第2045話、制御室へ乗り込め
ノースパーク中央ブロック。広めの通路を、障害物をなぎ倒してコマンドーは進む。これだけ派手にやれば、敵がわんさかやってくる。
「いつもこんな調子なのか、少佐?」
「まさか」
フライシャー少佐は苦笑した。
「こういうのは滅多にありませんよ」
潜入工作というのは、見つからないのが最善である。隠密をもってよしとする。……隠密とは?
「正面、機械!」
箱形のマシンが滑るように進路上に現れる。異空間制御装置のある部屋に行くには、こいつが邪魔だ。
「気をつけろ!」
次の瞬間、箱形から魔弾が放たれた。俺はとっさに構える。
「シールド!」
爆発。防御魔法に着弾した魔弾が弾けた。中々の威力である。コマンドーたちが叫ぶ。
「反撃しろ!」
魔石銃が箱形めがけて放たれるが、その装甲は厚く、すべて無効化していた。フライシャーが声を張り上げる。
「プラズマ手榴弾!」
機械を電撃で破壊する手投げ弾を投擲する。こいつのいいところは、外がいくら固かろうが、ショートさせて倒せるところなんだけど。
プラズマ手榴弾が炸裂した。青白い電撃が辺り一面に走り、周りにいたネメジス歩兵をも巻き込んで感電させた。近くにいたくはないねぇ。
コマンドーの一人が目を見開く。
「効かないぞ!?」
箱形はまた少し前進すると、魔弾を撃ち込んできた。その攻撃は俺の防御魔法の前には無力だったが。
「電撃対策がされているんだな」
地味に弱点がカバーされている。嫌らしい機械だ。フライシャーは顔をしかめた。
「また、面倒な……」
「ネメジスの対歩兵機械の一面が知れたな」
俺は手を伸ばし、魔力の手で箱形を横から持ち上げてひっくり返した。バタンと派手に横転するが、正面への射線がずれて俺たちを攻撃できない。
「これで無力化できたかな」
「まさに手も足も出ないようですな」
フライシャーは皮肉った。それを言うなら、手も足も最初からないようだがね。
「進め!」
箱形を踏み越えて、さらに奥へ。正面の目的の部屋は扉に塞がれている。見たところ、金属製の扉で、ぶ厚そうだ。ネメジス歩兵が数人、俺たちを阻もうとするが、コマンドーたちが手早く射殺していった。
「マスターキーではビクともしなさそうですな」
フライシャーは、ショットガン持ちのコマンドーを一瞥した。普通の扉なら、ドアノブごと吹っ飛ばして蹴破るということもできたのだろうが。
「アクセスパネルはどこだ?」
扉を開けるためのスイッチとかそういうのが、扉のすぐ横にあったりするものだが、それはなし。
「爆弾を使いたいところですが、我々が隠れる場所がありませんね」
「防御魔法でも駄目か?」
俺が言えば、フライシャーは肩をすくめる。
「致命傷は避けられますが、吹っ飛びますよ」
「それはそれで痛そう」
ならば魔法の出番だな。俺は扉に手を当て……これは確かに厚そう。
「解体」
魔力を送り込み、分子レベルで解体。扉だったものは、塵となって消えた。
「すごい魔法ですね」
フライシャーは素直に言った。一方でハンドサインは、部下たちに部屋に侵入しろと合図している。
「その魔法があれば、爆弾はいらないんじゃないですか?」
「時と場合によるんじゃないか」
何事も。便利ではあるが、離れたところ遠隔で爆発とか、そういうことはできないから、何においても一長一短というやつだ。
室内から銃声が響いた。中にも敵兵がいたのだろう。異空間制御装置を普段から使っているかは知らないが、管理しているエンジニアがいるかもしれない。あるいは侵入者の接近と聞いて、警備の兵を配置していたのかも。
ともあれ、俺が部屋に足を踏み入れた時には、コマンドーが室内を制圧していた。
「どれだ?」
俺はシェイプシフター工作員に確認する。彼は指さした。
『あちらです』
しっかり土台に固定されている機械だった。色取り取りのランプが光り、小モニターには何かの波形が映し出されている。これで異空間を操作できるのかね?
シェイプシフター工作員が機械に取りつき、何やら操作すると、機械の一部が操作パネルごと切り離された。
『これがこの機械の中枢です』
「その大きさなら持ち運べるってわけだな」
ノートパソコンみたいな大きさだが、なるほどね。これが主な部品というわけだ。
「なら、目的はこれで果たせたな」
俺がフライシャーを見れば、彼は生返事だった。
「どうした?」
「いえ、ここが中央動力炉に近いので、爆破できたらノースパークもおしまいでは、と思いまして」
欲が出てきたか。せっかくここまで来たのだから、ついでに、ということだろう。
「まだここを破壊するかは決まっていないだろう?」
シーパング同盟軍は、ここを拠点に利用するかもしれない。任務にも明確に破壊しろとはなかったはずだ。
「その通りです。……すいません」
フライシャーは勇み足だったと詫びた。任務に忠実なコマンドーが、よそに気を取られてはいかんな。
「後はここを脱出するだけだ」
目的の装置は手に入れた。長居は無用だ。撤収!
「隊長、敵が!」
ネメジス歩兵が、この制御室に駆けつけてくる。入り口を見張っていたコマンドーが応戦する。
退路は塞がれた。袋のねずみではあるが、転移でドロンするから問題ない。
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