14: ホリデーパーティー4
003
「あら……エイガシ寮の新入りの子ね」
「はい……」
今私たちは学院内の仕立て屋で採寸をしてもらっていた。
マ―ベルが言っていた通り、ここの正式な生徒になるには制服が必要だ。だからまずここへ来ることにした。
「今日は授業がないの?」
「えっと……昨夜不測の事態がありまして、議長が私たちの寮に二日間の休校を認めてくださったんです」
「あらそう……そういうことね」
あまり気にしていない様子だったが、まあそれでいいだろう。
「わかったわ……じゃあすぐ仕立てを始めるけど、デザインは決まってる?」
「え……制服にもデザインが必要なんですか?」
「あら、知らなかったのね。こういうことよ――学院では生徒が自分で制服の外見を決めることができるの。どんな格好でも構わないわ、学院の紋章が入っていさえすればいい。それと、一度制服として決めたデザインは変えられないから、どんな格好にするかよく考えてね。はい、これ。絵を描いてきてもいいし、服の特徴を文字で書いてきてもいいわ。でも絵の方がありがたいわね。左の紙が冬の制服、右の紙が夏の制服よ。できたら持ってきてね、いい?」
「あ……はい」
言い終わると私たちは待合スペースへ歩いていった。テーブルの上にはクッキーとホットミルク、それとペンが用意されていた。ドアを少し開けてドロシーを呼び、デザインを手伝ってもらうことにした。
しばらくして完成し、持っていって渡した。
「うーん……思ったよりずっとシンプルなデザインね。少し待って、魔法で形にしてあげるわ」
店主は二枚の紙を左の手のひらに置き、集中し始めた。
「よく見ておいて。ここが見どころよ」
ドロシーが囁いたが、その言葉はあまり頭に入ってこなかった。
白い光がしばらくまばゆく輝いてから徐々に光量が落ちていき、手のひらほどの大きさの純白のエネルギーの塊へと変わった。そして店主が右手をこちらへ向けると、その光の塊はゆっくりと形を変えて水の流れのようになり、彼女の体へと染み込んでいった。そしてあっという間に私たちへと向かって飛んできて、目で追えないほどの速さで私たちの体を貫いた。
するとその瞬間、私たちの周りに小さな嵐が起きた。二秒後に嵐が収まると、制服に着替えた私たちの姿が現れた。
「わあ、かわいい!」
ドロシーが思わず声を上げた。私たちも腕を広げて変わった服を興奮しながら眺めた。
「シンプルなデザインなのに着る人の可愛らしさをうまく引き出しているわね。あなたたち、デザイナーか何かだったの?」
私たちは鏡の前へ歩いていって試着した。魔法によって丁寧に作られた制服が映し出された。白い長袖シャツに白いストライプ柄の黒いリボン、膝丈の紺色のジャンパースカート、黒いロングソックス、つやつやした黒いローヒールのメリージェーンシューズ。生地は普通より厚めで、冬の制服として申し分ない。
前髪を少し整えて両サイドへ流し、白くきれいな額を見せるようにした。鏡から伝わってくる可愛らしさに、私たち自身でさえ自分に惚れてしまいそうなほどだった。
「では次は夏の制服ね」
店主が指をパチンと鳴らすと突然煙が現れ、服が一瞬で変わった。
「これもシンプルではあるけど、私は冬の制服の方が好きかしら」
「これはクロエが自分でデザインしたんですよ。だからこんなにシンプルなんです」
「でも私はこれも可愛くていいと思うわ」
私たちは白い半袖シャツを着て、淡い黄色のニットベストをまとい、チェック柄のショートスカートをはいて、白黒のスニーカーを履き、白いソックスを折り返してくるぶしまで短くした。
「シンプルで可愛らしいわ……でも、うーん……なにか足りない気がするわね」
私たちはそばに持ってきた小さなファッションバッグから何かを取り出した。
「ネクタイ?」
「うん……これ、試験のときにもらったものなの。私を助けてくれた人のものよ。つけておけばいつかその人に会えるかもしれないと思って」
お守りみたいなものと似ているような気がする。
「あの……気のせいかしら、この制服どこかで見たような気がするのだけど」
「わかりますか?寮のロビーに飾ってある漫画の主人公の制服を参考にデザインしたんです。可愛いと思ったので」
「ああ……マカ・アルバーンの制服ね」
「パーフェクト!……これでいいわ。店主さん、この服にします」
「いいわよ。じゃあ全部で銀貨五枚ね……」
あっ……そうか、買い物をするなら当然お金を払わないといけない。でも――
「私、お金を全然持っていないんです」
せっかく素敵な制服が手に入ったのに、貴族の娘でありながら支払うお金がないなんて。なんとも情けない話だ。今からお金を用意しに行っても間に合わないだろう。
「えっと……ツケにしていただくことはできますか?」
「それは構わないけれど、ツケにするなら名前と写真を控えさせてもらうわよ……」
「ちょっとちょっとちょっと!!!!!!」
ドロシーが素早く割り込んできた。
「クロエ、聞いて。お店にツケにしなくていいのよ。『純粋魔法』を使えばお金を作り出せるんだから」
また専門用語だ。純粋魔法って一体何なのだろう。
「純粋魔法というのは、試験を受けるためにイムプリジャンに入った召喚された者たちに組み込まれた魔法よ。あなたが銃を召喚したときと同じ魔法ね」
ドロシーは両手を広げて集中した。白い光が両手から明滅し、中に硬貨が入った中くらいの茶色の布袋として現れた。
「これはイムプリジャン人と同じ種類の魔法なの。ただ、召喚された者の体は本来この魔法を扱えるようには作られていないから、雑用程度にしか使えないわ。純粋魔法はルーンから来る魔法としてカウントされないから、使っても魔法の使用回数は減らない。でも体のエネルギーをものすごく消費するの。あなたみたいに重い使い方をし続けると……」
ドロシーは少し間を置いてから、震える声で答えた。
「すぐに死んでしまうわよ」
「……気をつけるようにするわ」
「それでいいわ……ああでも、物を移動させたり縮小させたりする程度なら大して問題ないけどね」
「うん……それでここのお金のことなんだけど」
「こういうことよ。ここの通貨は三種類あって、銅貨、銀貨、金貨があるの。銅貨千枚が銀貨一枚、銀貨千枚が金貨一枚よ。この世界の通貨が膨らみすぎないように、魔法システムがお金を使える適切なタイミングを決めるの。例えば今私が銀貨千枚を召喚したとすると、また召喚できるようになるまで約二週間かかるわ。じゃあやってみる?」
私たちは両手を広げて集中した。金色の光が明滅して現れた。
「一つ言っておくと、お金の召喚と使い方はよく計画しないといけないわよ。召喚した金額が多いほど、また使えるようになるまでの時間も長くなるから」
チリン……布の袋が私たちの手のひらの上に現れた。
「銀貨五千枚か。また召喚できるようになるまで約二ヶ月ね」
「心配しなくていいわ。ここの物はそんなに高くないから。タンスも新しいベッドも、銀貨二十枚程度よ」
「それじゃあ……はい、店主さん、銀貨五枚です」
「またいつでも来てね……」
私たちは店主に手を振って別れを告げ、再び市場へと向かい日用品を買い揃えた。テーブルや細々とした日用品、新しい服、文房具などで、今日の出費はおよそ銀貨二百五十枚になった。買ったものがかなり多かったので、純粋魔法で小さな箱に縮小した。
それからマ―ベルを迎えに行くと、彼女は玄関の前に立ってお弁当箱をいくつも抱えていた。
「来るの早いわね」
「そっちはどうだった?……それってお弁当?」
「私の方は順調だったわ。新入りの子たちがたくさんいたわよ。お弁当は食堂で買ってリボンたちへの差し入れよ。あなたたちの分もあるから、医学棟に着いたら一緒に食べましょう」
「いいわね……ちょうどお腹が空いてたところよ」
「私もリボンたちに早く会いたいわ」
「早くしてマ―ベル、お腹が空いてるんだけど!!」
「そんなに急がなくてもいいでしょ」
そして私たちは医学棟へと急いで向かった。




