表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/36

少女の思い


 翌日。

 フェイはむくりと起きあがった。あくびを噛みころし服を着がえる。気絶してからはカルディンによって救出され、顔にはひっかき傷があるものの事なきを得た。

 この日はほかの人と一緒につくろうことになった。売れれば屋敷の資金にもなるので、売れそうな飾り布を張りきって作り一日が終わる。



 今日もフェイは飾り布を黙々(もくもく)と作っている。アンナが部屋へ来たのはそんなときだった。


「フェイ、テューダー様からお話があるので来てください」

「今行きます」


 疑問に思いながらも手早く片づけ、アンナの後についていく。何か怒られることをしてしまったのだろうか。


「大丈夫よ、ちょっとした事前連絡だから安心して。失礼いたします。フェイを連れてきました」

「よく来たね、少し待っててくれるかな」


 テューダーが書類にサインし、それらを一度束ねると机のすみへと移した。


「待たせてすまない」

「いえ……」

「実は、以前より要請ようせいしていた討伐部隊についてなのだが。国王陛下の命により騎士による討伐が決まったと、先ほど手紙が届いたのだよ」


 森の化け物に対しての討伐が決まったと、テューダーが嬉しそうに話した。


「そこでアラキナやグリッティにはもう話してあるのだが。稀有けうな生還者として、討伐の先駆けとなる偵察部隊に情報を提供してほしい」



 後日。

 フェイたちは騎士団との話しあいのために部屋へ集まっていた。緊張して座るフェイの前には紹介を終えた三人の人物がいる。

 一人は一番隊の隊長かつ、総隊長でもあるドゥガルド。尊大さを隠さない偉丈夫いじょうふだ。

 その左にきっちりと座る硬い表情の者がジョンになる。反対側には足を組んで座っている、どこか横柄そうな者がアゼルだ。

 しかし、フェイはアゼルから目が離せなかった。雰囲気がどこかクリフォードと似ていたからだ。声を掛けようか迷うが、それをドゥガルドが言葉を発することで阻害する。


「では必要な情報を教えてもらおうか」

「はい、まず見た目についてですが色は黒く、立つ背丈は馬車よりも大きかったですね。暗闇でよくはわからなかったのですが」


 アラキナが答える。


「ほう、背が高いとなると急所の位置も高くなって厄介だな。ほかには何かあるかね?」


 ドゥガルドが促したことでグリッティが続く。


「私たちのほかにも人が居ましたけれど、皆殺されてしまいましたわ。子供のいた馬車も壊されましたし、殿方もおりましたが握りつぶされた、と言ってよいのでしょうか。それと最後の……女性の方は切り裂かれたのか、跡形も無くなりましたわ……」


「夜にだけ出るというのはどういいうことだ?」

「それはわたくしにもわかりませんわ。夜になると突然目の前にいたのです。昼間に森の中を通ったときは出て来ませんでしたし、朝になれば見なくなりましたから。恐らくですが、夜にだけ出てくるのではないかと」


「ふん、夜にだけ現れるなど姑息だな。愚劣極まるというものだ。もう無いのか?」

「いえ、音にも敏感です。私たちが助かったのも動くな、音を立てるなという忠告をしてくれた人がいたからです。残念ですけどその人はもう、いなくなってしまったけれど……」


 アラキナが答え残念そうにする。三人が今生きていられるのは亡きクリフォードのおかげだった。あの忠告がなければ死んでいた可能性が高い。


 そのことがいまだにフェイの胸を締めつける。自分たちは生き残り、彼は帰ってこなかった。帰ると約束したがたされなかった。そのことにもフェイは悲しみ、なげいていた。


「あまり役に立ちそうに無いな」


 その言葉にフェイは静かな怒りを覚えた。クリフォードが役に立たない、そう言われたように感じたからだ。


「ドゥガルド。そちらの譲ちゃんはフェイ、だったか? 些細ささいなことでいい、何かないか?」


 アゼルがドゥガルドをとがめ、フェイを()()()()と呼んだ。


「えっと……」


 アゼルに聞かれたことによりフェイは戸惑った。そして、思い出すにはつらい出来事が多く、躊躇ちゅうちょしてしまう。

 だがドゥガルドに言われたことを、そのままにできるはずもなかった。

 フェイは手を握りこみ顔をあげる。あの化け物を倒す手助けをすることは、きっとテューダーへの恩返しになると。

 思い出すのも嫌だったが、もう、逃げたくないと。そしてこの人の、クリフォードと似ている人の助けになりたいと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ