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死亡フラグが全部付箋で見えるんですが  作者: 絵宮 芳緒
第ニ章 動き出した歯車

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第五話 未来と向き合う

翌朝――。


柔らかな陽射しがカーテンの隙間から差し込み、部屋を優しく照らしていた。


窓の外では、小鳥たちが楽しげにさえずっている。

いつもと変わらない朝。


それなのに、リシェルの胸には昨日起きた出来事が色濃く残っていた。


【三日後 横領が発覚します】


あの一枚の付箋。


目を閉じても、その文字は鮮明に浮かび上がる。


「……。」


静かに身体を起こし、窓辺へ歩み寄る。


朝露に濡れた庭は穏やかで、美しい。

けれど、その景色を眺めても心は晴れなかった。


(付箋は……。)


(恋愛だけではなかった。)


婚約破棄。

破産。

裏切り。

そして、横領。


見える未来に境界はない。

幸せも、不幸も、罪さえも。

ただ静かに、その人の未来として現れる。


(私は……。)


窓ガラスへ映る、自分を見つめる。


(この力と、どう向き合えばいいの。)


答えは、まだ見つからない。

それでも、一つだけ決めたことがあった。


目を逸らさないこと。

見えた未来から、逃げないこと。


リシェルは小さく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。


その時――。


コンコン。

控えめなノックが部屋に響く。


「お嬢様、お目覚めでいらっしゃいますか。」


聞き慣れたマリアの声だった。

リシェルは振り返り、柔らかく微笑む。


「ええ、起きているわ。」


「……。」


静かに身体を起こしたリシェルは、いつものように視線を少しだけ上へ向ける。


【本日 大切な決断をします】


「……大切な決断。」


小さく呟く。


自分の付箋は、その日一日の未来を映す。


けれど、どの出来事を指しているのかまでは分からない。


それでも、昨日までとは違っていた。


以前なら、不安ばかりが胸を占めていた。

今は違う。


未来を恐れるだけではなく、向き合おうとしている自分がいる。


リシェルは静かに立ち上がり、窓辺へ歩み寄った。

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