表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宮野君の生徒会ハーレム日常譚  作者: くるみや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/40

第33話 再会

「ほら、落ち込んでいる暇はないぞ。かなこちゃん、出勤のお時間だ」

「誰がかなこちゃんだ」

「キミだよ」


 悠月は満面の笑みを浮かべながら、俺の肩を叩く。


「ちょっと待って。まだ準備が終わってないよ」


 そう言って俺の前に立ったのは風香さんだった。手には化粧道具らしきものが握られている。


「準備って、もう着替えたしこれで終わりじゃないの?」

「全然ダメ!せっかくならちゃんと可愛くしないと!」

「いや、別に可愛くならなくてもいいんだけど」

「ダメなの!」

「お、おう」


 風香さんの迫力に押され、俺は椅子に座らされた。


 風香さんは俺の前髪をピンで留め、顔に何かを塗り始める。目を閉じろと言われたので、されるがままになっておく。


「ところで宮野君」

「ん?」

「さっきの野々花さんって、どんな人なの?」

「どんな人って言われてもなあ」

「どうして付き合ったの?」

「それは今関係ある?」

「参考までに聞いてるだけだよ」


 何の参考にするつもりなのだろうか。


「中学の生徒会で一緒だったんだよ。悠月の友達だったから、三人でいることが多くてさ。その流れで仲良くなって、向こうから告白されて付き合った」


「向こうから…」


 顔に何かを塗る手が一瞬止まる。


「どれくらい付き合ってたの?」

「一年くらいかな。卒業と同時に別れた」

「一年も…」

「風香さん?」

「なんでもないよー。じゃあ目を開けて!」


 言われた通りに目を開く。目の前に置かれた鏡には、見慣れない女子生徒が映っていた。


「誰?」

「宮野君だよ」

「まさか」


 化粧の力とは恐ろしい。もともと衣装が似合っているとは思っていたが、髪型や顔まで整えられると、遠目では本当に女子に見えなくもない。


「すごいですわね。どこからどう見ても女の子ですわ」

「かなこちゃんかわいー!」

「写真撮ってもいい?」

「ダメ」

「えー」


 桃さんが残念そうにスマホを下ろす。


「かなこ、準備はできたか?」

「ああ。それやめろ」

「よし。それじゃあ行ってこい、かなこちゃん」

「だからその呼び方やめろって」


 俺は黒服役の先輩に案内され、生徒会室の隣の特別教室を改造して作られた店内へと入る。


 想像以上に本格的な内装だ。窓は暗幕で覆われ、机には綺麗な布が敷かれている。教室の隅には光る装飾まで置かれていた。高校の文化祭のクオリティとは思えないほど良く出来ている。


「新人入りまーす!」


 黒服役の先輩がそう言うと、店内にいる客達の視線が一斉に俺へ向けられた。帰りたい。


「初めましてー。かなこでーす」


 恥ずかしさを押し殺しながら挨拶する。


 数秒の沈黙が起きる。


 そして。


「かわいい!」

「マジで男子なの?」

「声聞くまで普通に女子だと思った!」


 店内が一気にざわつき始める。どうやら悪い意味での悲鳴は起きなかったらしい。ひとまず安心だ。


「かなこちゃん、こちらのお客様をお願いします」

「はいはーい」


 黒服役の先輩に案内され、俺は二年生らしき女子生徒の前へ座る。


「よろしくね、かなこちゃん」

「よろしくお願いします」

「ねえ、本当に男の子なの?」

「い、一応」

「へえー。顔かわいいね。普通に負けた気がする」

「まさか、化粧のおかげですよ」


 冗談がお上手な先輩だな。


「彼女いるの?」

「今はいないです」

「好きな人は?」

「特にいないですね」

「じゃあ私が彼女に立候補しちゃおうかな」

「五分でそういう話まで進むんですか?」

「あはは!面白いね、かなこちゃん」


 俺の想像していたキャバクラとは少し違う気がするが、会話はそこそこ盛り上がった。


 その後も客は途切れず、俺は様々な人と話し続けた。


 俺が男だという珍しさからなのか、かなりの人が興味を持ってくれる。中にはわざわざ指名料を払って俺を指名する人までいた。


「かなこちゃん、チェキお願いしまーす」

「うぃーす」

「人気者だねえ、かなこちゃん」

「ははは、はぁ」


 黒服役の先輩にからかわれながら、何度目か分からない写真を撮る。最初は恥ずかしかったが、ここまで来ると少し楽しくなってきた。ハイになってるのかもな。


 売り上げ上位には景品があると言っていたな。こうなったら一位を狙ってやる。


「かなこちゃん、次のお客様でーす」

「うぃーす。いらっしゃいま――」


 新しく入ってきた客の顔を見て、俺は言葉を失った。


「久しぶり、かなめ」


 肩まで伸びた茶色がかった髪。何を考えているか分からない笑顔。あの時から変わらない。


「野々花…」

「へえ。今はかなこちゃんっていうんだ。久しぶりだね、その格好。似合ってる。」

「頼むから思い出させないでくれ」


 悠月が持っている俺の黒歴史写真。


 その正体は、中学三年の文化祭で女装させられた俺の写真である。


 生徒会の企画で衣装を着る人が足りなくなり、悠月と野々花に無理やり着替えさせられたのだ。


「指名、かなこちゃんでお願いします」

「指名しなくても空いてるけど」

「いいじゃん。売り上げになるんでしょ?」

「そうだけどさ」


 野々花は指名料を払い、俺の前の席へ座った。


「ドリンク三杯。それからチェキもお願いします」

「お前、金の使い方大丈夫か?」

「久しぶりに会ったかなめくんへのご祝儀」

「そんなご祝儀はいらん」

「相変わらずだね、かなめくんは」

「野々花もな」


 注文された飲み物が運ばれてくる。トレーの飲み物を載せて持ってきた風香さんは、野々花の顔をじっと見つめていた。


「ご注文の品です」

「ありがとう。あなたが西園寺風香さん?」

「どうして私の名前を?」

「悠月から聞いたの。かなめと仲良くしてくれてる子がいるって」

「仲良く…えへへ」

「風香さん、今は仕事中だぞ」

「あっ、そうだった!ごゆっくりどうぞ!」


 風香さんは一度離れようとしたが、近くの机を拭き始めた。


 その机、さっきも拭いてなかった?


「可愛い子だね」

「そうだな」

「かなめくん、あの子のこと好きなの?」

「なんでそうなるんだよ」

「顔が少し嬉しそうだったから」

「気のせいだ」

「ふーん」


 野々花は飲み物を一口飲むと、俺の顔をまっすぐ見つめた。


「彼女、できた?」

「いないよ」

「好きな人は?」

「それもいない」

「じゃあさ」


 野々花は少しだけ笑みを消す。


「私と、もう一回付き合わない?」


 近くでトレーの落ちる音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ