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布絵の価値

評価ありがとうございます。


 風邪を引いた翌日に目を覚ます。薬が効いたのかだいぶ体が軽くなっていた。さらに数日がたち、動けるほどにまで回復したことをアンナに伝えにいく。


「それは良かったですね。でも、無理をしてはいけませんよ。まだ本調子ではないでしょうから」

「えっと、まだ終わってない布絵の続きならいいですか……?」

「そうですね。ゆっくりでよいので、根をつめないようにすれば構いません」

「わかりました、ありがとうございます」


 修復作業の合間、グリッティにもらったびんめの飴を口に入れた。甘さが広がり自然と頬がゆるむ。

 瓶の中にはさまざまな色合いの飴が入っており、見ているだけでも楽しい品だった。

 ほかには星の欠片のようなものや、色違いのとても薄い飴が並んだお菓子もあった。

 何枚かあるそれは正面から見たときと、一枚だけ手に取ったときでは色が変わり面白い。

 綺麗でしばらく見ていたいが、早めに食べたほうがいいとグリッティが言っていた。


 しかし、かなり高そうでいくら使ったのか気になってしまい、申し訳ない気持ちが湧いてくる。

 一方アラキナにもらったのは大きな缶に入ったクッキーだった。

 グリッティと比べると質より量といった具合だ。先日、クッキーを食べすぎて夕飯が食べられず、オーソンに怒られたことは記憶に新しい。


 それほど怒られなかったのは幸いだったが、危険な食べものだとフェイは思った。

 作業は順調で、明日には完成しそうな進み具合でうれしくなる。


 時間も頃合となり食堂へと向かう。

 今日はそんなに食べていないから残さないはずだ。

 だったのだが残してしまった。なぜなのか。

 逃げるようにして部屋に戻りベッドで横になる。寝ようとするが、やはり眠れなかった。



 フェイの朝は相変わらずひどい気分だが、いつもどおりアンナに会いにいく。


「おはようございます、アンナさん」

「おはようございます」

「布絵の作業は今日中には終われそうです」

「それは楽しみです。完成したら一度テューダー様に見てもらいましょうか」


 アンナが手を組み嬉しそうにする。絵が好きなのだろうか。

 部屋に向かい残りの作業を進める。途中、何度か休憩しながらも布絵の補修がついに終わる。かなりの時間がたっていた。



 テューダーの執務室では机の上に布絵が広げられていた。机の前にはテューダーとアンナ、それとフェイがいた。

 テューダーが布絵の修復部分を観察する。


「裂けた箇所かしょがほぼわからなくなっているね。布絵を近くで見ることはあまりないから問題なく飾れるだろう。ありがとう、フェイ」

「はい……きれいな布絵でしたので……」

「フフッ、ああすまない。この布絵をフェイが綺麗だと言ってくれたことがつい嬉しくてね。フェイはこの布絵が何かわかるかな?」

「よくはわかりません。地図ということはわかるのですけど……」


「この布絵はね、国王陛下から領地をたまわる際に頂くものなのだよ。領地の大きさはよく変わるからその都度新しいものが作られる。

 素材は質素だが綺麗な作りをしていてね。ほかの領地では金糸や銀糸を使って作り直したものを飾るところもあるらしい。

 けれど私は、陛下からたまわったこの布絵が好きなんだ。 ほかの者にはただの地図かもしれないが、私には大切なものだったのだよ。

 だからもう一度言おう。ありがとう、フェイ。それに彼女も喜ぶだろう」


 役に立てたことが嬉しく思う。しかし、テューダーの言っていた彼女については思い当たるものがなかった。


「ではテューダー様、こちらの布絵は早速玄関ホールへ?」

「ああ、そうだね。お願いするよ」


 玄関ホールに飾られた布絵を前に、テューダーが満足そうにうなずいていた。


「やはりこうでなくては。さて、私は残りの仕事をしてくるよ。今日はもういい時間だろうしフェイは休みなさい」


 そう言って立ちさる間際にテューダーはフェイの頭をなでていった。去っていく姿を見送り、フェイは頭に手を当て先ほどの感触を確認する。うれしさでにへっと笑う。


「どうしました?」

「テューダー様に、頭をなでられました……」

「良かったわね。それと、私からも礼を言わせてもらうわ。ありがとう。

 この布絵はテューダー様の気がかりなことの一つでしたから……」

「そう、だったんですね……」


 テューダーがあのように喜ぶ姿は、フェイにとって初めてのことだった。同時に、こんな自分でも少しは役に立てたと思うこともできた。

 何もできなかった自分が、少しだけ嫌いではなくなった。そんな気がした。


「では私も残りの仕事を片づけてきますね」


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