愛しき者を離さず、神に復讐を誓う。
ああ。変な夢を見ていた気がする。何の夢だったか覚えていないけど。俺は起きあがろうとしたが小さな重みを感じてやめることにした。リベルは俺の胸の上ですやすやと寝息をたてて眠っていた。寝姿すら可愛いのだから起きた甲斐があった。頭を撫でてから俺はこれからのことを考えた。
絶対正義の神リカエルは俺に力を貸した。俺の守りたいと思う心に共鳴して。その力は絶対審判の力。正義という名の力を振りかざして悪を滅する。それが絶対審判の力。要するに悪即斬を地で行く力だ。何がどうやって邪神にされたかは知らないがそりゃあ信仰心も薄くなるに決まっている。善悪は人の視点で変わる。神が善悪を指定していい訳ががない。そんなのは人間が認めない。
「まぁそんなことより、この力でくそ野郎をどうやってぶっ潰すかだな」
俺の絶対正義はリベルを守ること。それだけだ。リベルが好きだからこそ守りたい。何が何でも絶対に。その心が俺に決意を促す。要するにあれだ。神を潰すんだ。
「結局、リベルの目的が俺の目的になっただけか」
それなら今まで通りか。なら、問題ない。リベルと一緒に協力してやっていこう。なにも一人でやる必要はない。リベルがいるんだし。
決意を新たにした俺はしばらくリベルの寝顔を見ていたがようやくリベルが目を覚ました。
「おはよう、リベル」
「お兄ちゃん大丈夫なの!」
「ああ、大丈夫だ。しかし、すっかりお兄ちゃんが馴染んでるな」
それはそれでいいものがある。一種のプレイだな。うん、何かエロいな。俺は心の中で思った。思うだけなら無料だからな。
「タツでもお兄ちゃんでもどっちでもいいでしょう?」
「まぁ俺はどっちでも嬉しいから構わないけど」
「これから……どうするの?」
俺はリベルに聞かれて答えるか迷った。このままリベルとひっそりと暮らすのもありだ。また妨害があるかもしれないが今は力がある。でも、リベルはそれを望まないと思う。例え、それが理由付けの為であっても。
「もちろん、目的は変わらないだろ。神を潰してやる。俺のリベルに手を出したんだからな」
「私、いつのまにお兄ちゃんのものに……まぁいいですけど」
顔を赤くしてるから説得力の欠片もない。全く持って可愛い奴である。お兄ちゃんと言われれば妹よと返したくなるのを我慢した。俺、えらい。
「まずは外に出て見るか。デートでもしながら神がどんな宗教で信仰されてるのか調べよう」
「デート……」
「一応メインは調べる方なんだがまぁいいか」
体をくねくねして色んなことを考えているリベル。女の子として色々あるのだろう。リベルが楽しければ俺も嬉しい。理想は俺がエスコートして街を歩ければいいんだがそれも難しい。そんなイケメンなことは他の奴がやることだから俺はやらない。
うん。要するに何も考えられないのだ。リベルといるだけで幸せな俺としては何もしなくても楽しいし、嬉しいし、幸せなのだ。これほど充実してることはないと思う。好意を自覚してから一日だがこれほどまでに心が満たされるのは初めてだ。
「お兄ちゃん」
「どうかしたか?」
「いえ、呼んでみただけです」
「そうか」
「はい!」
何、このやりとり。まさかにバカップルのやりとりだな。まさかが俺がこんなやりとりを行うようになるとは世の中分からないものだ。記憶がないから初めてかどうか分からないけど。まぁ多分、初めてのはずだ。
俺はリベルを抱き寄せていつもの体勢になる。リベルを背中から抱きしめる形だ。前からそうなんだが俺も割と気に入ってるみたいだ。リベル自身も嬉しそうだからかもしれない。
「愛しきを離さず、我復讐を誓う。果てに神を殺さんことを。なんてね」
「何ですかそれ。かっこいいですね」
「かっこいいか」
「お兄ちゃんはかっこいいのです!」
うん。これはあれだ。アホの子だ。俺のことをそれだけ信頼してくれてる証だけど、流石に中二病なセリフに目を輝かせながら上目遣いで見てくるのはまずい。多分、理解していない。一応賢いキャラだったはずなんだがキャラがぶれぶれだな。
「意味分かってないだろリベル」
「そ、そんなことはない……ですよ?」
「今の間は何だ。それに何故疑問系だ」
「う、お兄ちゃんが意地悪です」
そんなこと言われたら慰めたくなるからやめくれ。実際にそんなことはしてやらないけどね。何でもかんでも優しくしてやるのはリベルの為にもならないし。そこまで大袈裟なもんでもないのだけどね。
「愛している者を離さず、私は復讐を誓う、最後には神を殺すことを」
「愛している者って誰なんです?」
ああこいつ、確信犯だな。本当は意味を理解している。賢いキャラは返上されていなかった。しかし、これはこれでそそるものが……おっと、話がそれたな。
「リベルに決まってるだろ」
「ふふ、私に決まってるんですか」
「ああ、決まってるんだ。自然の摂理でな」
「嬉しいです」
本当に可愛い。何をしても笑顔を見せてくれるから俺も思わず笑顔になる。してくれる。だいぶ精神が安定してきた気がする。このダンジョン暮らしも悪くなかった。これからは外の世界を見るのも悪くない。気が向けば滅ぼしたりしてもいい。もしかしたらリベルはそんなことを許さないかもしれないけど。まぁその時はその時だ。
「さて、DPの為に定番のあれを用意するか」
俺の知識にある一冊だけ読んだことのあるらしい小説に出てくる定番の魔物。知能はあまりないが繁殖力が高く、複数に囲まれれば一人では倒すのが難しいゴブリン。複数での連携が厄介だと俺の知識にはあるがどうやらこの世界でも同じらしい。そのゴブリンをたまっていたDPで雌雄10匹ずつ用意する。これだけで2000DPも消費する。まぁゴブリンの繁殖力に期待するとしよう。ついでにゴブリン専用フロアを地下二階にしておく。
「うん。これでDPも使いたい放題できるな。魔物保有数でDPを得られるのはやはり大きい。保有数×10はチートすぎる」
「ほぼ無限に使えるわけですからね」
「外で一年過ごせばスライムとゴブリンで溢れかえってることだろうな。万を超えるゴブリンで一国を征服するのも面白そう」
「お兄ちゃんは少し考え方が安易すぎる気がします。滅ぼせばいいってものではないですよ?」
案の定、怒られた。やっぱり駄目なのか。
「どうしてもというならやってもいいですけど」
うん。人の命軽いなこの世界。俺の気まぐれで一国が滅ぶ可能性があるなんて恐ろしい。まぁそもそも神が俺をここに呼んだのが間違いないなのだ。俺は悪くない。
「やらないよ流石に。リベルに危害が及ばない限りはね」
「それもそうですね」
納得された。やはり神に召還されたことを根に持っているからなのだろうけど、人の生死にあまり敏感じゃないな。ぶっちゃければこの世界の人がどうなろうと関係ない。リベルより大切な者はないからな。それでも最低限の死者で抑えるべきだろう。死者なんて言ってる時点で殺る気満々と思われるが。
「寝るか」
「そうですね。いつものように」
結局はやることがない。ダンジョンマスターなんて名ばかりで管理すらする必要もない。まだ地上への階段を繋げていないからのんびりできる。だから、寝る。
「おやすみ、リベル」
「おやすみなさい、タツ」
名前で呼ばれるのもありだな。そう思いながら眠りについた。




