第十二話 帰り道
食堂をあとにすると、レオンはゆっくりと、歩き始めた。
「ご案内できる場所は、この辺りまででしょうか。」
リシェルは歩みを止めることなく、穏やかに微笑む。
「本日は貴重なお時間を、ありがとうございました。騎士団は、戦う方々の場所という印象しかありませんでした。ですが、今日一日で、その印象が大きく変わりました。」
レオンは、静かに耳を傾ける。
「皆様が互いを支え合い、それぞれの役目を大切になさっていることが、よく伝わってまいりました。とても温かな場所なのですね。」
レオンは、少しだけ足を緩めた。
「そう言っていただけると、嬉しく思います。」
短い言葉だった。
けれど、その声音には自然な温もりがあった。
「騎士団は、決して一人では成り立ちません。互いを信じ、支え合うことが何より大切です。」
リシェルは、静かに頷く。
「それは、伯爵家も同じですね。家族だけではなく、執事や侍女、料理人や庭師……。皆がいるからこその家として、成り立っています。」
レオンは、穏やかに微笑んだ。
「やはり、リシェル嬢と私は考え方がよく似ています。」
リシェルは、少し照れたように微笑んだ。
「光栄です。」
レオンも小さく頷く。
二人は穏やかな空気のまま、歩みを進めた。
石造りの廊下を抜ける。
窓から差し込む午後の陽射しは、少しだけ傾き始めていた。
やがて、正門が見えてくると、門のそばでは、静かに待っていたマリアが二人に気付き、一礼した。
「お嬢様。」
「待たせてしまったわね。」
リシェルは優しく微笑む。
「待たせてしまいましたね。」
「いいえ。お嬢様が楽しい時間を過ごされたようで、何よりでございます。」
その言葉に、リシェルは少しだけ頬を染めた。
レオンは、そのやり取りを穏やかな表情で見守っている。
門の外では、伯爵家の馬車が静かに待機していた。
リシェルはレオンへ向き直り、優雅にカーテシーをした。
「本日は、本当にありがとうございました。おかげで、騎士団のことをたくさん知ることができました。」
レオンも静かに一礼する。
「こちらこそ、お越しいただきありがとうございました。リシェル嬢にそのようなお言葉をいただけて、私も嬉しく思います。」
リシェルは、穏やかに微笑んだ。
「また、お話を伺える日を楽しみにしております。」
その一言に、レオンはほんの僅かに目を細める。
「ええ。その時は、喜んで。」
午後の柔らかな風が、二人の間を静かに吹き抜けた。




