表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/36

少女は王都へ


 夜に目を覚ませば自分の部屋だった。

 フェイは大いに怒られた。そして絶対安静を言い渡される。

 糊のような麦粥再び。早くも白パンとスープが恋しくなった。


 話を聞くと今回も怪我人の治療が大変だったらしい。それと血に塗れ気絶したフェイが運び込まれた際に、アラキナが凄まじく叫んだと言われた。

 オーソンいわく『ありゃ動物を絞めるときの声だ』とのこと。

 テューダーからはグリッヒダートの森についても知らされた。

 騎士団が捜索したところ、森に化け物の姿は確認できなかったそうだ。


 肩も怪我してしまったので裁縫もできず、フェイは暇を持てあます。

 暇な日々を過ごすフェイに、テューダーが尋ねてきた。

 陛下からのお言葉があるらしく、召集命令があったとテューダーが教えてくれた。

 自分が迷惑をかけたのではないかと危惧する。


「逆だよ、むしろ褒めてくださる。実はフェイにも来るように伝えられているから、怪我が治ったら一緒に行こうか。

 ああ、それともう一つ。陛下がフェイの短剣を見てみたいと仰っていたとのことなので、しばらくのあいだ借りてもいいかい?」

「構いません」



 怪我が治った。周りの人に言ったが信じてもらえなかった。

 フェイ自身十日もせずに治るとは思っていなかったのだ。だが腕は動くし歩くこともでき、傷も綺麗に消えている。

 久々に体を動かせばとても軽かっが療養生活は続いた。


 暇なのでこっそり裁縫道具と、材料一式を持ち出しっていると取りあげられた。ひどい。フェイはそう思った。

 しかたなく窓から見え近くにある木、その葉を数えるがすぐに飽きてしまう。

 ベッドの上で足をバタつかせるが意味はない。暇だ、なんて暇なのだ。そう思う日々が続いた。


 そうして月日は流れ季節は冬。

 空は灰色で鈍く、日の光がとぼしくなっている。

 テューダーがフェイの部屋へと来たのは、そんな日だった。


「フェイ、陛下へお伝えした日時まで残りわずかになってしまった。まだ怪我がつらいかもしれないが、王都へ向かいたいと思う。

 もし無理ならば怪我の状態をご報告し、フェイの面会を免除していただくか、期日を延ばしていただけないか、おうかがいを立てることになる」

「行きます」

「大丈夫なのかい?」

「大丈夫です」

「そうか、だがあまり無理はしないように。明後日にここを出立するよ」


 フェイはこの暇な生活から開放されることを喜んでいた。初めての王都、話に聞くだけだったのでとても楽しみにしていた。



 出立の日。

 久しぶりにお風呂に入ったフェイはご機嫌だった。

 寒い中、お湯を布に染み込ませ体を拭くのはつらかったからだ。

 玄関へ向かう。テューダーが手配した馬車に乗り王都へと出発した。


 王都はテューダー領に隣接しており距離も近い。二日も走れば王都へと着いてしまった。

 王都には周りを囲む大城壁があり、門が八つある。

 その内のひとつに馬車は向かうが、門の前には長い行列があった。


「すごい大きな城壁ですね! それに門、でしょうか? 長い行列があります」

「そういえばフェイは来るのが初めてだったかな?」

「はい、すごく楽しみにしてました」

「そうか、なら中に入ったらもっと驚くかもしれないね」

「そうなのですか? とても楽しみです。でも、人の列が長いので中に入るのには時間がかかりそうです……」

「それは大丈夫。貴族用の門から入るから待ち時間はないよ。これでも一応貴族だからね」


 その貴族用の門に向かえば兵がいた。簡単なやり取りのあとに門を通される。

 城壁の中に入ると建物が目に入った。石造りを基本としたものが数多くあり、建物からは棒が張り出している。その棒からは布が垂れ下がり、道の奥まで続いていた。

 その先にはまた壁があり、城の一部が見えている。


「すごい、こんなにたくさんの建物見たことがないです! それに一番奥にあるのはお城ですか!?」

「そうだよ、これから私たちが行くところだ。城には国王陛下が住んでおられる」


 褒められると聞いていても、偉い人と会うことにフェイは今から緊張していた。

 馬車がゆっくりと走りはじめる。

 今いる道は王都に八本ある大通りのひとつで、それぞれの門から王都の中心まで続いていた。


 道行く周りにある店はとても綺麗で、フェイは夢中で見ている。テューダー領の街とはまるで違い、その風景に心を躍らせた。

 右を向けば大きな硝子でできた窓があり、見るからに高そうな店だった。

 次に左を見れば、大通りを見下ろせる二階建てのカフェがある。


 そして行きかう人と人。溢れんばかりの波のようで、その喧騒けんそうに圧倒されるばかりだ。

 周りを見ていればいつの間にか、奥の門に着いていた。


「では降りようか」

「ここで降りるのですか?」


 先に飛び降りたテューダーが、フェイを持ちあげ降ろした。


「ここから先は貴族街だからね。流石にこの馬車では入れないよ。面倒だから私はこのまま行きたいのだが」

「わ、わたしなんかが入って大丈夫なのでしょうか……?」

「フェイは陛下から呼び出されているからね。中へ入る正当な理由がある。問題ないよ」


 罰せられないかと心配になるが、大丈夫だと聞きフェイは安心する。

 門の前で待機していた者が気づき、こちらに歩いてくるところだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ