表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/36

後悔と葛藤

更なる評価ありがとうございます。うれしい限りです。


 アゼルは信じられないものを見たかのように、口を開けた状態で固まっていた。フェイがいることは予想外だったが、すぐに笑顔になり手招きをする。

 フェイはその笑みが怒りのサインであると瞬時に理解し首を振る。


 ちょいちょいちょいちょい。

 ぶんぶんぶんぶん。


 ――瞬間、ギリィという荷台のふちを握り潰さんばかりの音が鳴った。

 外を指差されたフェイは抵抗をあきらめ、すごすごと馬車から降りる。


「フェイの譲ちゃん? 何でこんなところにいるのかな?」


 笑顔だが、視線で物が切れそうなほどに目がわっている。


「あ、あぅ……」

「これから死ぬかもしれないところに行くのはわかってんのか」

「はぃ……」

「なんで来た?」


 フェイは鎧を着なかった人が気になり見にきた。アゼルに死なないでほしかったと正直に伝えるか迷った。したがって、やはり誤魔化そうかと思うがいい方法は浮かばない。


「アゼル隊長どうしたんすか。全員準備できてますよってあれ、隊長が仕事場に幼女連れてきグボァ!?」


 アゼルは振り向きもせず、そのひじで部下の鳩尾みぞおちを打ち抜いた。痙攣けいれんし崩れ落ちる。


「はぁぁぁ……何か理由があって来たんだろ。ほら、言ってみろ。時間がない」

「えっと、その……わたし、わたしの所為せいで鎧を着ていない人が死んでしまったらと思って……。それに、アゼルさんにも死んでほしくなくって……」

「馬鹿か、死ぬかもしれないのはここに居るやつら全員が百も承知だぞ。それに、俺に死んでほしくないというのもわからん」


 フェイは一蹴いっしゅうされうなれる。少し考えればわかることだった。

 けれど、置いていかれたくない、あんな思いをするのは嫌だと思うと涙が足元へ流れ落ちる。


「そう、ですよね……やっぱり、ばかなことですよね……」


 なにをしているのだろうか。何かが、変わると思ったのに。溢れる涙は止まらない。


「もう……置いていかないでほしいんです……」


 あのときもっと引き止めていたら、そう思うとやんでも悔やみきれなかった。

 ついてきてしまったのはクリフォードとアゼルが似ているからか。もう、身近な人にいなくなってほしくない。


「何を言ってるんだ。置いていくのは当たり前だろう」

「ちがう、ちがうんです……前に、クリフォードさんが行ったきり戻ってこなかったんです……それとアゼルさんが重なっちゃったんです……」


 アゼルが頭をがしがしとかき、大きいため息をついた。


「そのクリフォードっていう奴はよくわからんが、俺とそいつは違う」


 フェイは泣き止まず、うつむいたままだ。


「あーもうめんどくせぇ、俺は絶対に死なんし死ぬ気もない、これでいいだろう」


 面倒くさそうに言い放つが、フェイは首を振るばかり。


「じゃあどうすりゃいいんだよ……」

「わたしも……つれて、行ってください……」


 顔をあげ、服のすそをつまみ懇願こんがんする。ほほには涙が伝い嗚咽おえつと共にすがりつく。


「本気なのか……? 死ぬかもしれないんだぞ」

「構いません。死ぬより残されるほうが、つらいです……」

「そうかもしれん。だがお前が死んだとき、残される者のことはどうする?」

「ッ……!?」


 考えたこともなかった。いや、考えないようにしていたのか。

 置いていかれるのは嫌だという気持ちと、アラキナたちを悲しませたくないという気持ち、その狭間であえ葛藤かっとうする。


「う、うぅ……」

「はぁぁ、考え無しに来たのか……」

「もうなにもわからないんです……」

「ああもうわかった、わかったから。だから泣くな鬱陶うっとうしい。要は様子を見に行って生き残ればいいんだろ。どうなっても知らんぞ」

「ついて行っても、いいんですか……?」

「いいと言ってるだろう」

「ありがとう、ございます……」

「いいか、絶対に俺のそばを離れるなよ。グレン!」

「はっ!」


 倒れていた人物がすぐさま起きあがり敬礼した。


「当初の予定どおり森へ向かう。音に反応し夜という条件では、まともに指揮ができるのは最初のうちだけだろう。

 格分隊は生き残ることを最優先とし、できうる限りの情報を収集せよ。かつて討伐に向かった騎士と兵が全滅している。用心するに越したことはない」

「はっ、お任せくださいアゼル隊長!」


 かくして、アゼルはフェイを連れ森へ向かうこととなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ