表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死亡フラグが全部付箋で見えるんですが  作者: 絵宮 芳緒
第三章 忍び寄る影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/41

第十二話 迫られる決断

セドリックは、深く息を吸うと、書斎の扉を軽く叩いた。


「父上、話があります。」


間を置かず、落ち着いた声が返ってくる。


「入りなさい。」


「失礼いたします。」


扉を開けると、侯爵は執務机に向かったまま、一枚の書類へ目を通していた。

顔を上げると、静かにセドリックを見つめる。


「ちょうど、良かった。」


その一言に、セドリックは小さく首を傾げる。


「私からも、お前に話がある。」


侯爵は書類を閉じると、向かいの椅子を静かに示した。


「掛けなさい。」


セドリックは無言で腰を下ろす。

書斎には、重い沈黙だけが流れていた。


侯爵はしばらく息子を見つめていたが、やがて静かに口を開く。


「……お前は今、我が家が置かれている状況を、どこまで理解している。」


セドリックは一瞬、言葉を探すように視線を伏せた。


「婚約解消による影響が出始めていることは、承知しております。」


侯爵は静かに頷く。


「そうか。」


短く返すと、机の上に置かれた書状を一通手に取った。


「では、これを見なさい。」


セドリックは書状を受け取り、ゆっくりと目を通す。


そこには、王都でも名の知れた商会の印章とともに、

『契約条件見直しのお願い』と記されていた。


「これは……。」


「昨日届いたものだ。」


侯爵は、静かに続ける。


「これで三件目になる。」


セドリックは、思わず顔を上げた。


「三件も……。」


「共同事業の延期。出資の見直し。契約条件の再協議…。」


侯爵は、淡々と告げる。


「いずれも、婚約解消とは無関係とは言えまい。」


書斎に、静かな沈黙が流れた。

セドリックは書状を見つめたまま、言葉を失う。

侯爵は、静かに息を吐いた。


「セドリック。私は、お前を責めるつもりはない。」


その言葉に、セドリックはゆっくりと顔を上げる。


「だが、お前には知っておいてもらわねばならん。貴族の婚約とは、本人たちだけのものではない。家と家が築き上げてきた信頼を、結ぶものでもある。その重みを、お前はまだ知らなかった。」


セドリックは、ゆっくりと視線を落とした。


反論はできなかった。


侯爵は静かに息を吐く。


「近いうちに、お前には一つの決断をしてもらう。」


その言葉だけが、重く書斎に残る。


セドリックは、その意味をまだ知らない。


窓の外では、春風が静かに庭木を揺らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ