第五話 見えてきた真実
騎士団本部。
執務室には、紙をめくる音だけが静かに響いていた。
机の上には、横領事件に関する資料が幾冊も積み重ねられている。
レオンは一枚ずつ資料へ目を通し、副団長も隣で供述書を確認していた。
少し離れた机では、ノアが巡回記録を広げ、当日の状況を書き留めた報告書と照らし合わせている。
誰一人、無駄な言葉を発しない。
それぞれが、自らの役目を果たしていた。
「団長。」
ノアは巡回記録へ目を落としたまま、口を開く。
「現場にいた者として、一つ気付いたことがございます。」
レオンは資料から顔を上げる。
「言え。」
「はい。」
ノアは記録を一枚めくった。
「私は、事件当日に現場周辺の聞き取りにも加わっておりました。多くの者が、『犯人だったに違いない』と証言しております。」
そこで、一度言葉を切る。
「ですが……。」
静かな執務室に、紙をめくる音だけが響く。
「誰一人として、その人物が横領した瞬間を目撃した者はおりませんでした。」
副団長が顔を上げる。
「……なるほど。」
ノアは静かに頷く。
「証言の多くは、犯行そのものではなく、その前後の行動を見たというものでした。」
「つまり。」
レオンが短く問う。
「決定的な証言はない、と。」
「はい。」
ノアは、真っ直ぐレオンを見つめた。
「状況を積み重ねれば、一人の人物へ疑いが向かいます。ですが、その決め手となる証言だけが見当たらないのです。」
副団長は供述書へもう一度目を落とした。
「状況証拠だけで事件が動くことは、決して珍しくはありません。」
静かな口調だった。
「ですが、そのような事件ほど、後になって新たな証言が出ることもございます。」
ノアは頷く。
「私も、その可能性はあるかと。」
レオンは二人の言葉を黙って聞いていた。
やがて、机上へ視線を落とす。
「証拠とは。」
静かな声が執務室に響く。
「人を裁くために集めるものではない。」
副団長とノアが、顔を上げる。
「真実を明らかにするためにある。」
短い言葉だった。
だが、その一言には騎士団長としての信念が込められていた。
副団長は静かに頷く。
「……その通りです。」
レオンは、事件資料を一枚めくる。
「思い込みが証拠を作ることもある。だからこそ。」
一度、言葉を切った。
「私たちは、証拠に思い込まされてはならない。」
執務室に再び、静寂が訪れる。
ノアは改めて巡回記録へ、目を落とした。
副団長も供述書をめくり始める。
それぞれが、それぞれの役目を果たすために。
副団長は供述書へもう一度目を落とした。
「状況証拠だけで事件が動くことは、決して珍しくはありません。」
静かな口調だった。
「ですが、そのような事件ほど、後になって新たな証言が出ることもございます。」
ノアは静かに頷く。
「私も、その可能性はあるかと。」
レオンは二人の言葉を黙って聞いていた。
やがて、机上の資料へ視線を落とす。
「証拠とは。」
静かな声が執務室に響く。
「人を裁くために集めるものではない。」
副団長とノアが顔を上げる。
「真実を明らかにするためにある。」
短い言葉だった。
だが、その一言には騎士団長としての揺るぎない信念が込められていた。
副団長は静かに頷く。
「……その通りです。」
レオンは事件資料を一枚めくる。
「思い込みが証拠を作ることもある。」
一度言葉を切った。
「だからこそ、私たちは証拠に思い込まされてはならない。」
執務室に再び静寂が訪れる。
三人は、それぞれの資料へ視線を落とした。
紙をめくる音だけが、静かに響いている。
しばらくして――。
「団長。」
副団長が一枚の供述書を手にしたまま口を開く。
「一つ、気になる点がございます。」
レオンは視線だけを向けた。
「言ってみろ。」
「証言者同士に接点は確認されておりません。」
副団長は供述書を見比べながら続ける。
「にもかかわらず、証言の中に同じ表現がいくつか見受けられます。」
ノアも巡回記録から顔を上げた。
「偶然……でしょうか。」
副団長は小さく首を振る。
「断定はできん。」
そう答えたのはレオンだった。
供述書へ目を落としたまま、静かに続ける。
「だが、見過ごすには小さくない。」
レオンはその供述書へ印を付けた。
「ここは残しておけ。」
「承知しました。」
副団長は頷き、供述書を丁寧にまとめる。
ノアも巡回記録を閉じた。
「私も現場をもう一度確認いたします。」
「ああ。」
レオンは短く頷いた。
「思い込みを捨てて見直せ。」
「はっ。」
ノアは力強く返事をする。
レオンは静かに事件資料を閉じた。
「まだ足りない。」
誰に向けた言葉でもなかった。
だが、その一言に、副団長もノアも小さく頷く。
真実へ辿り着くには、まだ欠けているものがある。
三人は、それぞれの役目を胸に、再び資料へ向き合った。




