表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/36

森の化け物について


 目を開ければ辺りは明るく、ときおり鳥の鳴き声と木々を凪ぐ風の音が聞こえた。


「おはよう、フェイ。起きたのね」

「おはよう、ございます。アラキナ姉さん」


 昨晩、グリッティと話した内容はアラキナに顔向けできないものだった。

 だからか、フェイはぎこちなく挨拶を返す。そのことを誤魔化すように声をかけた。


「アラキナ姉さんも眠れましたか?」

「昨日よりは眠れたわね」


 アラキナの表情が幾分いくぶんマシになっていたことに、フェイはほっとした。

 だが心配させたことと、これからのことを黙っている罪悪感が身をがしていく。

 そんな沈んだ思いは声をかけられることで途切れてしまう。


「痛みは大丈夫そう? それとお腹空いてない?」

「痛みはないです。お腹は、空いています……」

「わかったわ。何か持ってくるわね」


 アラキナが部屋をあとにし、扉が閉まるとフェイはため息をついた。悪いと思いながらも、アラキナにはもう少しだけ黙っていようと考える。

 戻って来たアラキナの手には、麦粥の入った器があった。消化のよいものをと言われており、これならいいだろうと、オーソンの許可が出たものだった。


 アラキナがフェイを抱き起こし器を手渡す。吹いて冷まそうとしたが、お腹が痛むのでしばらくかき混ぜて待つことにした。

 ドロドロに溶けた麦粥にはあまり食欲がかなかった。冷めたそれをさじですくい口へと運ぶ。

 しかし、ねっとりとしたものが舌に絡みつき、あとに少しだけ塩の味がした。ほとんど味のないのりのようで飲み込みづらく、喉にも絡みついてげんなりする。


 このとき、『ちゃんと食えよ?』という幻聴が聞こえさらに食欲がなくなった。

 もっと食べやすいものにして欲しかったと、心の底からフェイは思う。


「美味しくなかった……?」

「……ねばねばして食べにくいんです……それに味もほとんどしないですし……」

「ご、ごめんなさい……」


 アラキナが呟くようにして謝ったが、フェイには聞こえていなかった。

 やはり食べきれずに半分ほど残してしまう。器を渡すと代わりに水の入ったコップを渡してくれた。こくこくと飲み干せば喉にへばりついた麦粥が洗い流される。


「はふぅ……ありがとう、アラキナ姉さん」


 麦粥から開放され笑顔になり、からのコップを手渡した。それからアラキナがゆっくりと寝かせてくれる。


「じゃあ私はこれを片づけてくるわね」


 扉が閉まれば部屋には静寂がおとずれる。

 そういえば――と、仕事はしなくていいのだろうかとフェイは疑問に思う。

 とはいうものの、早々に暖かな陽気にまぶたが重くなってしまう。押しよせる睡魔には逆らえず、すうっと小さな寝息が立つこととなった。



 翌日の昼過ぎ。

 部屋にはベッドで寝ているフェイ、それにアゼルとジョンがいた。

 アゼルとジョンは椅子に座っているが、片方は別の部屋から持ってきたものだ。


「すみません、こんなところに呼んでしまって……」

「気にするな。俺もこいつもかしこまった場所は苦手なんだ。そうだろう?」

「いや私は――」

「それよりも傷のほうは大丈夫なのか? 軍医からはだいぶ危なかったと伝えられていたぞ」

「はい。まだ痛いですけど大丈夫そうです」

「そいつは良かった」


 アゼルは軽快に笑い飛ばす。


「あの化け物にフェイの譲ちゃんがつぶされたと思ったときは、俺はもう駄目だと思ったもんだが」

「たぶん、わたしが気絶したときですよね」

「それになぜあんな無茶をした?」

「あのときは、アゼルさんに死なないでほしかったんです……なんで、わたしのことを置いていかなかったんですか……?」

「お前は騎士をなんだと思ってやがる……。騎士は、民を守るべき存在なんだぞ」

「ごめんなさい……」

「まぁ、そのことはいい。話があるんだろう? それを聞かせてもらおうか」


 フェイは黒い塊について話していく。動かなくなり体が透けていったこと。そのときは朝だったこと。脈打つ黒い塊だけが空中に残り、最後には消えてしまったことを話した。


「ほう、土煙でよく見えなかったがそんなことがあったのか」

「黒い塊か。話に聞いた心臓のようなものかもしれん。部隊はそれどころではなく、私は見ていなかったが。陛下にご報告したほうが良くはないか?」

「ああ、このことについては持ち帰り検討することにする」

「お願いします……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ