18: その日の最初の授業 3
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校舎の廊下
他の生徒たちが教室にいる中、一人の少女が静まり返った廊下を歩いていた。別に人付き合いが苦手というわけではなく、書類の入った箱を生徒会室へ届けに行っているところだった。
その少女――中野恵。スーツ姿の女子生徒で、スカートは長めだった。顔立ちは整っている。
本来この時間は授業を受けているはずだが、イムプリジャンでは生徒会のメンバーは一般生徒のように授業を受けない。それは生徒会が、学院の最高位である「聖人」に次ぐ高い地位であり、学院を創設した者たちでもあるからだ。
そのため学院内のさまざまな業務を管理しなければならず、授業と生徒会の仕事を両立させる時間がない。通常、生徒会のメンバーは自学自習で勉強し、試験の時期になると一般生徒と同様に受験する。
「恵さん?」
背後から声がかかった。知り合ってまだ数日しか経っていないが、彼女が最も気に入っている人物だった。
「あらまあ……ルイスくん、授業はどうしたの?」
鋭い目つきだが、顔立ちはよく、入学試験のときとはまるで別人のように見えた。無造作なボサボサ髪も不思議と様になっている。白い長袖シャツに黒いスラックス、スポーツシューズを履いており、背中には野球のバットが入ったバッグを背負っていて、まるで刀を帯びているかのようだった。
「トイレに行ったついでに少し歩いてました」
「もう……授業をサボらないで!早く戻りなさい」
少年はしばらく恵を見てから、彼女が持っていた書類箱を持ってあげることにした。
「持ちますよ……」
「こういうときだけ紳士なんだから……」
「母が教えてくれたんです。女性が困っていたらすぐに手を貸すのが紳士のすべき行いだって」
紳士という言葉を聞いて、入学試験のときに自分を「紳士の方」と呼んだある人物のことが一瞬頭をよぎった。
「それで……来て三日になるけど、どう?ここには慣れた?お腹の傷はもう完全に治った?」
「傷のあたりはまだ少し痛みますが、大したことはないです。ここについては、正直元の世界とそんなに変わりません」
「野球のことしか頭にないものね……。ねえ、恵さんからルイスくんに一つ秘密を教えてあげましょうか」
「何ですか?」
「ここの女子生徒たちね、あなたみたいな男子が大好きなのよ。スポーツが得意で優しくて、おまけにかっこいいし」
「それは恵さんも含まれますか?」
「まあ~お世辞が上手ね。残念だけど、二十四歳のお姉さんは年下好みじゃないのよ」
「そうですか」
「でもまさかあなたみたいな人が、ちゃんと女の子に興味を持てるとは思わなかったわ……」
「僕だって人間ですよ」
「そうよね。試験のときもあのブロンドの女の子をしっかり抱えてたし」
ルイスは少し困った様子で目を向けた。
「でも……あの子、ここに入れたのかな……」
「え……もしかしてあの子のこと好きなの?」
恵がからかうように言った。
「違います……ただ大丈夫だったか心配で。でも正直、あの子はきれいだとは思いましたけど」
「たくさん言い訳しても、好きってことよね」
「もうやめてください……」
恵は彼のむっとした顔が可笑しくて笑った。彼女にとってルイスはとても可愛い後輩だった。物事をはっきり言い、理解できないことはすぐに真剣な顔で聞いてくる。恵はもともと真っすぐな人が好きだったが、彼の場合は言動がどこか天然でぶっきらぼうなので、特別気にかけてあげていた。
「そういえば……なんで恵さんは生徒会に入ったんですか?」
「あ……以前話したけど、ここの生徒会は選挙で選ばれるわけじゃないって言ったでしょ。なんで知りたいの?」
「だって……生徒会は授業に出なくていいって聞いたので。野球の練習に使える時間が増えるなと思って」
それを聞いた恵はすぐに鋭い目でルイスを見て、彼の頬を思い切りつねった。
「このバカ!……生徒会は生徒のために働くためにあるのよ!授業をサボる口実を作るための地位じゃないんだから!」
「痛い……そんなにつねらなくても」
「生徒会はメギロディアン学院でほぼ最上位の地位なのよ。授業がないからって楽だなんて思わないこと。それに授業に出なくても、試験は一般生徒と同じように受けなきゃいけないんだから」
「それは困るな……そういうのは得意じゃないんですよ」
「得意じゃなくても、授業の内容は少し頭に入れておいた方がいいわよ。全部じゃなくていいから、せめて基礎知識くらいは持っておいて」
「生徒会って……大変なんですね」
「そうよ……今はメンバーが少ないし、空いてるポストもまだたくさんあるのよ」
ルイスはしばらく考えてから結論を出した。
「じゃあ……僕も生徒会に入りたいです」
「本気で言ってるの?」
「だって……入ったとして、書類仕事は得意じゃないですけど、細かい作業とか雑用系なら僕でもできると思うので。先輩たちの役に立てると思って」
恵は少し真剣みを帯びた少年の目を見た。
「入ったら授業の内容も自分で復習しないといけないって分かってる?それにね、生徒会への入会はそんなに簡単なことじゃないのよ」
「そのあたりは恵さんにお任せするしかないです……」
恵はまっすぐすぎる後輩の言葉に大きくため息をついた。
「じゃあ……夕食が終わったら毎日一時間、私と一緒に授業の復習をすること。そうすれば夕方は野球の練習もできるでしょ。どうせ同じ寮なんだし」
「ありがとうございます……恵さんって女神みたいですね」
「そんな照れ臭いこと言うのはやめなさい……」
「冗談じゃないですよ……」




