第35話 休憩ってそういう意味じゃないよ?
生徒会室に入るや否や、風香さんはドアをバタンと閉め俺を見つめる。
「ど、どうかしましたかね?俺の顔に何かついて」
と言ってる最中に俺の両腕を掴み、顔の高さまで上げ、身体ごと俺の腕を壁に押し付ける。
壁ドンである。ここが恋愛漫画の世界であったなら、ドキドキな展開であるが現実は違う。
風香さんはとても怒ったような顔をしている。俺の顔を見つめてくる。こんな美少女に見つめられてドキドキしないはずがない。しかし、今は怖くて目も合わせられないので反射的に目をそらす。このドキドキは恋?それとも恐怖?
「あの、えっと~」
「付き合うの?」
「はい?」
「あの女と付き合うの?」
風香さんはより強い力で俺の腕を掴む。ほんの出来心でちょっと抵抗しようと思ったらさらに強い力で掴まれたので諦めた。
「野々花とはもう付き合わないよ」
そう言うと風香さんは怒った顔からいつもの顔へと戻り、腕を離した。
「分かった!手間取らせてごめんね?ちょっと休もっか!」
「うん。そうするよ」
とりあえず今は怒ってはいないみたいだ。いったい何に怒っていたのだろうか。
「それにしてもすっごい人気だね!宮野君!」
「あはー、ありがとう。風香さんのメイクのおかげだよ」
「えへへ」
他愛のない会話をして、休憩時間を過ごす。
つい先程までは、知らない人(一部を除く)とかわるがわる話していたが、俺の性分にはどうにも合わない。知らない人と話すの、本当は苦手なのに今日は頑張ったんだぞ。
親しい人とゆっくり話す時間が、今の俺には余計に心に沁みる。最高の時間だ。
だが、人生は厳しいもので、そのような時間はそう長くは続かない。
「かなめー、早く仕事に戻れよー。お前への指名が来てるからなー」
悠月が生徒会室にやってきてそう伝えてきた。
また指名か。今度は誰だろうな。そんなことを考えながら仕事へと戻る。
俺のことを待っているお客さんがいるんだ。早く行かなければ。
そう思っていた。そのお客さんが誰なのか知るまでは。
「お待たせしました。かなこです…って、なんでここにいる!来るなって言っただろ!」
「まあまあ、そうカッカしないで。かーくん♡」
「かーくん…?」
「外ではその呼び方するなって言ったよなああ!」
「ウフフ」
そのお客さんは、俺の姉だった。
トレーの落ちる音がした。




