第32話 衣装
「おーいゆづきー、来たぞー」
「待っていたぞ。風香ちゃんも一緒かい?」
「ああ。電話が掛かってきたときに一緒にいたから、流れでついてきてもらったんだ」
「人ではいくらあってもいいからな。それより、本題に入ろう。はい、これを」
そう言って悠月は俺に袋を渡してくる。
「なんだこれ?」
「かなめの分の衣装だ。急だが今から嬢として入ってくれ」
本当に急である。本来、俺が嬢になるのは明日のはずだ。
「どうして急に?」
「私は今日、嬢として入る予定だったんだが、発注ミスで私の分の衣装が届かなかったんだ。それで、かわりにかなめに出てもらおうと」
「ふむ。ちなみに断ったら」
と言ったところで、悠月が「アレ」をちらつかせてきたため、それ以上は何も言わなかった。
「とりあえず着替えてみてくれ」
渋々着替えることにしたが、俺がこんなの着て大丈夫なのだろうか。俺みたいなフツメンが女装だなんていつ悲鳴が起きてもおかしくない。そう思っていたのだが。
「おお…意外とイケるな」
鏡に映る衣装を着た自分を見て思わずそう言ってしまった。自分で言うのもあれだが意外と似合っていると思う。
「そろそろ着替え終わったかー」
「はいはーい。今行くぞ」
みんなは俺のこの姿を見てどう思うだろうか。キモイとか言われたら傷ついちゃうな。
「どうだい?女の子姿の俺は」
「おお、意外と似合ってんじゃん」
「宮野君かわいいー!」
「すごく似合ってると思いますよ」
「その姿の宮野君も…イイ…」
「とってもお似合いですわ」
みんな褒めてくれたぜ。やったね。
「みんなも似合っていると思うよ。桃さん・陽子さん・谷口さんそれぞれの良さが出てて良いよ。可愛い」
「えへ、ありがと!」
「…ありがとうございます」
「お世辞でもあなたに褒められるのは気分がいいですわね」
「お世辞なんかじゃないよ。俺の本心さ」
これは事実である。俺は思ったことを口にしたまでだ。良いと思たものは良いとはっきり伝えたほうが良いに決まっている。
「ほう…そうやって野々花を落としたのか」
「悠月お前、その話はやめろ」
「野々花って誰?」
「かなめの元カノで私の友達」
「な、なんだって…」
「ええー!宮野君って彼女いたのー!?」
「初耳ですね」
「あら、どんな女性か気になりますわね」
「学園祭来るって言ってたからキャバクラ来るよう言っとくわ」
「ほんとー!気になるなー」
「マジかよ…」
俺がみんなに隠していたことを悠月にあっさりバラされてしまった。あーめんどくさーい。
「良かったな。また野々花に会えて」
「もう二度と会いたくなかったよ。めんどくさい」
「向こうはそうでもなさそうな感じだけどね」
「そうかよ」
俺の上がった気分が一気に急降下した。




