「探索隊?」
「そうよ……ライオット寮は学院の授業に出ない唯一の寮なの。彼らの任務は魔女の居場所を探しに行くことだから……」
なるほどね。私は銃を主な武器にしているし、いずれ時間を作って練習をお願いしに行かないといけない。
「さあ着いたわよ……先に練習しててね。私はこの書類をトーマス寮長にサインしてもらいに行ってくるから」
「ありがとうございます……」
「さあ、着替えましょう。ついてきて」
しばらくして、私たち二人は合気道着姿で出てきた。
「着心地がいいな……」
戦うので髪をきちんと束ねなければならない。リボンが私の髪をポニーテールに結んでくれた。正直、厳しいお姉さんみたいな雰囲気が出ていた。
リボンも同様に、ツインテールをほどいてポニーテールに結び直した。
「戦闘用の服だからね。さあ、まず準備運動から」
運動前に準備運動をすると体がびっくりしないと聞いたことがある。言われる通りに素直にこなした。
「よし……かかってきて!」
リボンが構えを取って私を手招きした。
私は前に飛び出して両手でリボンを掴もうとした。しかし――
「素人ね……まだまだ甘いわよ」
彼女は素早く私の両手を払いのけ、右腕で私を遮断した。腕を首のあたりに当てて、瞬時に私を地面に押さえ込んだ。
「え……」
何が起きたの……さっきリボンに飛びかかってから二秒も経っていないのに、なんで気づいたら地面に倒れているの。
下に敷きマットがなかったら背中が折れていただろう。
「今のって……何……」
「今の……?……合気道よ。今日あなたが学ぶもの」
夜は長いですが、第22話がついに公開されました!よろしければ、評価とコメントをお願いします!




