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藪医者アイリスとミリル

「で、藪医者ってのなんなの?」


 俺は先程のアイリスの言葉が気になり聞いてみた。アイリスは少し言い淀んだがすぐに答えた。


「勝手にそう言われているだけよ。そもそも正確に医者と呼べる人はこの世に何人いるのかしらね」


「この世界のことはよく知らないよ。少なくとも魔法を使っているなら魔法医と呼ぶべきだろ」


「そうなのよ。私は魔法を使わない治療を行うの。だから、藪医者何だってさ。よく分からないわ。魔法と薬にどこに違いがあるのかしらね」


 そういってアイリスは肩をすくめた。俺としては薬の治療というのには親近感がある。記憶はないが知識では色々な薬を知っている。この世界で再現できるとは思えないがそれでも似たものは作れるだろう。アイリスの言う薬治療は魔法が効かない病気があるのならば有効だろうと思う。


「魔法が効かない病気なら使われるんじゃないのか?」


「そうだけど、少なくとも私が知る限りないわね。魔法は万能なのよ」


 そんな甘い世界なのかここは。俺にはどうしてもそうは思えない。リベルのように神に人生を狂わされた人がいるし、元の世界ではそんなことはざらにあったと思う。


「魔法は万能、か。なら、神を殺せるか魔法で」


「……あなた、面白いこと言うわね」


「はは、冗談だよ。それより俺にできることはないか。俺が倒れたのは精神的なものだったが看病はしてもらったからな。恩を返したい」


「それじゃあそこの子を貸してもらえないかしら」


 アイリスが指差す方にはリベルがいる。リベルを貸して欲しいとはどういうことなのだろうか。


「何をさせるつもりだ?内容によっては殺すしかないんだが」


「物騒ね。ちょっと患者の心を落とすために使われてもらうのよ」


 アイリスは呆れながらそう答えた。



 俺はリベルの才能に少しばかり驚いている。いや、才能というよりは誰でもやればできることだが目の前の少女が笑っていることにリベルの才能と思わせるものがあった。

 アイリスに頼まれたことはリベルによる心を閉ざした少女を部屋から引きずり出すことだった。そんなことをできるのかと思っていたが起きたリベルにやらせてみるとすんなりと外に連れてきたのだ。

 アイリスもすごいと驚いていたし、相当苦労していたが結局できなかったのだろう。少女は数ヶ月前に盗賊に親を殺されたそうだ。偶々外に出ていたアイリスが魔法を使い盗賊を撒いて逃げたそうだ。


「というか、よく盗賊に捕まらなかったな」


「私の魔法は特別なのよ。幻影魔法って知ってるかしら」


「幻を見せるのかそれは」


「そうよ。それで少女、ミリルちゃんの幻影を見せて追い払ったの」


「……簡単そうに見えて難しいぞそれ。所詮、幻影だからな数作らないとすぐに捕まる」


「そこは魔力をすべて引き絞って頑張ったのよ。その後が大変だったわ。走らないといけないから」


 心を閉ざしていた少女ミリルはリベルと話ながら笑っていた。感情をうまく表現できない少女は俺にはとても輝かしく見える。リベルに似ているからかもしれない。身長だけしか似ていないけど。


「お兄ちゃん、どうする?」


「何がだ?」


「……………」


 それほど気に入ってしまったのだろうか。それともミリルが離れたがらないということなのだろうか。アイリスの方を見ると何とも言えないと言った風に首を傾げていた。ミリルの方はリベルの手を握っていた。離さないようにといった感じか。


「ミリル、とか言ったか。死ぬ覚悟はあるか?」


「ちょ、ちょっとタツ!?あなた何を言ってるの!」


「……ある」


「そうか。ならついてきてもいいぞ」


「ありがとうお兄ちゃん」


 リベルが嬉しそうにしているので俺も満足だ。このミリルには利用価値がある。鑑定を使ってみたが面白いことに守護の盾というスキルがあった。俺達のアビリティにはない護る為の力はリベルを護るにはとてもいい。具体的に言うと護る者のために盾を作るスキルだ。護る為に特化したスキルというわけだ。リベルには申し訳ないがミリルにはリベルの盾となってもらおう。もっともリベルは気づいていそうだが。


「タツ聞いているの?ミリルをどうする気なの」


「リベルを護る為の盾とする。ミリルはそれに承諾した」


「お兄ちゃんやっぱり……ミリルちゃん、無理しなくていいからね」


「……私、護る。それ、使命。友達、護る」


「と、いうわけだ。心配ならついてくるか?」


 ものはついでだとばかりにアイリスに言ってみたのだが案の定ついてくることになった。

 こうしてミリルとアイリスを仲間にした。俺にとってここに住む何もかもが殺戮対象ではない。神を殺すためならば何でもするが人を恨んでいるわけではないからだ。リベルを狙うならば容赦なく殺すとは思うがそれ以外に人を殺す理由などそうそうできないと思う。

 未だ血に慣れず、何度も吐き気がやってくるがそのうち慣れるだろう。慣れたくはないが慣れねばいつかきっと隙になり俺が死ぬことになる。リベルのためにもそれは避けなければならない。

 それは後のことと思考の外に置き、俺はアイリスに薬について聞き、リベルはミリルと遊び、その日は終わった。

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