下卑た男に鉄槌の刃を
まず動いたのは俺だった。身体強化で研ぎ澄まされた体は的確な判断でもって敵を迎撃するために動く。手に感じる護光の感触をしっかりと感じるとそのまま一気に引き抜き斬撃を放った。俺の拙い抜刀術でも男は簡単に真っ二つになる。俺の隙をついて男の一人がレイピアによる突きを放つ。それを左手で引き抜いた鞘で弾く。そして蹴りを放ち、今にも飛びかかって来そうな男達を牽制する。その間に刃を引き戻し振り下ろす。首を落とされ、これで二人目が死んだ。
「まだやるのか。ミリル、リベルをちゃんと守れよ」
「分かってる」
「舐めるなよ。魔法を使え!」
礼装の男が激を飛ばす。俺は納刀し、魔力を護光に込めてから再び抜刀、魔力の刃を飛ばして魔術師の腹を斬り飛ばすことに成功した。
「やるなくそガキ。だがそれもこれまでだ」
そう言って礼装の男は俺に掛かってきた。得物は短剣。非力な女が使うなら分かるが男が短剣を使うとは思わなかったが何とか一合、二合と斬り合う。男は舌打ちしてから飛び下がり再び柄の悪い男達をけしかけてきた。俺もそのまま応戦してまた二人を斬り殺した。男達残り七人程になって、流石に焦りを見せたようで二人一組で剣を向けてきた。身体強化のお陰もあって二人相手でも反応は充分に間に合う。男達を上回る力で刀を振る。剣ごと男達を両断して残り五人になった。じりじりと下がる男達に俺は刀を納めてすぐさま解き放つ構えを取る。先程の攻撃を警戒して防御の構えを取った男達の懐に飛び込み抜刀して魔力の刃を飛ばして三人一気に葬る。残るは二人。
「なぜ、刃が溶けない」
「……折れない刃だからな!」
また一人首を飛ばした。残るは礼装の男のみ。俺は一気に踏み込み刀を上段から振り下ろす。単純にして豪快な速度で走る刃は礼装の男の持つ短剣ごと斬り脳天にぶち当たった。額から血を吹き出して礼装の男は倒れた。
「お疲れ様お兄ちゃん」
「……ああ。ありがとうリベル」
「震えてるじゃないあんた。人斬るの初めてなの?」
「これで三度目だよ。くそ、慣れないことはするもんじゃないな」
俺の体は意志に反して震え続ける。リベルに手を握られてようやく体の震えが止まった。俺は護光を地面に突き刺してからそのままリベルを抱きしめて静かに涙を流した。人を殺すことに何か思うところはない。ただ俺が人を殺せる力を手にしてしまったことに薄ら寒さを覚えるのだ。これだけは慣れる気がしない。
「ああ、無理だなこりゃ。慣れる気がしない」
「本当にそんなのでサルダージャを殺せるの?」
「心配ない。殺す。それだけは決めたことだ」
俺は護光を手に取り血を飛ばしてから鞘にしまう。人が集まってきたのでそろそろお暇しよう。今回は俺だけで対処したがミリルにも対処させるべきだったか。いや、あれだけの数ではどうせ無理だったか。俺が少しおかしいのだ。
「とりあえずは大丈夫そうだな」
「それならいいんだけど」
「お兄ちゃんとりあえずお金稼ぐ手段を考えてはどうでしょう。これから他の国に行くにしてもお金が必要です」
「何かあるかアイリス」
「冒険者ギルドに登録して依頼をしながら行けばいいんじゃないの?それくらいならあなたでも行けそうだし」
「ダンジョンマスターが魔物を倒すとか本末転倒じゃないか?」
俺の言葉にアイリスもリベルも笑った。ダンジョンマスターは本来人の命を奪う側だから大変におかしい。矛盾するけれど、手段としては悪くない。
「じゃあ決まりだな」
そんなわけで俺達は冒険者ギルドのある区画へと向かった。




