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ゼッケン

試合が始まって、クラブの子が試合になる度にみんなでそのコートの近くに行って応援した。子どもも親も、みんな真剣に応援するから楽しい。


康太は順調に勝ち進んでいたけど準決勝で負けてしまった。どんよりしながら帰ってきた康太の背中を奏多君が無言で叩いた。お疲れとかよく頑張ったなとか色んな思いが込められているように見えた。


奏多君は準決勝を突破できて次は決勝のようだ。奏多君が試合に呼ばれるまでの間、また観覧席に座って数学をしていると、ユニフォームを着替えた奏多君がやってきた。


「数学?」


私の手元を見て聞く。


「そうだよー。奏多君は算数得意?」


「めっちゃ得意。前の期末テスト満点だから。」


自信ありげに言われた。


「すごっ。私、期末テストで満点は取れたことないな〜。」


惜しいところでミスするんだよねー。


「すごいでしょ。ねえ、呼び捨てでいいよ。みんなそうだし。」


「うん、そうする。そのユニフォームの色、綺麗だね。」


私の1番好きな色である水色のグラデーションのユニフォームは奏多によく似合っている。


「そうかなー?」


ユニフォームを引っ張って、グラデーションを眺めながら奏多が言った。


「そうだよー。決勝頑張ってね。緊張してる?」


カチッとシャーペンの芯を中に押し戻した。


「ちょっとねー。あ、ゼッケン付けてよ。」


思い出したように自分のカバンの方へ行き、峰元 奏多とプリントされたゼッケンを持って来た。


「私でいいの?」


普通はお母さんとかに付けてもらうとものだと思うんだけど。


「翼がいい。ちゃんとハンドパワー送っておいてね。」


小学生相手にドキッとしたなんて誰にも言えない。


「わかった。後ろ向いて。」


小さな背中にゼッケン当てて安全ピンを指す場所を決める。動きやすいように少しゼッケンにゆとりをもたせて針を刺した。背中に刺してしまいそうで、さっきとは別の意味でドキドキした。


「はい、できたよ。」


奏多の肩をポンっと叩いて言った。


「ん、ありがとう。」


「どういたしまして。」


にんまり笑う奏多に、私も微笑んで返すと、奏多のお父さんの声が聞こえてきた。


「おい、奏多!康太の姉ちゃんの邪魔してるんじゃないだろうなー?」


思わず笑ってしまう。


「し、してないよー。」


ちょっと困惑気味に答える奏多。


「してるだろー。ごめんなー翼、勉強の邪魔しちゃって。」


もう名前で呼んでくれる気さくで優しいお父さんだ。


「大丈夫ですよ。声をかけてくれて嬉しいくらいです。」


と答えると、奏多が自慢げに胸を張って言った。


「ほらねっ。」


「ほらねじゃないだろ!アホ!」


アホと言われても嬉しそうに奏多は笑う。


「だって気になるもーん。」


奏多の言葉になんだか私が照れてしまう。


「わかった、わかった。とりあえずお前は試合の準備しろ。もうすぐだぞ。」


奏多の頭に手を置きながら峰元さんが言った。


「はーい。」


気の抜けた返事をして奏多はひょいひょいと自分の荷物が置いてある椅子に移動した。


「アイツ年上大好きだからさー、また相手してやってよ。」


と峰元さんが笑った。


「はい。」


私も笑う。


「翼もバドミントンしてるんだよね?」


「あ、はい。すっごく下手ですけど。」


「土曜日の夜に俺が体育館借りてバドやってるんだけど、翼も来る?」


奏多のお父さんはコーチもしているらしい。スポーツが強い子は、その親が経験者ってこと多いよね。


「康太も行ってる練習ですよね。私が行ってもいいのならぜひお願いしたいです!」


声に力が入った。


「やる気がある子は大歓迎だよ。じゃあ、待ってるからね。」


非の打ち所がないお父さんだ。


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