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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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2053/2056

第2043話、敵地潜入


 ノースパークにまず、俺は転移した。遠距離視覚の魔法で拡大、転移位置を確認した上で。

 大型船用の着陸床の上だ。広々とした屋外は、戦艦級円盤が複数停泊できる。ただ今、この着陸デッキに大型の船の姿はなく、がらんどうな雰囲気を醸し出していた。


 廃業の決まった店の閉店後の雰囲気というべきか。荷物が運び出されて、中が空っぽになっていく寂しさというべきか。


「……引っ越しか、単に避難させただけか」


 ノースパークは、クルフの艦隊によって攻撃を受けている。同じように襲撃された時、地上で破壊される味方兵器を最小に留めるために、主力を移動させているという説。引っ越しなら、別の基地をネメジスが持っているということになる。


 コマンドーチームを呼ぶ前に、入念に周囲を見回す。転移した早々に気づかれても困る。こちらは情報を持ち帰るのが任務である。ドンパチをやりにきたわけではない。……何か、フラグっぽいな。


「異常なし」


 まず、アイボールを生成。一つ目のボールのようなモンスターは、ふよふよと浮かんで俺から離れると、索敵を開始した。


 そのうちの二体に、俺の周りを監視させ、転移魔法陣を描く。ダンジョントラップで有名なアレである。それで小型快速艇の中に設置した魔法陣と繋ぐ。するとコマンドーたちが、やってきた。


 それぞれ武器を手に、近くの遮蔽に素早く移動し、周囲を確保する。何も言わないのに動ける優秀な者たちだ。伊達に特殊工作員ではないね。


「閣下」


 フライシャー少佐が傍らにきた。俺は頷く。


「何とも物悲しいな」

「手薄、というべきでしょうか」


 そう見えるよな。俺は頷く


「では、中に入ろうか」


 光学迷彩、もとい透明服で姿を消して、いざ施設内へ。敵兵の姿もなく、注意はしているが、案外あっさり中に入れる。


 俺は、専用通信機で潜入しているシェイプシフター工作員にコンタクトを取る。ややして、返事はきた。異空間にいて、外からでは通信が繋がらなかったが、きちんと生存していたようだ。感心感心。


「そちらに様子はどうだ?」

『施設から、ネメジス軍は離れつつあります』


 潜入工作員は答えた。


『敵は、新たな拠点へ赴き、ここノースパークを放棄する予定です』


 なるほどな。道理でドックが空なわけだ。案外あっさりと手放すんだな。それだけクルフの奴に襲われたのがショックだったのかもしれないな。


「敵の新たな拠点というのは? もうそちらに移動しているのか?」

『部隊の一部がすでに先行しています。そちらの記録の方もこちらで回収してありますので、お渡しできればと思います』

「わかった。今、ここに来ている。合流しよう。適当な場所はあるか?」


 先に潜り込んできた工作員ならば、内部の最新の情報を持っている。俺たちもクルフ提供のものをもらっているが、あくまで参考程度だ。何せあいつの資料は、大昔のそれだ。ネメジスが基地に利用するために改築やらしているようなので、記録が古いわけである。


 俺はアイボールを適度に増やしつつ、監視に活用する。内部の記録をすれば、今後占領する時のマップとして活用できるだろう。……まあ、シェイプシフター工作員が、マップ自体はもう持っているだろうけど。


 円盤部、中央デッキ――ノースパークにおける居住区画に移動。普通、人が多い場所だから敬遠したいんだけどね。

 だが、ネメジスが別拠点へお引っ越ししようとしていることもあって、人の気配が少ない。さながらゴーストタウンだ。俺たちはシェイプシフター工作員と合流する。


『マスター』

「元気そうで何よりだ」


 通信できなくなって、割と心配していたんだよ。


『こちら、収集した資料になります』


 工作員はディスクのようなものを出した。シェイプシフター体から作られたそれは、解析端末にかけるか、他のシェイプシフターが取り込むことで情報を弾き出せる。この工作員が見聞きした全てが、この中に入っている。

 フライシャーが、シェイプシフター工作員に聞いた。


「ネメジスは、この異空間入り口を操作することができるかはわかるか?」

『はい。ネメジス側に、この異空間の操作装置があります』


 やっぱりか。俺は、天を仰いだ。これで異空間の出入り口に警戒部隊がいなかったのも理解できる。

 ネメジス軍は、出入り口で戦い、消耗戦をやらず、同盟軍が攻めてきたところを引き込んで、まとめてこの異空間に閉じ込めようと考えているというわけだ。


「それがわかっただけでも、ここに来た甲斐はあったな」

「そうですね」


 フライシャーは同意した。同盟軍がもっとも欲しかった情報だ。このまま正直に大艦隊を投入すれば、送り込んだ分、ドブに捨てるようなものになってしまう。

 俺は、工作員を見た。


「装置と言ったな? それの場所はどこにあるのかはわかっているのか?」

『もちろんです』


 よろしい。その装置を止める、あるいはこちらで奪取できれば、敵は異空間操作ができなくなる。同盟軍が大艦隊で攻め込んだとしても、閉じ込められる、孤立する、という事態は防げる。


「ちなみにその装置は、手に入れられるものか?」


 異空間を制御するともなると、アンバンサー大要塞にあったような巨大コンピューターみたいなものであってもおかしくはない。そしてそれだけ大きいと、さすがに奪うというのも難しい。


『それなりに大きいですが、コアとなる部分は持ち運ぶことが可能です』


 なるほど、重要部品を奪うことはできるわけだ。そうとなると、どうやるのが最善かな?

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