第2話 顔合わせ
現在時刻朝の六時半。俺は家の近くの公園でランニングをしている。これは中学時代からの日課である。バスケ部に所属していた俺は、体力づくりのため朝練のない日はこうしてランニングをしていた。
高校では運動部に入るつもりはない。理由は、勉強と運動部の両立が出来るか不安だからだ。だが、まったく運動しないのも良くないと思い高校生になってもランニングを続けている。
ランニングを終えて、シャワーを浴び、朝ご飯を食べ、制服に着替え、自転車を漕ぎ、学校へと向かう。ちょっと早く着いてしまったみたいなので教室で音楽でも聴こうと思いながら階段を上り、教室に向かうと、先客がいた。
「あ、宮野君だ!おはよー!」
西園寺さんが既に教室に居た。
「おはよう、西園寺さん。早いね」
「宮野君こそどうしてこんな早い時間に?」
「たまたまだよ。西園寺さんは?」
「私は電車通学なの。もう一本遅いのもあるんだけど、始業時間ギリギリになっちゃうんだよね。だから、ちょっと早いけどこの時間に来ることにしてるの」
電車通学ならではの悩みだな。そういうのは実際に登校してみないと分からないから大変だ。
「それは大変そうだね」
「全然そんなことないよ!朝早く来てもやることないから勉強しようって思えるんだよ」
「それは良いかもね」
「うん!」
ポジティブな子である。俺も少し勉強しようかなと、イヤホンをつけながら思う。
十五分程時間が経ったところで、続々と生徒が登校してきた。
そして、八時半、始業の鐘が鳴る。担任がやってきて朝のSHRを始める。
今日から授業が始まる。高校の勉強は、中学の比ではないと聞くため少し不安になりながらも何とか午前の授業を終え、昼休みを迎える。コンビニで買ったおにぎりとパンを頬張っていると、スマホに一件の通知が届く。ふむ。どうやら今日の放課後に、生徒会の先輩方との顔合わせがあるらしい。どんな人達がいるのかワクワクしながら午後の授業を終える。
放課後になり、顔合わせに向かおうとしたが、俺はあることに気づいた。場所が送られてきていないのである。どこに行けばよいか困ったものだ。とりあえず生徒会室に行こうと思ったら。
「「おーい!みやのくーん!」」
「かなめー」
俺の名前を呼ぶ女子の声が聞こえ振り向くと、そこには悠月と、、昨日生徒会室にいた人達だろうか、名前の知らない女子二人が俺のことを呼んでいた。
「はーい、って悠月と隣のお二人さん、どうしました?」
「今日の生徒会の顔合わせの場所、知ってる?」
「分かんないからとりあえず生徒会室行こうとしてたとこ」
「やっぱり知らないよね。二人とも、とりあえずこいつについて行こっか」
「うんうん」
「そうしよー」
何がやっぱりだよ。聞きに来たくせに。横の二人は昨日LINE交換したはずだけど、どれだろう。
「その前に、お二人の名前は?」
「アタシは一年五組の和泉桃!こっちはアタシと同じクラスの深雪陽子ちゃん。よろしくね!」
「五組の深雪陽子です。よろしくね宮野君」
そうだったそうだった。
「よろしくね。和泉さん、深雪さん」
「桃でいいよー!」
「私はなんでも構わないよ」
「うーん、じゃあ名前で呼ぶね。桃さん、陽子さん」
「まあいいでしょーう」
そう話していると後ろからものすごい視線を感じた。クラスの男子からの羨望の眼差しもさることながら、一人ものすごく見つめてくる。視線が痛い。その人物は俺達のほうにやってきて。
「今日の顔合わせは大講義室でやるそうですよ、宮野クン」
「そ、そうなんだ。ありがとう西園寺さん」
「全然いいよー」
私が近くにいたんだから先に私に聞きなさいよ、と小声で聞こえた気がしたが聞こえなかったことにした。
こうして俺、悠月、桃さん、陽子さん、西園寺さんの五人で大講義室まで向かった。道中での西園寺さんの視線も痛かった。
大講義室に着き、少し覗いてみると、多くの先輩方が既に座っていた。俺達もすぐに席に着いて顔合わせが始まるのを待つ。全員がそろったところで後藤先生が話し始めた。
「全員集まったな。今から顔合わせを始めるが、私はこれから会議があるから、後は会長に引き継ぐ。よろしくな」
そう言って後藤先生は大講義室を後にした。忙しい先生なんだなと思っていると
「ではここからは私が進行を務めます。生徒会長の橘颯太だ。1年生の皆さん、初めまして。よろしく」
さすが生徒会長といったところか。とてつもない威厳を感じる。非常にかっこいい人だ。
「さて、まずは先輩達から自己紹介していこうかな」
そう生徒会長が言うと、端から先輩方が自己紹介をし始めた。先輩方の自己紹介に続いて俺達一年生も自己紹介をした。その後、この学校の生徒会についての話を聞いた。どうやら、この学校の生徒会は、「局」というグループが存在し、その局ごとに仕事が割り振られ、大きな行事の時は局を跨いで活動するらしい。
今日はその局決めまでやるそうだ。局は、文化局、会計局、体育局、特別局の四つがあるそうだ。実態の分からないものが多いが会計局はそんなに普段の仕事がなさそうだし、会計局にしようと思う。
「じゃあ、文化局が良い人、挙手してー。お、そこの二人で決まりだね」
手を挙げたのは桃さんと陽子さんだ。
「次に、会計局が良い人、挙手ー。じゃあ、これもそこの二人で決まり」
もう一人は誰だろうと周りを見ていると
「宮野君!一緒に会計局頑張ろうねー!」
西園寺さんがそう言ってきた。どうやらもう一人は西園寺さんだったみたいだ。全然知らない人じゃなくて良かった。
「うん、そうだね。西園寺さん」
「むう、、、」
「ん?どうしたの西園寺さん」
「和泉ちゃんと深雪ちゃんは名前なのに、どうして先に仲良くなった私は苗字なのかなあ」
「さ、西園寺さんも名前で呼んだほうが、良い?」
そう聞いたが、こちらを見つめてくるだけで返答はない。
「な、名前で呼ぶよ、風香さん」
「えへへ、ありがとっ、宮野君」
先ほどからの痛い視線はそういうことだったのか。難しいなあ西園寺、、じゃなくて風香さんは。
そうこうしているうちに顔合わせも終わりに時間となった。
「生徒会役員は生徒会室は基本自由に使っていいからね。と言っても私達二、三年はちょっと距離あるから一年しか使わないけどね」
ほう。生徒会室は自由に使っていいのか。こっそり昼寝でもしに行こうか。
「じゃあこれで顔合わせは終わり。解散ー」
会長がそう言うと先輩方はぞろぞろと大講義室を後にした。俺も帰ろう。
「宮野君、またね!」
「また明日。風香さん」
まだ慣れない呼び方で風香さんに別れを告げ、俺は帰宅の途についた。
***
―――西園寺風香視点
やっと見つけた、私の王子様。
ありとあらゆる手を使って、彼がこの学校に入学するという情報を手に入れた。その情報を基に私もこの学校に来たけど、本当に彼も来ていたなんて。しかも、隣の席。これって運命?
彼は絶対に私のモノにするの。他の誰にも渡さないんだから。




