ちょっとした真実と魔法使い 2
……?
あ、れ?
眼を開けると、真っ暗だった。
なぜに?
私、きちんと目を開けてるよね?
「どこ、ここ……」
どこも何も、見えないためなにもわからない。
夜だって、もっと明るいはずだが。
「誰か、いない……?」
誰もいなそうだ。
「えっと……」
なんでこんな所にいるんだ?
「ほんと、誰かいない?!」
「オレがいる」
「ふぇっ。こ、こじろうっ」
突如、すぐ横で聞こえてきた声に驚いて思わず声を上げる。
よ、よかった……って、なんで小時朗がここにいるの?!
「なんだか、意味無かったみてぇだな」
「そ、そうだね」
少しずつ、思い出して来る。小時朗を影から見て居たら、後ろから襲われたのだ。
あいつらには、全部お見通しだったようだ。
「そう言えば、プシュケは?」
「あ。いや、オレは見てねえけど」
「そっか……」
やっぱり、見つかって捕まっちゃったのかな。
「もう、どうすればいいんだろ……そもそも、ここどこ?」
プシュケはいないし、辺りは真っ暗。小時朗がここのことを知るはずも無く、どうすればいいのかまったく分からない。
そんな時だった。
「お、お、お、恐れ入りますが、わ、わたくしがいかようにかできますよ?」
「へ?」
声?
どこ?
だれ?
いや、なんで懐から声が――
盛大に混乱をしていると、さらに不可解なことが起きる。
「お、おい、お前、なに持ってんだ?」
「え? そ、その……扇?」
さっき、拾った扇?
その扇が、光ってる?
「だ、誰?」
「お呼びですか? ご主人さまっ」
「きゃあっ?!」
光っている扇から何かが飛びだした。
「な、な、な……」
ナイトキャップをかぶった、薄い黄緑の天然ゆるほわロングの髪に蒼の瞳。
和服のようなものを着た、なんだか不思議な少女。
因みに、手のひらサイズで、発光している。
そのおかげで、ここがなんだかようやくわかった。
檻だ。
檻の中に、私達は捕まっていた。
「お呼びですか? ご主人さまっ」
えっと、魔法のランプ系のヒト?
まさか、扇から出て来るとは思わなかった。どういうことだ。普通ランプとかじゃないのか。
「だ、れ?」
「わたくし、ふうりともうしますっ」
正座をしてそれはそれは丁寧に頭を下げて来る。
ふうり? 聞いたことがない名前だ。
「風に瑠璃玻璃の璃で、風璃ともうします」
「あ、あの……ご、ご主人さまって?」
「ご主人さまは、ご主人さまです。わたくし、音川家に代々伝わる神器ですっ!」
「じんき?」
なにそれ?
頭にクエスチョンマークが浮き上がる。そんな横で、小時朗の目が輝きはじめていた。
「じんきって、神器?」
「ちょっと、コジロウ知ってるの?」
「いや、神器って、よく神が人に渡した伝説の武器とか、神が宿ってる鏡とか言わないか?」
言ったとしても、そんな知識私には無い!
「その神器ですっ」
「そうなのっ?!」
え、ちょっとまって、じゃあこの子って?
「ふうりは、神器に宿っている精霊です」
お、おう。
よく解らない。
「……久方ぶりの、巫女様。貴方を主として認めましょう。さあ、契約をっ」
「い、嫌です」
「な、なんでですっ?!」
「な、なんとなく?」
「がああん!!」
大きさがミニマムだとか、動きが小動物系だからだろうか。いちいち反応が面白い。
だが、契約とかよく解らないことはしないぞ。契約書も無しで契約するのは絶対にダメだとお母さんからよく言われている。
「うぅ。わたくしを認めて下さらないなんて……」
「……」
ほんとになんだろう。
「でもよ、この状態どうにかできんだろ?」
「なんですか貴様。まあ、いいですけど。ふうりは神器。ご主人さまの魔法を補助することができます」
「そんだけか」
「でも私、魔法使えないけど?」
補助するんじゃ意味なくない?
「がああん!! じゃ、じゃあ、ふうりは必要なかったっ?!」
「ちょっとまて。いや、お前、使えるかもっ」
「貴様っ、ふうりをお前と呼びやがった!!」
なぜか怒っている風璃の横で、小時朗が言った。
「お前、この檻の外へでられるだろ。それで、外に行って何かないか見て来い」
確かに、この鉄格子の間を、ちっちゃい風璃なら出入りできるだろう。
「なんで貴様に言われないといけないんです」
「じゃあ、音川からのお願いって事で」
「はいっ。もちろん、ご主人様のお願いとあらばっ、誠心誠意、やらせていただきますっ」
うん、扱いやすい子だ。
「音川もそれでいいよな?」
「うん」
なんだか、小時朗に任せておいた方がいい気がする。
「ではっ。ふうり、行ってまいりますっ」
敬礼すると、風璃は檻の外へと歩いていく。
「飛べないんだ」
「ご、ご主人さまは飛んで欲しいのですかっ?!」
「あ、い、いや。セイレンさんは飛んでたから」
すると突如、風璃が目を潤ませる。
「えっと、どうしたの?」
「い、いえっ。なんでもござーせん!! 風の精霊のくせして飛べないと哀しいとかそういう訳じゃないです!」
「なんかごめん」
どうやら発言がクリティカルヒットしてしまったようだ。
光源だった風璃が行ってしまったので、暗くなる。
近くで、小時朗の呼吸音が聞こえる。
そういえば、こんな所で二人っきりだ。
……だからと言って、何も無いけど。
「なんだか、すげえな」
「なにが?」
「やっぱり、魔法って在るんだな。いまのフウリとか言うのとか、ランロウとかいうのとか。精霊って、ほんとにいるんだな」
「そう、だね」
たしかに、私は魔法なんてありえないと思ってた。
精霊なんて存在する訳が無いと思ってた。
でも、本当は魔法も精霊も、神も魔物も、ありえないと思ってた物すべてが本当にあった。
「この世界って、どれくらいのものが普通に生きる人達に隠されてんだろうな」
「さあ?」
私達は、無知だった。
「ご主人さま~。見てきましたよっ」
そうはしゃぎながら、風璃は戻ってきた。
よかった。
あの様子じゃ、なんだか立て直したみたい。
「えっとですね。あそこを真っすぐ行くと、角があって。角を曲がると、階段がありました!」
「ふむふむ」
きちんと見てきたみたい。
「えっと、階段を上がると、扉がありました!」
「ふむふむ。で?」
「重くて、開けられませんでした!」
「……」
そうだったね。
うん。
小さいもんね。
「ありがとう、フウリ」
申し訳ないが棒読みで告げる。
「いえいえ。ご主人さまの為なら、なんのそのですっ」
嬉しそうに、風璃は笑った。
良い子だ。でも、まだ私はご主人さまじゃないぞ。
「で、どうしようか、コジロウ」
「どうするか……」
また、一から出直しだ。
「じゃ、じゃあ、ご主人さまが今、この檻を壊してしまえばいいんじゃないですか?」
「いや、無理だって」
無理無理。
私、魔法なんて使えないし、怪力じゃないし!
「風でスパッと切ってしまえばいいじゃないですか!」
「いや、だって魔法使えないし、そんな、風で鉄を斬れるわけ無いでしょ!」
「斬れます! だって、ご主人さまは素晴らしい風術師です! これくらい、なんでもありません!」
「……」
いや、だから、魔法使えないんだって。
「やってみればいいじゃねえか」
「え?」
こ、小時朗?
「とにかく、試してみようぜ?」
「で、でも……」
「ご主人さまは魔法を使えないと言ってますが、そんなことありません! だって、昨日だってあそこまで素晴らしい風を起こしていたじゃないですか!!」
「いや、だってあれはよくわかんないうちになってたし」
昨日のこと、なんで知ってんの?
そんな私と風璃を、小時朗は無言で見ていた。
「……お前、なんでそんなに魔法を使えないって言うんだ?」
「え?」
「なんだかんだで、いろいろ否定してただろ、お前」
「……そ、それは」
だって、考えられないのだ。
「……」
「お前、魔法使いになるんだろ? やってみろよ、いきなり本番だけど」
「……で、でも」
できない、そんなこと。
そんな思いがずっと心を廻っている。
「ご主人さま、試すだけでもやってみませんか?」
「……」
二人が、私を見てくる。
「……あーっ、もう! わかった! やればいいんでしょ、やれば!」
「さっすが、ご主人さまっ!」
「で、どうすんの? ほんとに、魔法なんて全然知らないんだからね!」
「はいっ。では、僭越ながら、ふうりがご説明しますね。あのですね、『魔法』は自らの『魔力』を、在る『手順』を持って形にすることで、魔法となるのです」
「……は?」
「つまりですね、例えば氷。水と言う『魔力』を、冷蔵庫に入れて冷やすという『手順』と『過程』を持って、氷という『魔法』にする」
「……」
わ、わかったようなわからなかったような?
「でも、今回はそんな小難しい事をしても時間の無駄なので、その中の『手順』をすっとばします」
「え、いいの?」
「はい。だって、水を氷にするなら、冷えた場所なら何処でもいいじゃないですか。例えば、水を北極とかに持って行けば簡単に凍りますし!」
「ち、力技すぎない?」
むちゃくちゃじゃないですか。
「でも、その力技を出来るのが、ご主人さまなんです」
「……どういう事?」
「ご主人さまは、神器に認められるほどの力を持っているのですから!」
そう、ですか。
いやいや、説明になってませんよ、それ!
「それで……どうすればいいの?」
「風に命じてください。斬れって」
「……」
命令すんの?
え、それだけ?
それだけっすかっ?!
「それがきちんと斬れるように、ふうりがアシストさせていただきます」
「わ、わかった……」
ああ、もうどうにでもなれ!
「き、斬れ、斬ってしまえ!!」
――……。
「ご、ご主人さま……やりすぎです」
「……うん。後悔してる」
目の前に広がるのは、切り裂かれて閉じ込める意味が無くなった鉄格子と、前には抉り取られたような壁の傷跡があった。
辺りに、鉄格子の破片が散らばっている。
なぜにこうなったのか、良く解らない。とりあえず、やりすぎらしい。なにをやりすぎたのかすらすわからないのだが、どうすればいいのだろうか。
「お前……」
「う……」
小時朗に、めっちゃみられてる。
「す、」
「す?」
「すげええっ!!」
「……」
嗚呼、そうだった。
この人、魔法大好きな人だった。
「お前、本当に魔法使いなんだな!」
ちょっとまて。
これまで私をなんだと思ってたんだ。
「それよりも、かなり音がしたので誰かが見にくるかもしれません!」
「あ、そうだね」
よし、行こう。
「シンリを探さないと」
探して、ここから逃げないと。
一番の問題はここが何処で、本当に心麗がここにいるかなんだけども。
聖フィンドルベーテアルフォンソ神国。
そこから、発生した国は三つ。
新フィンドル王国。
ベーティルド神国。
アルフォンソ国。
三つの国は、互いに協力し合い、良好な関係を保っている。
そんな国の中で、特に環境保全に力を入れているのが新フィンドル王国。
昨今の環境問題を論じ、国王自ら植栽をするなど、国を挙げてのプロジェクトとしている。
魔法使い連盟とも協力をし、魔法生物――つまりは伝説、もしくは仮想の生物達の為の保護環境地の提供をしている。
「フィンドルの国のほうにある昔の刑務所に潜伏……ですか。ふむふむ。フェイク君! 今回は人の命がかかってます! がんばって行きましょう!」
そう拳を上げたのは、そろそろ成人らしき少女だ。夢祓い師と呼ばれる魔法使いである。まだまだ幼さの残る女性だ。
最近の魔法使いにしては珍しく、とある大精霊であるフェイクと契約した精霊使いでもある。
そんなラムの様子に、フェイクはため息をついた。
「ラムは頑張らないほうがいい結果出せると思いますが」
「ど、どういう意味ですか?!」
「そのままの意味です」
青年の姿を模した精霊。
本当の姿は違うらしいのだが、なぜかこの姿を好んでとっている。なんでも、本性に戻ると百人ほどに分裂するらしいが、さすがに百人もいると……気持ち悪い。というか、邪魔だということでこの青年の姿をとっているとか。
「ほら、フェイク君。そろそろ目的地ですよ」
「でも、他の人は?」
「現地集合らしいです。じゃあ、行きますよ」
そういうと、二人は空の上から見下ろす。そこには、森に囲まれた廃墟があった。
久しぶりに投稿しました。
本当は先まで書いてあるのですが、いろいろ直しているうちに話が違う方向に……。




