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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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2052/2056

第2042話、接近、ノースパーク


 異空間の中は、まるで宇宙のようだった。しかし星は見えず、真っ暗であったが。

 パイロットは、役に立たない高度計を睨みつけ、そして首を振った。


「高度不明。異空間に入ったとみて、間違いありません」

「だろうな」


 フライシャー少佐はパネルの光に、顔を浮かび上がらせる。


「雷鳴も聞こえない」


 黒雲に入って、それまで光ったり、音を響かせていた雷も感じられなくなった。空間が変わっただろうことは、そこからもお察しだ。

 特殊コマンドーのリーダーは、俺を見た。


「地面が測定できないそうです。落ちたら永遠に落下し続けるんでしょうか?」

「どうかな。体験したいとは思わないが」


 俺は索敵センサーなどに目を向ける。異空間の出入り口を見張っていてもおかしくないのだが、ネメジスはそうした監視の類を置いていないようだった。

 コ・パイロットは振り返った。


「こちらを探る反応はありません。何とも不用心ですな」

「異空間に入ってくる者などいないと思い込んでいるのだろう」


 空を飛べる乗り物がなければ、入り口に入ることができない。そして普通の航空機なら、雷雲に突入しようという者はいない。雷が直撃すれば機体にダメージだし、最悪墜落だ。玄人だって、理由があっても近づきたいとは思わない。


 とはいえ、クルフの艦隊が殴り込みをかけているのだから、普通に考えれば、ネメジスは出入り口を見張るべきではある。

 だから不用心だというのだ。……怪しいな。


「例え索敵されようとも、こちらの艇はステルス装備です」


 フライシャーは事務的に告げた。


「こちらは発見されません」

「だと、いいがな」


 小型快速艇は、闇夜にも似た異空間内を飛行する。目印になりそうなものが外部に見えず、クルフが提供してくれた異空間内図と自動コアによる解析で、何とか位置を割り出す。


「ちなみに、閣下」


 フライシャーが視線を向けてきた。


「ちょっとした確認ですが、よろしいですか?」

「どうぞ」

「閣下は、転移魔法を使えると伺っておりますが、ここから外へ転移はできるのですか?」

「外へなら、おそらくできる」

「おそらく、ですか……?」

「異空間は、俺にもわからないことが多い」


 これは経験込みの話になるが。


「出る時は移動先のイメージで、異空間の外へ飛べるが、入る時は何故か、通れなかったりする」


 俺のストレージ内異空間についても、正規の出入り口経由じゃないと入らない。転移が通らないんだよな。でも出る時はあっさり通る。……何故なんだろうね?


「異空間内の転移なら可能だ」


 クルフもそれをやっている。出る方は楽だが、入る時は途端に阻まれる。内側はもろいが、外側は厚いということなんだろうか。


「ということで、ノースパークが視認できる位置までいければ、直接船で乗り付けなくても上陸はできる」


 いくらステルスシップでも、必要以上に近づけば見つかる可能性はある。俺がいれば、そのリスクは抑えられるだろう。


「見えてきました!」


 パイロットが声を上げた。

 窓にその小さな点が見えてくる。これが近づいていくことでその細部がわかっていくことになる。円盤を重ねたような独特な形状も。


「あれが敵の根城ですか」


 フライシャーが言う。そうとも。


「あれにこれから乗り込むんだ」

「はい。パイロット、目標の周りに敵は?」

「こっちから発するレーダーは使えませんから――」


 パイロットは機器を操作する。


「カメラを使ったモデルを制作中。……お待ちを」


 索敵装置を使うと、こちらの存在を敵に教えるようなものだ。いかにステルスで隠れていようとも、何かがいると察知されてしまう。

 今、小型快速艇は、搭載カメラを最大望遠で撮影し、それに映る対象を、自動コアが解析し、疑似レーダーとして位置関係を表示し始めた。


「大型円盤3、中型円盤が5。航空機らしき反応が複数――」


 フライシャーは微妙な表情をした。


「多いのか少ないのか、いまいちわかりませんな」


 クルフが艦隊で乗り込んだ時で言うなら少なすぎる。


「俺は、もっと大艦隊を想像したんだがな」


 元皇帝の名前は出さずに俺は言った。コマンドーのリーダーは首をかしげた。


「では、少ないと」

「そうなんだけど、この所在はこちらに筒抜けになったことはネメジスの連中も知っている。いつこちらが艦隊で向かってきてもおかしくないと」

「では、敵の主力はノースパークを放棄した?」

「一応、残っているから、手薄と見せかけて、近場に大艦隊を配置しているとか」


 ノースパークを奇襲されても、被害を抑えつつ、逆奇襲をかけられるように、距離を置いて待機しているかも。


「つまりは、罠、ですか」

「この状況で仕掛けられるトラップの一つではあるな」

「レーダーを使えれば、離れている敵も探知できるかもしれませんが」

「今の我々には、難しい相談だな」


 俺は苦笑した。


「では、我々はノースパーク内部に潜入しよう。調べれば、罠かどうかもわかるさ」


 例のブァイナ金属製貯蔵庫とそれを持ち出した円盤に潜入していたシェイプシフター工作員と接触できれば、情報収集も早くできるだろう。

 ステルスシップは、ノースパークに慎重に接近した。

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